25:新メンバーですわ?
「うーん、いい人いませんねぇ。」
「そういうものかと。」
「ですわよねぇ。……うん。やっぱ慣れないわ、ベリアンヌがメイド服着てるの。似合ってるけど。」
そうですか? と返してくる彼女に頷きを返します。
現在わたくしはギルドの会議室をお借りし、私のチームに入って頂くメンバーを探している感じになります。早い話、面接やってる感じですね。ですがまぁ護衛の人たちからすれば『部屋の外は我らで固められるとしても、密室でお嬢様が二人きり!? どれだけ危険が解ってますか!?』と結構ガチでキレられてしまいました。
ということで『募集に書いた私の文字の綺麗さから、貴族であることがバレている』という事実を利用し背後にメイドを立てることでそれっぽ~い感じを出すことにいたしました。どこぞの貴族のバカ息子がダンジョンに潜りたいから仲間を集めてるって感じです。んでそういうのにグレタを連れて来ちゃうと『あれ? この人ヴァネッサ様のお付きじゃなかったっけ……?』となるので、ウチのメイド総勢で護衛の彼女。百合大好きなベリアンヌをおめかしし、メイド化して連れて来たってワケ。
「かなり観察しないと解らないレベルで仕上げてる当たり、ほんと腕いいわよねぇうちの人たち。これならわたくしがわたくしであることがバレないし、貴女なら護衛としても申し分ない。完璧ね!」
「勿体ないお言葉です。」
「……ちょっと後で特別手当出してあげるから、それで減給期間凌いでね?」
「ッ! 御意ッ!!!」
とまぁそんな会話を交わしながら、さっきまでここで面接を受けていた人の履歴書を見直します。
先ほど言ったように、私が貴族であることは『聡い方』であれば字から解っちゃうようで……。結構優秀な方が数多くやって来てくれています。まぁ単なる平民の方々からすれば、貴族との伝手と言うのは生活を一変させることが出来るかもしれない超激レアアイテムみたいなものです。飛びついちゃうのは仕方のないことでしょう。
(魔法とかで幾分か加速しているようですが、基本的な文明レベルって中世~近代ぐらいですものね。)
前世みたいに求人サイトとかがない以上、勤め先を決めるのは基本誰かの紹介です。
親の仕事を継げる方なら就職に関しては何か考える必要はないですが、それが無かったり次男三男あたりになるとても大変だと聞きます。いくら優秀であったとしても、伝手がなければ勤め先が無いのがこの世界です。
誰かに紹介してもらうか、自分から売り込みに行くか。一応犯罪者以外は受け入れてくれる冒険者ギルドって言う存在こそありますが、いつまでも魔物と戦い続けるのは難しいですからねぇ。いつかケガしちゃうかもしれませんし、年齢の問題もあります。
だからこそ『そういう先のことを考えられる』方からすれば、仕事を用意してくれるかもしれない貴族ってのは、とっても仲良しになりたい存在なのです。
(……でもまぁ、単に優秀なだけじゃ面白くないんですよねぇ。)
今回行っている私の仲間集めですが、言ってしまえばダンジョン攻略という趣味に付き合ってくれるお友達探しです。そりゃ優秀な人がいれば『公爵令嬢』として囲い込んでもいいのですが、それだと今いる護衛の子達と一緒になっちゃうでしょう? それも悪くはないのですが、やっぱり背中を預ける以上は対等なお友達が欲しいじゃないですか。
まぁそう言うこと言い始めたら面談せずに自分の足で探した方がいい、ってのは解るんですけどねぇ? この身を心配してくれる人もいますし、身分を隠し主人公から逃げてる手前、大きく動くことは出来ません。その辺りは呑み込むしかないんですよね。
「別に、今日でメンバー全員集めてしまおうってわけじゃないのです。良い人がいいれば嬉しいな~って気分でやっていきましょうか。」
「それがよろしいかと。……ではお嬢様。次の方をお呼びしても?」
「構いませんわ~。」
ベリアンヌの問いにそう答え、お願いしてから数分。彼女に連れられて、一人のシスターさんが入ってきます。確か……、あぁそうそう。ギャンブル中毒さんですわね! うんうん、グレタが『え、これの面接するのですか?』と本気で止めたがっていたからよく覚えていますとも。
そんなことを考えていると、何故かお顔に疲れを見せる彼女がこちらに深いお辞儀をしながら話しかけてきます。
「お、お初にお目にかかります。王都の教会にて侍祭を拝命しております。セラフィナと申します。本日はこのような機会を頂き、誠に……」
「あ、そういうのは大丈夫だよ。さぁどうぞ座ってください。今の僕は単なる冒険者、ですからね?」
「……畏まりました。失礼いたします。」
流石教会の階位持ちと言うべきでしょうか、お手本通りのやり取りを彼女と交わします。
私が今日は『貴族じゃなくて冒険者、平民として来てますよ~』って言う事で、あっちが敬語使わなくてもいいよ~ってお願いする感じの奴ですね。まぁ基本そう言われても貴族の力が強すぎるので敬語を外す人は滅多にいないのですが……。流石侍祭様。雰囲気を少し柔らかくすることで、此方のオーダーに上手く答えています。
うんうん、前情報にもありましたが、優秀な香りがプンプンしますね!
