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悪役令嬢、不登校を決める。~学校サボってダンジョン行きますわ!~  作者: サイリウム


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35:別視点、セラフィナ2



(の、脳が沸騰しそうッ!!!!!)



“抱き着いて”と言われたがゆえに、ただ本能が赴くまま飛びついた借金女ことセラフィナは、自身の行いを思いっきり後悔していた。


確かにこの状況、合法的に『ヴァル』に密着できるこの状況は本能が歓喜の雄たけびを上げていたが……、それ以上に理性が羞恥で泣き叫んでいた。なにせ今現在の彼女の様子を俯瞰してみれば、年頃の男性に“かなり危うい姿勢”で抱き着く痴女である。上半身、まだ腕だけであれば弁明できたかもしれないが、足まで回している上に背中ではなく前にくっついているのである。



(私の馬鹿ッ!!!!!)



これが通常時であれば、彼女も言われた通りの行動。ヴァルの言い方からおそらく『背中に強く抱き着いて』という行動をしただろう。いくらギャンブル中毒な彼女でも、中身は単なる乙女。ヴァルの気を引くために必要以上に胸を押し付ける様な事をしたかもしれないが、そもそも彼女はここまで色々すっ飛ばす様な人間ではない。


しかし上級悪魔というおとぎ話でしか聞いたことのないような強大な敵に見ず知らずの場所に飛ばされてしまったという不安、先ほどまで自身ではどう足掻いても勝てないアンデッドに襲われていた恐怖、そんな状況から颯爽と現れ救い出してくれたヴァルへと興奮と強い恋心。


このすべてが悪魔合体した結果が“コレ”である。


ヴァルの声を聴いた瞬間に脳ではなく体が反応した結果が、“コレ”である。


なんかもう、色々とダメであった。



「セラ、何か顔赤いけど、大丈夫!」


「大丈夫です!!!!!」


「ならしっかり捕まってて、よねッ!」


「は、はいッ!」

(あぁぁああああ!!! あとなんかいい匂いしますぅぅぅ!!!! あぁぁああああ!!!!!)



顔どころか脳すら沸騰している彼女に、戦闘しながらも心配そうな声を掛けるヴァル。


それに何とか返答する彼女だったが、もう脳内はしっちゃかめっちゃかだ。


“密着しまくっている”がゆえに戦闘を続行するヴァルに振り落とされることはないだろうが。先に彼女の脳が爆発し吹き飛ばされそうされそうな状況。しかも直で感じてしまう汗の匂い、戦闘中ゆえにより多く分泌されるその香りに発狂する彼女。もうどこからどう見ても痴女の類と化していたが……。


一応セラフィナは、れっきとした聖職者である。


ギャンブル狂いではあるがその能力を教会から認められ『侍祭』という役職を得ている存在であることは間違いない。つまり教会がその方針として『人類の数を増やし魔物との戦いに勝利する』ことを掲げている以上、“そういう”知識は人並み以上に得てしまっている。


彼女は自分がどう見られるかを、的確に理解してしまっていた。



そして更に、“勘違い”してもらう可能性が0に等しいということも。



貴族という者は、『後世に血を繋げる』ことに重きを置く存在たちだ。


その地の支配者として君臨し続けるために子を成し、他の貴族との外交の為に子を成す。言い方は悪いが“使い道”が多い以上、“そういう”知識が蓄積され継承されていることは想像に難くない事実だ。つまりセラフィナからすれば今の自身の体勢が何を意味するか完全に『ヴァル』へと見破られていると確信しており、どう足掻いても誤魔化すことなど出来ない。



(絶対、絶対解ってて“優しく見ないフリ”されてます! もうおわ、終わりです! おわぁぁぁ!!!!!)



全身が沸騰しそうになるほどの羞恥に悶える彼女であったが、今は戦闘中な上にヴァルに強く抱き着いてしまっているがゆえに、逃げ場などない。


せめて真っ赤に染まった顔を見られないようその肩に顔を埋めるが、逆に本来感じられない様な“匂い”を強く意識してしまい、更に脳が発火。視界をずらそうと思えばヴァルの首筋を流れる汗が見えてしまうし、もっとずらせば楽しそうな笑みを浮かべる思い人の顔が真横に。



彼女からすれば、もうどうしようもない状況だった。



もう少し冷静で要られれば、その汗の種類が『男性ではなく女性』であることや、『偽装されているとしても強く抱き着いているからこそ理解できる骨格の違い』など理解できたかもしれないが、彼女の脳はもう焼き尽くされてしまっており、んなもん理解できるような状況ではなかった。


というか彼女からすれば、『どこからどう見ても痴女』な現状をどうにかして挽回する必要があるのだ。わずかに残った思考スペースも、『どうすれば好いた人に痴女扱いされないか』ということを考えるので忙しいのだ。余計なことを考えている暇などない。



(どうすれ、どうすれば! こ、このままじゃ! このままじゃッ! ……そ、そうだっ!)



