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悪役令嬢、不登校を決める。~学校サボってダンジョン行きますわ!~  作者: サイリウム


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13/36

13:別視点、主人公


数日前、ヴァネッサが不登校を決め込んだ日。



(こ、こんな大きな建物初めて見た……!)



王都にある王立魔導学園の大きさに圧倒される少女。


彼女こそがヴァネッサが前世楽しんでいたゲーム、『すいらび』の主人公こと『ノエル』だった。


服装こそ学園指定の制服で身を飾ってはいるが、その動き一つ一つにどこか芋っぽさを感じさせる少女。しかしそれはそのはず。なにせ彼女は辺境の農村出身で、今年度の新入生の中で唯一の平民。すべての貴族子息子女が集まるこの学園において思いっきり浮いている存在が、彼女だった。



(地面は土じゃなくて全部白い綺麗な石だし、何処を見ても綺麗な装飾ばかり。うぅ、パパママぁ。私絶対場違いですよぉ……。)



そんな弱気になっている彼女の学び舎。この王立魔導学園は王家が出資していることから『貴族の子供たちを一か所に集め人質としながら、王家に忠誠が向くように教育する』という方針を持っている。しかしその名に『魔導』の名があるように魔法を学び研究するという面も持っていた。


そもそもこの世界における魔法というものは、とても貴重なものとなっている。


何もない場所に火や水を生み出したり、遠距離から素早く高火力で敵を攻撃できるのが魔法。もし使用できるのであれば万人が使いたいと思う存在だが、これには一定以上の魔力を必要としている。確かに生まれながら誰もが魔力を保有しているが、魔法として形に出来る様な魔力を持つのはごく少数。


よりゲーム的に言うならば大半の者がMPが0.1~1ほどしか持っておらず、魔法的攻撃が出来ない様なものが大半なのだ。



(だから魔法はお貴族様の特権、私なんか一生縁が無いと思ってたのに。)



そんな奇跡なような力だからこそ、身内に取込み管理したい。


この世界の権力者たちは古代の時代からそう考え、『魔法が使えるものが貴族』という方針を打ち出した。早い話、魔法を使えるものに片っ端から爵位を授与していったのである。魔力を使えるものを把握し、爵位という地位を与え恩を感じさせることで、有事の際に力を振るってもらう。ヴァネッサやノエルが生きるこの時代においてはそこに土地の問題などが絡んだりしているが、ともかく『魔法=貴族』という法則が出来ているのが、確かだった。


しかしながら何事にも例外があるように、貴族以外の者。平民が魔法を使えるという状況は存在している。



(パパもママも、お爺ちゃんもお婆ちゃんも魔法なんて使えないのに。……なんで私使えちゃったんだろ。)



それがノエルのような、突然変異。もしくは隔世遺伝である。


男爵家やその下の騎士爵の者に多いが、貴族が平民に成るという事象は存在している。家に余裕がないため家から追い出され、そのまま平民となるのはよくある話だ。その多くが魔法という特別な力を使える以上、軍や他の家の護衛として雇われりたり、冒険者となって財を成すのが大半なのだが……、時たま近くの村に住みつき家庭を為すことがあった。


それが原因で子孫が先祖返りしたり、何かの弾みで魔力の才が飛びぬけた状態で産まれたり。


珍しいことは確かだが、歴史を振り返れば結構な数が存在している事象。国の管理から外れてしまった存在の1例が、ノエルだったのだ。無論放置してもそこまで大きな問題ではないのだが、管理外の存在が想定以上に強く成ったり、何処かに抱え込まれては大きな損失。故に国としては、それを調べ管理するシステムを学園に組み込んでいた。


それが王立魔導学園が行っている定期検査であり、平民の魔力保持者を探し出し生徒としてスカウトしてくるものだった。ちなみにスカウトと言いながら半ば強制である。



(私が抜けて働き手がいなくなった分のお金がお国が出してくれるし、学費も寮費も食費も出してくれる。至れり尽くせりだけど……。うぅ! もう帰りたいですぅぅぅ!!!)



心の中でそう叫びながら、歩く彼女。


彼女自身も、自分が場違いであることは強く理解している。できればすぐに家に帰りたいが、彼女の故郷は王都から遠く離れた場所。歩いて帰ろうにも途中で野垂れ死ぬし、乗り合いの馬車を使おうにもそんなお金はない。故に出来るだけ目立たないように道の端に位置しながら、入学式の式場へ向かう集団について行くが……。やはり目を引いてしまう。


入学に際し超特急で読み書きの教育を受けたノエルだが、それだけでは育ちは隠せない。姿勢は良い方であったが、貴族特有の洗練された足運びなど彼女が知るわけない。見る者が見れば、白鳥の中に雀が紛れ込んでいるような状態だったのだ。


まぁだからこそ、『いち早く見つけてもらえた』のだが。



「あら、ノエルさん。」


「ッ! ハバネールせんせーッ!!!」


「あぁもう、淑女が人前で泣いてはダメだと言ったではありませんか。」



そんな彼女に救いの手を差し伸べたのが、編み込んだ長い髪ととんがり帽子が特徴的な魔女。


ハバネール先生である。


ノエルの村に赴いた際にその魔法の才を見出し、読み書きを教えてくれたその人だ。ちなみにノエルが今年割り振られるクラスの担任であり、ゲームでの活躍を知るヴァネッサからすれば『あ、ヘルプ機能で色々教えてくれる人』である。



