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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
ドロップドハンカチーフ2 第一章 進級
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29

「でもピンク色の可愛らしい弁当箱でこのところお昼に食べてるじゃない?」

「あれは姉貴が作った弁当というか余りもの詰めてくれてるだけだって」


「ほんとに~?」

「うん信じてくれ」

 そういった後に、これまた長い長い沈黙が始まる。


「分かった、信じる。じゃあお詫びに今週土曜日映画観に連れて行って?」


 土曜日は午前中、自動車学校でお昼からバイトが入っているのだが……。


「分かった昼からでもいい?」

「うん、やったーじゃあ昼の1時にいつものとこでね?おやすみい」そう言って川嶋さんは電話を切った。


 急に休んだりしてバイト先に迷惑を掛けてしまうが、今回この場合に限り仕方がない。

 それにしても、まさか見られているなんて思わなかった。


 教室入ってくればいいのに。


 あ~なんかあれだな。こうやって誤解されると言うのは、生きた心地がしないものなんだな。


 なんか世間で浮気をして追いつめられた男の気持ちというやつが一瞬わかった気がしたのだが。


 それにしても川嶋さんあれは、本気で怒っている感じだったよな?


 いつも可愛いばかりの川嶋さんがさ。


 そして翌日からは、姉貴の弁当をもっていくのは、やめたことは言うまでもない。

 

 土曜日までは教習ばかりでバイトを入れていないので、放課後バイト先に連絡して店長に「今週土曜日、どうしても都合が悪くなったので休ませてください。

代わりに日曜日は出ますから」と電話の向こうの店長に向かって縮こまりながらそう言うと、


 「ちょうど良かった日曜日と変わって欲しいってやつがいるから、そうしてくれていいから」そう言って言われてホッと胸を撫で下ろす。


 俺もそろそろ免許の方ももう少しで卒業検定だ。


 学校に行く前に当たり前の様にポストを覗き、黄色いハンカチが入っていたのでガックリとして腕時計を見て間に合いそうじゃないことに気が付いて、オカンに黄色いハンカチを俺が家に帰るまで置いてくれるように頼んで学校へと向かった。


 席につくなり国神さんが嬉しそうに話しかけてきて「関谷君じゃーん」と言って携帯の画面を見せてきた。


 そこには「フォルツァ」に乗る国神さんの画像があった。

「え?マジで?ついに?」

「そう、先週土曜日受けて来て、昨日バイクやっとやっと私の所に来たんだよ、マジ超感激してやばかった」


「うわーまじで良かったじゃん。おめでとう、早速どっか行ってみた?」


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