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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
ドロップドハンカチーフ2 第一章 進級
106/149

28

「ずっとパンとかだと、たまに弁当食べるとすっごく美味しくない?」

「まぁ、そういうのはあるかもね」


「私の家さー犬飼ってんだけど、この前弁当ひっくり返しちゃって、犬が。あれはショックだったわー」


「ふーん、国神さん弁当自分で作ってるの?」


「そう、料理するのはわりと好きかも、中華料理屋で教えてもらったりすると家で作ったりするよね」


「へ~」


「あ、その言い方あんま興味ない感じですぎでしょ?」


そう言われてしまった俺は、もしかして失礼だったか?とか反省しつつ「いやそんなことないよ」と否定しておいた。


「今日はさー昨日の残りのローストビーフとか弁当に詰めてる」

「は?ローストビーフ?超ごちそうじゃん、いいなー食いてー」


「あ、いいよ?食べる?」

「え、食べたいけどいいよ」


「私自分でいつでも作れるからさ」


そして昼休憩になって弁当を広げると、国神さんがハイコレと言ってローストビーフだけが入った(しかも、ケーキ用の氷を入れてあってしっかり冷えている)タッパーを俺に渡してくれた。


「なんか豪華で申し訳ない」とか言いつつ、食欲に逆らえない俺は、ぱくりと一口食べた。


「う、うまー」


しっかり味が染み込んでいる上に、いかにも半生ですというかんじもなくて、これはうまいと食べた誰もがきっと言うに違いない。


「良かったーそれ全部食べていいよ弁当はきちんと作ってるしさ」


「ありがとう」なんか申し訳ない気がして一瞬悩んだが、このうまさには勝てなかった。あっという間に全部食ってしまった。


 しかし、その夜悲劇は起こってしまった。


「ウワキモノ」鳴り響く着信音に驚いてメールを読むとそうやって書かれてあったのだ。


 送る主はそう、川嶋さんだった。


 これはいかんと焦って次の瞬間には、無意識的に川嶋さんに電話を掛けていた。


「もしもし?」

「あれなに?ウワキモノって」


「関谷君、最近国神さんにお弁当作ってもらっているでしょう?知ってるんだから」

 

 弁当を作ってもらっているだって?国神さんに?違う、そうじゃない誤解だー。


「違う、誤解だよ、作ってもらってなんかないよ」何故かそう言いながら、自分が苦しい言い訳をしているような気持ちになる。


「でも透明なタッパーごと受け取ってたじゃない今日のお昼に」


「それは、持ってきてたローストビーフをもらっただけで、俺の為に作ったとかそういうもんじゃないから」必死に弁解する俺。


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