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ドロップド・ハンカチーフ  作者: 大和香織子
ドロップドハンカチーフ2 第一章 進級
102/149

24

 その夜、俺は天津飯がとても食いたくなり珍しく夕飯をねだったら、翌朝、中華丼が食卓に並んだ。


「オカン朝からこんなガッツリしたもん食えるかよ」


「まぁ、亮介が食べたいって言うから作ったんじゃない、いいわよ無理して食べなくても」そう言いながらオカンは、俺の中華丼が入った目の前の皿を片付けようとした。


「あぁ……食うって」危うく朝食抜きになるところだった。


 文句を言った割には、一粒も残すことなくたいらげて、家を出た。

 

 C町を通っていると、「なんしとんじゃコラーッ」と物凄い声が聞こえてきて、何事かと思い目を向けると、ブラックのセダンから黒いスーツ姿の男性が降りてきて30代半ばくらいの男性に向かって怒鳴り込んだ。


「自分じゃないです。ご、誤解です」完全にビビッているのが、遠目に見ても分かる。


 あんまり見ても気の毒なので、目を伏せて学校に向かおうとしたその時、視界の端から黄色い物が覗いた。


 もう一度振り返り、それを見る。


 黄色いハンカチ……だった。 


 しかし、それを見る俺の視線を感じてか、チンピラのような男がこちらを振り返りそうになった事に気が付いて、自転車のペダルを前へと回転させて走らせた。


 とばっちりなんて御免だったし、巻き込まれたくなんてない。

 ひたすら逃げるに決まっている。当たり前だ。あんないかつい人怖すぎる……。


 並木道を通りながらも、怒鳴られた人はあの後殴られたのだろうかと、その後が気になって仕方がない。


 殴られたりすることなく、無事に帰れるといいんだが……変な事件にならないことを願うばかりだ。


 学校についてから、「殺人事件」としてニュースになっていないか携帯で検索したが、そんなニュースは一件も見つかることがなくて俺は安心した。


 教習が終わり家に帰りポストを開くと、そこに入っていたのは宗教のパンフレットだった。なにやら手紙まで添えてある。なんだこれ?


 「自分の事ばかりでなく周りの人の為になることをしましょう」手書きで書いてあるが、それも花柄の可愛らしい便箋に。一枚一枚書いて全部で何枚書いて不特定多数の人に渡しているのだろうか。


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