「えっとですね……。うん、まずはわざわざ来てくれてありがとう。一応僕の出した募集を見てきてくれたって言う認識だけど……。間違ってないよね?」
「えぇ、はい。その通りございます。」
「よかった。じゃあ悪いけど、何が出来るか教えてもらってもいいかい?」
『ヴァル』としての口調を意識しながら、問いかけます。
メイドのグレタが引っ張ってきてくれた彼女の情報や、我が家で抱えているその他の情報網などのおかげで、彼女含め今回の面談対象者の情報は殆どそろっています。なので大体のことは把握しているのですが、やっぱり本人の口から聞いた方が良いこともありますからね。ほら、言い出す順番とかで『自己評価』も解るでしょう?
そんなことを考えながら彼女の言葉を聞いていると、やはり聖職者ということで後方からの支援を得意とするようです。一応単身でも戦える力もあるようですが、本職ではないので自信なしとのこと。まぁ典型的な回復役って感じですわね。
(面談をする皆様には、『行われる日程などに付いて口外しないように』という条件をお付けしています。実は対象者の周囲に家の者を付けていますので、“秘密を守る”能力も見ていたのですが……。)
上がって来た報告を見る限り、特に問題なし。
うんうん。ここまでは問題ないですわね! ここまでは。
「……成程。とてもよく解ったよ。やはりダンジョン攻略の際には優秀な回復役が欲しい所だからね、セラフィナさんみたいな人がいれば、とても安心できると思う。」
「勿体ないお言葉です。あぁそれと、ぜひ“セラ”とお呼びください。少々長いですし、教会の皆からそう呼ばれていますので。」
「そう? なら僕も呼び捨てでいいよ。……じゃあセラ。ここからは君の人となりを知りたいのだけれど、何か趣味とかある? 普段は何してるかとか、教えてくれるとありがたいかな。」
ふふ、どう答えるのでしょうね。
資料を見た感じ、かなり人生の割合をギャンブルに掛けていられるというか、結構な額の借金を抱えていらっしゃるようなのですが……。その答え方次第で、『私の好き嫌い』が変わります。
私も貴族ですし、嘘くら普通につきます。というか現在不登校関連の特大の嘘を錬成している真っ最中です。なので別に嘘つかれても怒りませんし、誤魔化されても別にいいのですが……。そこに面白さがなければ、あまり興味はありません。一緒にダンジョンに行くということは、趣味という大切な時間を共有するということ。そんな仲間と言える人がつまんないのは、誰だっていやでしょう?
さ、返答を聞かせてくださいまし。
「…………実は、賭け事を少々。」
「へぇ?」
少し言いよどみながらも、真実。
「普通、そういうのは隠したくなるようなものだけど、何でかな?」
「……聖職者として恥ずべき趣味だとは理解しておりますが、ヴァル様……、失礼いたしました。ヴァルさんの前で嘘をつく方がよろしくないと判断いたしました。ご存じでもおかしくない、と思いましたので。」
「なんでそう考えたのかな?」
「状況、で御座います。」
成程成程、まぁ確かにギルドの会議室を貸し切れてる時点で、ギルドに配慮を求めれる上位貴族ってのはすぐに解る。後はメイドを傍に置いていることとか、この部屋の周囲を囲んでいる『ギルド職員』に扮した護衛の皆様の視線を察知して、とかそう言うのかな?