まぁ『ヴァル』というか『ヴァネッサ』は、『ちょっと驚いたけど重心が後ろに反らないし、守るべき対象が前にあるおかげでやり易いですわ。それを考えてのコレでしょうし、やっぱ優秀ですわねぇ。』と考えているため特に何かする必要はないのだが、即座に思いついたことを実行に移す彼女。



「『速度向上』『攻撃力向上』『継続回復』『防御力向上』『魔法攻……」



そう、目をつぶっての支援魔法の連続行使である。


密着しているがゆえに、即座にその効果が付与される、ということは特にないのだが、意味なくくっ付いたわけではないという精一杯の誤魔化し。仮面で隠されているとはいえ、思い人の綺麗な顔が真横にあるのである。どれだけ我慢しても視線がそこに吸い込まれてしまうのならば、目をつぶるしかない。そのせいで嗅覚がより研ぎ澄まされ汗の匂いをより強く知覚してしまうが、そこはもう延々と支援魔法を唱え続けることで雑念を払うしかない。


まぁ早い話。何かしていないと完全に脳が焼き尽くされしまうが故の、逃避。


しかしまぁ、“効果自体”はしっかりと及ぼされるわけで……。



「ッ! ありがとうセラっ! んじゃもうちょっと、ギアを上げていこうかっ!」



その意図は全く理解していないが、より向上した能力を楽しみながら、殲滅速度を上げるヴァル。


比較的軽めとはいえど、人ひとりを担いでいることを感じさせない跳躍を為したと思えば、近場にいたアンデッドを足場にしながら更に跳躍。敵の頭蓋を砕きながら行うのは、先ほど見せた“弓撃”の強化版だ。


跳躍前に拾い集めたであろう敵の盾を投射し飛んできた魔法を撃ち消し、一気に5本の矢を準備。セラによってなされた『命中率向上』の支援を信じた彼女によって即座に精密射撃が行われ、魔法攻撃を行っていたリッチたちの核を寸分狂わずに打ち抜いて破壊。一気に厄介ものの遠距離攻撃もちを全滅させる。



「まだまだっ!」



そして着地と同時に行われる、踵落し。


敵の頭蓋のみならずその胸骨まで叩き割るそれは、アンデッドソルジャーの上半身を装備ごと両断しながらその活動を停止させる。さらに体を捻り、突き刺さった足を敵の亡骸から外しながら行われるのは、所有者を失った武器の入手。いつの間にか彼女の手にはアンデッドの武器が握られており、周囲の索敵も完了済。


音もなく背後から強襲しようとしていたスケルトンに全く動じずに盾を投げつけたと思えば、敵の姿勢が崩れた瞬間に接近。懐に潜り込みながら剣を差し込み核を破壊している。そしてそこから強く踏み込み、『速度上昇』の効果によって本来の武装であるレイピアと槍を回収。当初と比べれば格段に数の減った敵へと、相対する。


縦横無尽に暴れ回りながらも、一切の被弾なく敵の急所だけを確実に落とす。


ヴァネッサが得意とする戦法が、支援魔法によってより高い精度で行われていた。


まぁそんな『思い通りの動きが出来る』状況において彼女のテンションが上がらないわけもなく……。



「あははっ! 最っ高! セラ! やっぱり君が仲間で良かったッ! もう一生逃がさないからねっ!」


「ッんぷッ!?!?!?」



煩悩を鎮めるために念仏を唱える者のように、支援魔法を唱えていた彼女だったが、耳元によって叫ばれる思い人の言葉に思わず吹き出してしまう。


ヴァルもといヴァネッサからすれば、『優秀な子は一生傍に置いてウチの子になってもらいますわー!』的な発言だったのだが、その受け手は現在脳が真っピンクである。“一生逃がさない”なんて言葉、禁句以上の何物でもなかった。折角少しだけましになっていたはずの赤面が、より酷くなってしまう。



そしてそこに叩き込まれるのが、“最後のアンデッド”からの攻撃。



軽口を叩きながらも、その意識を一切戦闘から離していないがヴァネッサである。軽くそれを回避し、普段使いのレイピアで刺突。骨と装備の隙間を撃ち抜いたかと思えば核である魔石を完全に破壊。即座に絶命させてみせた。そして軽く周囲を見渡し安全を確保すれば、セラフィナの身体に手を回し、くるり。


抱き着いている状態から、お姫様抱っこの状態に変えてしまったのだ。


彼女からすれば何でもない体勢変更の一つで、ずっと体に抱き着いていただろうから手も足も疲れているだろうと言う事での配慮だったのだが……。



「おつかれ、セラ。」


「//////!?!?!??!???!?!?!!!?!?!?」



やられた本人からすれば、たまったものではない。


一生懸命に抱き着いていた彼女だったが、単純なパワーであればSPによるATKブッパを行ったヴァネッサが圧倒的に上である。軽く引きはがされてしまうのは何も可笑しなことではない。しかしながら彼女からすれば、頑張って真っ赤な顔を隠していたところを、無理矢理剥がされた上にお姫様抱っこ、そこからプラスして顔を覗き込まれているのである。戦闘後ということもあり、テンションが上がり若干素が出てる思い人の顔が真ん前にあるのである。



「!?!?!?!? ……きゅぅ。」


「……え、気絶してる!?」



まぁ脳がショートして吹き飛んでしまうのも仕方のない話、なのかもしれません。


その後慌てたヴァネッサによって『振り回し過ぎたせいで負担掛けちゃった!?』と勘違いされ、呼吸しているかどうか呼吸音を調べられたり、心臓が止まってないか胸に耳を押し付けられたりなどがあったのだが、こんなのを起きている時にされると彼女のと脳が焼き焦げるどころか爆発四散してしまうため……、気絶していた良かったのかもしれない。





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