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「ずっとパンとかだと、たまに弁当食べるとすっごく美味しくない?」
「まぁ、そういうのはあるかもね」
「私の家さー犬飼ってんだけど、この前弁当ひっくり返しちゃって、犬が。あれはショックだったわー」
「ふーん、国神さん弁当自分で作ってるの?」
「そう、料理するのはわりと好きかも、中華料理屋で教えてもらったりすると家で作ったりするよね」
「へ~」
「あ、その言い方あんま興味ない感じですぎでしょ?」
そう言われてしまった俺は、もしかして失礼だったか?とか反省しつつ「いやそんなことないよ」と否定しておいた。
「今日はさー昨日の残りのローストビーフとか弁当に詰めてる」
「は?ローストビーフ?超ごちそうじゃん、いいなー食いてー」
「あ、いいよ?食べる?」
「え、食べたいけどいいよ」
「私自分でいつでも作れるからさ」
そして昼休憩になって弁当を広げると、国神さんがハイコレと言ってローストビーフだけが入った(しかも、ケーキ用の氷を入れてあってしっかり冷えている)タッパーを俺に渡してくれた。
「なんか豪華で申し訳ない」とか言いつつ、食欲に逆らえない俺は、ぱくりと一口食べた。
「う、うまー」
しっかり味が染み込んでいる上に、いかにも半生ですというかんじもなくて、これはうまいと食べた誰もがきっと言うに違いない。
「良かったーそれ全部食べていいよ弁当はきちんと作ってるしさ」
「ありがとう」なんか申し訳ない気がして一瞬悩んだが、このうまさには勝てなかった。あっという間に全部食ってしまった。
しかし、その夜悲劇は起こってしまった。
「ウワキモノ」鳴り響く着信音に驚いてメールを読むとそうやって書かれてあったのだ。
送る主はそう、川嶋さんだった。
これはいかんと焦って次の瞬間には、無意識的に川嶋さんに電話を掛けていた。
「もしもし?」
「あれなに?ウワキモノって」
「関谷君、最近国神さんにお弁当作ってもらっているでしょう?知ってるんだから」
弁当を作ってもらっているだって?国神さんに?違う、そうじゃない誤解だー。
「違う、誤解だよ、作ってもらってなんかないよ」何故かそう言いながら、自分が苦しい言い訳をしているような気持ちになる。
「でも透明なタッパーごと受け取ってたじゃない今日のお昼に」
「それは、持ってきてたローストビーフをもらっただけで、俺の為に作ったとかそういうもんじゃないから」必死に弁解する俺。




