14:誤魔化しますわ!
よ、よし、もう行ったよね? 行ったね?
「あ、あぶねぇぇぇ……!!!」
例の彼女、『すいらび』の主人公ことノエルちゃんが走って行ったのを見送った後、思いっきり息を吐き出します。いやほんとに、本当に間に合って良かったですわ……。
こんなところで主人公を失う、それも私の手の者によって失っちゃうとか、どう考えても避けなければいけないことですもの。口調が思いっきり崩れたとしても、仕方のないことなのです。
なにせ原作における彼女の存在は、非常に大きなものです。まぁ主人公ですからそうなるのも仕方ないのですが、彼女がいなければ私の婚約破棄どころか、世界までぶっ壊れる可能性があります。この前少し話しましたけど、普通に魔王とかいる世界ですからね、ここ。
それを主人公が倒してハッピーエンドなわけですし、こんな最初のダンジョンで死なれちゃ困るんです。
(それに、私から王子を寝取ってもらわなきゃいけないんですもの! ……いやそもそも寝てませんが。)
正直あの子、最初からタフネスの塊みたいな子ですので別に放置してても勝手に世界救ってくれるだろうなぁと思い、『関係を持ちたくないから』ということでその所在を調べることすらしませんでしたが……。まさかこんなところで出会うとは……。
「ま、ともかく。何もなくてよかったですわ。護衛の方も急に割り込んでごめんな……」
「お、お嬢様にて、手を上げるなどッ! もう生きてられませんッ! 死にますッ!」
「介錯し申す……。」
「だ、ダメダメダメダメッ! な、何してるの貴方たちッ!」
さっきまで振るってた大剣を自分の腹に突き刺そうとする護衛の子に、その後ろで首を落そうとしている子。
なんとか剣と体の間に入って止めますが……、いやほんと何してるの貴方たちッ!? というか切腹とかいう文化どこから出て来た!? こっちで日本っぽいの一度も見たことないわよッ!? と、とにかく勝手に死なないでくださいまし!?!?!?
「で、ですがお守りするべきお嬢様に手を上げてしまったとなれば、もう死ぬしかないですし……。」
「それを止められなかった私も責任を持って首を落し、自分のも落さないといけないですし……。」
「や、辞めなさいおバカッ! 私が気にしてないからいいのッ!」
そもそも私を守ろうとしたが故の行動でしょうが! それなのに罰してたらご乱心扱いされるわよ私!?
え、なに? このラモルヴィーヌ家の一人娘、ヴァネッサの品位を下げようとしてそんな行動してるの? もしスパイとかだったら最適な行動だろうけど、違うでしょ? だったらさっさと剣を収めてシャキッとしなさい! こういう権威振り回すの苦手なのにやってるのよ? ほら公爵家の娘が構わないって言ってるから従う! OK!?
「「も、申し訳ございません……。」」
真っ白でしわくちゃになった紙みたいな顔。今にも死にそうな表情ではありますが、一応自死するのをやめてくれます。ほんとにもう、そう言う忠義は嬉しいけれど、多すぎても困るのよ。そもそも敬われたり跪かれたりするの苦手だし……。
まぁ、彼らが速攻で排除に動いちゃった気持ちもわかります。
未だに慣れませんが、一応私は公爵家の娘で、王子の婚約者となっています。この身には不相応ですし、すぐに破棄してしまいたい婚約ですが、ひっくり返らない事実です。そしてあの時彼女は、ダンジョン攻略中ということで武器を持っていました。全く知らない相手が、武装して近づいてきている。普通に考えれば、超危険です。
(前世っぽくいうと、総理がゴルフを楽しんでいる時に拳銃持った見知らぬ奴が走り寄ってきたような状態ですからね。日本じゃそうありませんけど、他の国だったらその場で即射殺されてもおかしくない奴です。)
つまり、護衛の彼らは単に仕事を熟しただけ。私が止めに入るなど想定外。彼らを非難することなど出来るわけがなく、むしろ私が非難されるべき案件です。二人が自死しないよう咄嗟に偉そうにしてしまいましたが……、すっごい罪悪感。でも私が謝り過ぎると、この人たち普通に命をポイしちゃいそうな感じですから、一旦この話題は横に置き、背中をパンパン叩きながら大丈夫だと言い続けなければなりません。
特に真っ先に斬りかかった子、彼女の精神的ダメージが大きそうですからね。ケアしませんと。
「よし! んじゃさっさとダンジョンからオサラバしますわよ!」
「も、申し訳ございませんお嬢様。自身のせいで御身のお時間を……。」
「気にしないで! というか多分コレ、急いだほうがいい奴です。」
「そう、なのですか?」
えぇ、だってこのダンジョンの出入口。我が家の護衛で埋めちゃってるでしょう?
