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25話:大切なみんな

 アースゴーレムやウッドマン、ドールたちの働きによってゴブリンの死体が文字通り山のように積み上げられていた。


 ゴブリンロードの死体は別に置いてあるが、このロード、他のゴブリン個体と違って人間の近い姿をしている。


 普通のゴブリンが子供のようなサイズだとして、ロードは成人男性のサイズだ。


 知能も上がっていたのだろうが、何故そのまま逃げださなかったのかが不思議だった。


 だがその理由もすぐに分かった。


 ゴブリンロードが飛び出してきた崖上から、ギルドマスターであるアーラシュア・ホンミールが飛び降りてきた。


「いやはや、よくやってくれた。素晴らしい働きぶりだったよ」


 パチパチパチと手を叩いて拍手を送ってくる。


 ドールたちが臨戦態勢になる。


「ああ、待ってくれ。私は君たちの仕事ぶりを見させてもらっていただけだ」


 ギルドマスターは両手を上げて敵意がないことを示しているけど、かなり怪しい。


 ギルドマスターは一人だ。


 なのにこのゴブリンロードはそれよりも人数の多い俺たちのほうに突っ込んできた。


 つまりこのギルドマスターはかなり強いと推測できる。


「……俺たちの戦いをずっと見ていたんですか?」


「そうだな。もし君たちが失敗したときのための保険でもあったが、そっちは無駄になってしまったな」


 保険。


 ギルドマスターは俺たちが失敗した場合、一人でこの無数のゴブリンたちを倒すつもりだったのか……。


「もうギルドマスター一人でいいんじゃないかな」


「私は私でやるべき仕事もある。それに私一人では複数起きた場合対処することはできない。だから君たちのような冒険者が必要なのだよ」


 その自信満々に満ち溢れた顔で言われてもまるで説得力がない。


「いやはや流石はマスタークラスという実力だった。君ならすぐに紫以上のランクに上がることもできるだろう」


「紫ランクから上があるんですか?」


「フフ、知りたければ早くランクを上げてきたまえ」


 紫以上というと、虹ランクなのかな?


「それでは私はこのことを上に報告しないといけないからな、ゴブリンロードの死骸はもらっていくぞ」


「あ、はい」


 ギルドマスターはゴブリンロードの首根っこを掴み、消えた。


 消え方からして転移魔法とかそういう類の魔法を使ったのかもしれない。


「ふぅ……」


「あのギルドマスターとかいう女、かなりの強敵です」


 アス子がギルドマスターが消えた場所を見ながら難しい顔をしている。


「勝てなくないけど、かなり被害でると思う」


 キーコは無表情でアス子と同じ場所を見つめていた。


「そんなに強い人なのか……あまり関わりたくないな」


 そんなことを想いながら、山積みになったゴブリンの死体を見上げた。


「マイマスター、焼却致しますか?」


 火子が手の上に火の玉を出している。


「そうだね、特に処理方法については言われてないし、そのまま燃やして灰にできる?」


「お任せください」


 無数の火の玉が死体の山を囲んだ。


 そして死体の山めがけて火炎放射のほうに炎が射出されてる。


 合掌。


 ゴブリンとはいえ命ある生物を殺してしまった。


 特に人型ならなおさらあまりいい気はしていない。


 そうして火子の火葬により、灰も残らず死体の山が消えた。


「塵一つ残らないのか……」


 火子の火力に戦慄。


「焼却完了致しました」


「あ、ああ、ありがと……」


 火子はそのままいつの間にかみんなが整列していた列に戻った。


 みんながいなかったら、俺はもうとっくにこの世界で死んでいたかもしれない。


 神から貰った能力だけど、今ここにいるみんなは本物だ。


「……みんなもありがとう。みんなの働きで誰も欠けることなく終わらせることができたよ」


 その労いの言葉にみんな笑顔で答えてくれている。


「アス子とキーコのゴーレムたちの追い込みや立ち回りは良かったし、スイ子さんと火子の殲滅力も凄かった。御影とシャトルの防衛能力も俺を驚かせてくれたし、みんな本当にありがとう」


「私たちはご主人さまに作られたドールです。そのことに誇りを持ち、この身の全てを捧げてご主人さまをお助けすることが、私たちの喜びとなります」


 アス子がみんなを代表するように一歩前に出た。


「……アス子がいなかったらあの場面で俺は死んでたかもしれない。本当に助かったよ」


「ご主人さま、御影とシャトルは十分な働きをしていました。ゴブリンロードはそれを上回ってしまい、ご主人さまの身を危険に晒してしまいました。しかしどうか私の働きに免じて、二人には寛大な処置をお願い申し上げます」


 アス子が真剣な表情をして頭を下げた。


 後ろにいたドールたちも頭を下げている。


 これはまさか、二人が俺を護りきれなかったら処分するとか思われてるかな……?


「え、あ、いや、二人はよくやってくれたし、特にどうこうするつもりはないから安心していいよ!」


 アス子のその言葉に凄い驚かされた。


 ドールは絶対服従というイメージがあったから、俺に対して物を申するようなことはしないと思っていただけに、その上に更に仲間であるドールを庇うような真似をしたアス子には感動した。


「ありがとうございます」


 やはりこの子たちは生きている。


 ただのドールではなく、一人の人として、大切にしていこう。


「それじゃ街に戻ろっか。アス子、お願いするよ」


「はい!」


 こうしてゴブリンロードの討伐をした俺たちは、アースゴーレムに乗って街へと戻った。

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