相手が上位貴族であればあるほど、その護衛は多くなるし、対面する相手の情報はしっかりと集めているはず。だったらもうバレているはずだから、嘘をつかず『名前と存在を覚えてもらう』方向にシフトした、って感じかな? この世界の教会って私が知る前世と比べ結構緩い感じですから、別に聖職者でありながら貴族に仕えてもいいですし……。ここで仲間として採用されなくても、いつか何か転がって来るかもしれない。未来への投資ってやつですか。
うん、いい度胸。あと“面白い”ですわ。
初対面で性癖の話ぶっこんできたベリアンヌには劣りますが、十二分に“傍に置きたい”人材です。
「……ふふ、うん。気に入った。面白いね、セラ。」
「なにより、です。」
「っと、趣味のこと笑われても困るよね。ごめん。うん、じゃあ君採用だから。今日からよろしくね?」
「…………よ、良いのですか?」
もっちろん。
立ち上がって傍により、その肩を持ってこれからよろしくね~と軽く叩いてあげる。
セラちゃんからすれば、『あ、多分ギャンブル狂いなのバレてる、落ちたわ。でもただじゃ転ばないッ!』って感じだったんでしょうが、んなもん知りませんわっ! 能力があって、マイナスだけどキャラが立っている! 我が家で雇い入れてる人何かと癖が強いですし、やっぱりそれに劣らぬ個性が欲しかったのです。ギャンブルに狂ってるのは確かですが、聖職者として破綻してるってわけではないみたいですし……、うん! 気に入りました!
正体の解らぬ私に対しても、嘘をつかなかったのは高得点ですしね!
(あ、でも。仲間にするのなら『闘病』の準備も整えなきゃですわね。)
この世界じゃまだ、単なる『だらしない人』扱いなギャンブル中毒ですが、私が生きた前世では病気扱いのものでした。つまり私の認識も、そういう感じです。だったらやはり治療して差し上げたいですし、彼女以外にもいるだろう“中毒”に苦しんでいる方を救って差し上げたいという気持ちもございます。おせっかいかもしれませんが、今のわたくしって公爵令嬢ですからね。お金と権威はあるのです、ノブレスオブリージュって言葉もありますし、社会貢献すべきでしょう?
うん、そうと決まればこの子を最初として、医療チーム作っちゃいましょ! まぁセラさんからすれば、自分の趣味を否定されるようなものなので、否定せずにお話しながらって感じにはなりますが、体系立てることが出来ればこの世界の医療の発展にも貢献できるかもしれません!
(あとちょっと打算的ですが、最近主人公とばったり会ったりと運がヤバいので、ここいらで善行積んで徳を上げておきたいっていうのも……。)
よし! そうと決まれば早速コミュニケーションのお時間ですわ! 『ヴァル』として接する感じにはなりますが、もっとセラちゃんの事教えてくださいまし~! あ、でも。やっぱり借金とかあると色々困りますし、判断が鈍りますわよね。わたくしが立て替えてあげるから、さっさと教えなさいな。あ、現金そのままでは渡しませんわよ? 家の方で差配して、借主様の方に送りますので!
んで、実際幾らぐらい借りてるんで?
「ざ、ざっと合わせて20億ほど……。」
「………………ごめん、無かったことにしていい?」
そう言った瞬間。一気に私に胸を押し付けながら、なだれ掛かって来る彼女。
「ヴァル様ッ! 見捨てないでくださぃぃぃ!!! 今月、今月ほんとにヤバいんですッ! わぁぁぁあああああ!!!!!!!!!!」
「え、えぇ……。」
「ちょ、おまっ!? おじょ、『ヴァル』様から離れろッ!!!!!」
あぁうん。泣き落とし+色仕掛けも出来るタイプのシスターさんでしたのね。うん。しかも修道服からは解りませんでしたが、結構いいものを持っていらっしゃるというか。絶対下着とか重さで苦労してそうな重さというか。うん。20億って、えぇ……。いや払えなくはないですけど。えぇ……。なんで個人でそれだけ借りれてるんですか?
……早まりましたかね? ちょ、ちょっと一回保留にさせてくださいまし~。