正直そこまでしなくてもいいとは思うのですが、未だ自身はレベリングの過程。よわよわヴァネッサ様であることは間違いありません。家の者たちからすれば、そんな私がダンジョンに入るのは心配でならないのでしょう。ということで現在このダンジョンは我が家によって貸し切り状態となっており、出入り口に護衛達が詰め、人が出入りできないようにしています。
ま、早い話。私と王子の婚約が気に入らない者たちからの暗殺者対策ってわけですね。
それでもし、警戒している彼らの眼の前に、主人公ちゃんがダンジョンから出てきたら……!
『貸し切りしてるのになんか知らない人が出て来た』→『ダンジョンの中で隠れていた』→『ソレ対策に先行チームと追跡チームを投入してお嬢様を護衛している』→『そんな彼らからの連絡はない』→『今出て来た奴に護衛もお嬢様もやられた可能性が高い』→『殺さなきゃ』
になります。
まぁウチの人たち、私に仕えてもらうのが申し訳ないぐらいに優秀な人が多いですからね。多分この結論にたどり着くまで1秒もかからないんじゃないでしょうか?
……うーん、不味いですわねッ! いくら主人公と言えど、この時期は入学したばかりの初心者。いくら才能があったとしても、ずっと真面目に訓練して来た護衛の皆さんを30人以上相手するとなれば……。何の抵抗も出来なく死にますわね!
「…………こ、こっちも急がねぇとやべぇですわッ!!!」
「た、大変申し訳ありませんお嬢様。あ、あの方は一体……?」
「え、あ、うーんと。」
私が次にしたい行動を理解してくれたのでしょう。ダンジョン攻略には必須なアイテム、すぐにダンジョンの外に出ることが出来る『帰還』の準備をしながらですが、護衛の方がそう聞いて来てくれます。それによって、動き方を変える、って感じでしょうね。
……なんて言いましょ? 正直に『私から殿下を奪い取ってくれる方ですわ!』とは言えませんし。
「私の大事な友人で、今後絶対に必要な人材です! ですがとりあえず、我々のことは伏せる方向性で!」
「畏まりました……。では先ほどあの方に攻撃してしまった我らを『盗賊』とし、出入り口をふさぐ者たちを『その討伐に来た騎士団』ということにしてはいかがでしょう? 人数が人数ですのですぐに全員の撤退、及び隠蔽は難しいと思われます。『ダンジョンから出て来た者の護衛』という体で人を付けることも出来ます。見た目からして、おそらく学園の生徒でしょうから……、寮までお届けする形でよろしいでしょうか?」
「さっすが! 完璧ね!」
お礼を込め、ギューっと抱きしめちゃいます。ほーんと私にはもったいない人たちですわ! それならあの子に疑問を抱かせずいい感じに出来そうね!
「……あ、それとは別件なんだけど。)
「如何しました?」
「今、普通に始業時間過ぎてるわよね? あの子私と同じ新入生だったはずだから……。つまりズル休み仲間ね! 仲良くなれそう!!!」
「…………大変差し出がましいのですが、学園には行かれた方がよろしいかと。」
「イヤですわ~!」
まぁそうは言いましたけど、あの子入学3日目からダンジョンに向かうって、かなりのダンジョン好きですわね。確かにゲームでもRTAの場合、授業を受けずにイベントとダンジョン攻略だけを進めるほうが効率が良かったりしますが……。もし彼女に『プレイヤー』が関与しているのであれば、さっきの護衛の子がしてしまった襲撃から逃げることはしなかったはずです。だって経験値から逃げるわけありませんもの。
……あまり好みではありませんが、ちょっと調べた方がいいかもしれませんね。
(ま、背後にプレイヤーがいようがいまいが、私の目的は変わらないのです。今日は雰囲気的に私も屋敷に帰ることになるでしょうが……。レベリングをもっと頑張って、ダンジョンを楽しみ尽くすとしましょう!)
〇ヴァネッサ
帰還後、今回即座に動いちゃった護衛の2人の最適な動きを称え幾つかご褒美を上げた。ついでにいつも迷惑かけてる護衛の皆さんの食事場に突入し一緒にご飯を食べたそうだが、そのせいで自分用の夕食が食べられなくなりメイドのグレタに絞られたご様子。
〇ノエル(主人公)
外に出て自分が一日中ダンジョンにいたことに気が付き、普通に授業が始まっていると理解し青ざめた。外にいた騎士さん(ヴァネッサの護衛の一人)のおかげで『ダンジョンに居座る盗賊騒ぎに巻き込まれた』という扱いとなり、無断欠席とされることは無かったが、滅茶苦茶注目を浴びてしまいまた居心地が悪くなってしまったご様子。それと最近少し頬を赤らめながらぼーっとする時間が増えたとのこと。
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