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「うっそー」姉貴はそう言うとガハハハと和田アキ子のようにして大笑いをし、「マジウケる―」そう言って俺の顔を見るなり少し大袈裟に手を叩いて笑った。
「一体なんだよ?」
こんな時にこの人は何を楽しそうにしているんだ?
「ハンカチなら、私が持って行ってあげたわよ」
「悪ふざけもいい加減にしなさい」笑いながら言う姉貴にオカンが言った。
「入れたってどこに?」
「えーっとだれだったかしら?確かいつも路駐している家で羽馬さんよ」
「は?マジで姉貴がいれたわけ?追いかけられなかった?」
「大丈夫よ、なんかいける自信があったしさ」
「なんだよそれ、姉ちゃんは何もしなくて良いから。かえってややこしくなるから、何もしないで欲しい。頼むから余計な事はしないでくれ。
「そんな言い方ないでしょう、家に帰ったら玄関に置いてあったら焦るじゃない」
翌朝、俺は誰よりも早くに目を覚まして、ポストを何度も見に行ったことはいうまでもない。
姉貴のことだから、なにかやらかしているに違いない、かなり不安だ。
しかし、俺のその不安は的中することなくその日もまたその次の日も、白い手紙がポストに入っている様なことはなかった。
あれから3日後、白い紙がポストに入っているとオカンが慌てて俺の部屋に掛け込んできて、仕方なく目をこすりながら起き上がり手紙を開いた。届いてしまった、姉貴の事か?そう思いながら手紙を開く。
『芝居家のマイナスポイントが計5点を超えた為、タヒにました_。さぁがんばりましょう』
マイナスポイントが超えただとー?「ふざけんな」
そんな誰かが死んで楽しんでいるようにしか見えない手紙に、言い知れない怒りが込み上げてくる。
オカンは何も言わず、ただ青くなっていた。
大声を出して目が覚めたのか姉貴が急に入ってきて手紙を覗くなり、自分の部屋に戻り紙を持ってきて「芝居ってって言ったら、ここだね」そう言って俺に見せてきた。
姉貴の指さす地図を見ると、たしかその場所は平屋の一軒家だったはず。
マイナスポイントが5点以上になった理由を書いていないが、一体なぜそんなに溜まってしまったのだろうか?確かにあそこの家は、一番端の家だし入れられやすいと言う条件はあるのだろうが。
或いは、イマイチこんな稚拙な遊びをイタズラと思って、適当にやっていたのかもしれない。




