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翌朝の朝ご飯は、なぜか焦げた唐揚げとか焦げた卵焼きとかそんな物が食卓に沢山並んでいる。
そして、姉貴が似合わないくせしてエプロンなんか着けて台所に立っている。
「なにやってんだ?朝っぱらから」疑問に感じたままに声に出して訊いてみる。
「なに、って弁当作っているのよ、ほら亮介のもついでに詰めてあげるから、それよりそこの丸い皿のおかずを朝ご飯にして食べなさい」フライパン返しを片手にブンブンと仰ぐようにして言ってくる。
「え?この卵焼きの端1センチあるかどうかのやつと、焦げた唐揚げが乗っかってる?」
「まぁ、あんたってば一々嫌味な言い方をするのね」そういいながらも、何故だか姉貴の機嫌が悪くなるようなことはなく、むしろご機嫌に近かった。
マジわけわかんねーから。
「まぁ亮介いいじゃない、お母さんだって手伝ったのよ?味噌汁も今入れるから座ってちょうだい」そう言ってオカンはご飯やら味噌汁やらお茶やらを俺の目の前まで運んでくれた。
三分の一は焦げで真っ黒な唐揚げを口の中に入れてみる。
サクッ。感触はいい。まっ揚げたてだしな。
しかし、味は焦げ!焦げ!焦げ――!という感じだ。これはあれだな、うん焦げてる唐揚げだな。見たまんまの味といったところか。
その後も卵焼きを食べてみるものの、そちらは卵焼きが細すぎて味がないというかなんというか。
姉貴が台所に立っている事と姉貴が作った料理が食卓に並んでいるということにどこか違和感をかんじながらも姉貴が詰めてくれたという弁当を持って学校へと向かった。
その弁当を開けると、相変わらず焦げ付いた唐揚げと卵焼きがあって他のおかずは梅干しだけっていう、いかにも余りもの詰めました的な弁当に姉貴らしさを感じたのであった。
家に帰るなりオカンが黄色いハンカチを手渡してきたので、重たい鞄を玄関に置いてからC町へと向かった。
もしA団地やB団地の人のポストに入れたらどうなるんだろうか?みんな焦るんだろうな、まだあったのかってな。みんなが羨ましいよ、俺だって早く平和に生きたい。
そんな事を思いながら、自動販売機に目が行く。おじさんが美味しそうに何かを飲んでいる。あの赤い缶はコーラか?俺がじっと見たせいか、おじさんもこちらを見て思いっきり目が合う。こういう時って一瞬だけど、かなり気まずいよな?
思いついたままに路地を何本か曲がり上へと坂道を上がっていくと、めっちゃ嬉しいことがあった。