「わ゛、わ゛た゛し゛。心゛細゛く゛っ゛て゛ぇ゛!」


「鼻水まで流して……、ほらハンカチを差し上げますから。それで清めなさいな。」


「あ゛り゛が゛と゛う゛ご゛ざ゛い゛ま゛す゛!!!」



微笑ましいやり取りを交わしながら、入学式の行われる場所まで歩いて行く二人。


どうやら先生としては初めての場所に放り込まれることに成るノエルのことを気にかけてくれていたようで、途中まで一緒について行ってくれるご様子。彼女はそれに感謝しながら、涙と鼻水でべちぇべちょになってしまったハンカチを懐にしまう。一瞬そのまま返そうとしたら先生の表情が固まったので、洗った後に返そうと思っての行動だった。



「そうだ、ノエルさん。先日お送りした冊子はもう読まれましたか?」


「あ、あの赤い本ですよね。じ、実はまだちょっと……。」


「……まぁ読み書きを覚えられたばかりですし、仕方ないですね。まだ入学式まで時間がありますし口頭で説明させて頂きましょう。何か解らないことがあれば、すぐに挙手するように。」


「はい先生!」



そんなこんなで始まる、マンツーマンの講義。


内容は入学式の進行からはじまり、ノエルが利用する寮の注意事項まで。出来るだけ学園生活を良いものにしてもらおうと細かな捕捉を入れながら先生が教え、それを出来る限り頭に叩き込んでいくノエル。まだ頭を使うことに慣れていないせいか少々戸惑っている彼女ではあったが、先生の助けを借りながら何とか理解していく。



「……まぁこんな感じですね。もし忘れてしまったり新たに解らないことが出てくれは適宜質問しに来てください。いつでも対応しますから。」


「えっと、入学式の後がこうで。寮の時間がこうで、ご飯がこの時間で……、あ、はい! 頑張ります!」


「えぇ、頑張ってください。あ、そうそう。学外の活動についても説明しておかなければですね。」


「学外、ですか?」



そう繰り返しながら、頭をかしげるノエル。


彼女は国からの支援を受けその多くの費用を負担してもらっている身ではあるが、流石に国も何から何まで支援してくれるわけではない。無論適切な物であれば申請後に出してくれるのだが……。申請内容の審査などを経るためどうしても時間がかかってしまうし、娯楽品などは確実に許可が下りない。


故に、というわけではないのだが……。学園としては『実践』の目的でダンジョン攻略などをお金稼ぎの手段として推奨していた。



「えぇ。私はあまり好みませんが……、学園での授業の多くは、攻性魔法を扱っています。昨今の学説において『魔法習熟には実戦が最適』ということから学園では『ダンジョン攻略』が推奨されているのです。お金も稼げますし、進んで行っている生徒は少なくありません。」


「はぇ~。」


「学園が斡旋するバイトなどもございますが、手早く効率的に稼ぐにはダンジョンが良いというのは否定できません。いざという時に身を守れるよう鍛える必要もありますから。」



あまり生徒に危険なことはしてほしくないという姿勢を貫きながら、説明を続けていく先生。



「そうですね……。ではまず、入学祝として1000Gほど差し上げます。明日の午後に時間を作りますので、その時に一緒にダンジョンを覗いてみましょう。冒険者ギルドの使い方や、学園と提携している鍛冶屋や薬屋もお教えしようと思うのですが……、大丈夫ですか?」


「い、いいんですか! 勿論です! ありがとうございます!!!」


「構いませんとも……、っと。そろそろ入学式ですね。ノエルさんの出席番号はこちらですので、これと同じ席に座っておいてください。ではまた式の後で。」


「あ、はい!」



とまぁそんなことがありながら入学式。


壇上に上がる王子様を見て『凄い綺麗な人だなぁ』なんて思って聞いていると、いつの間にか閉会。そのままクラスごとに移動し、教室で説明を受けてそのまま今日のカリキュラムは終了という形になった。


なおその後、寮に帰る際に学園内で迷ってしまい、偶々王子に見つかって案内してもらうというイベントがゲームにて存在していたのだが……。この世界における王子はヴァネッサを思うあまり速攻で学園を出発しているため不発。たまたま近くを歩いていた教員を見つけ、ノエルはその人に連れて行ってもらうことで無事帰宅することが出来た。


その後は特に大きなイベントはなく、寮の一人部屋に驚いたり、ベットのふわふわさに驚愕したり、寮で出されるご飯の量と美味しさにひっくり返ったりしながら、次の日。特に何事もなくハバネール先生との課外授業、ゲームで言う『チュートリアル』を終わらせ……。



(よし! 今度は一人で潜ってみよう!)



入学式から、2日目。ヴァネッサが先日貸し切り状態にしていた初心者用ダンジョンへと入った彼女は、その入り口の前で気合を入れていた。



(確かにお勉強も大事だけど……、やっぱり強く成らなきゃ!)



入学式の前は寂しさの余り人前で泣き叫んでいた彼女であったが……。そもそもノエルは、家族思いの良い子だ。


半ば強制とはいえ魔導学園に進んだのも、そっちの方が家族に良い暮らしをさせてあげられると思ったから。沢山稼いで、沢山仕送りして、沢山幸せになってもらう。まだあまり賢い子ではなかったが、それに必要なのは『強さ』であるということを理解した彼女は、早速ダンジョンに挑もうとしていたのだ。



(ハバネール先生に教えてもらったけど、私が貰ってる奨学金の条件は、かなり良心的。『もし希望がなければ、卒業後に軍に入る』っていうものだけ。)



魔法使いに爵位を与え管理している国ではあるが、建国から時間が経った今。与えられる爵位や土地に限界が出てきているのがノエルの住む王国だった。故に平民からスカウトして来た魔法使いには爵位を与えるのではなく、軍に入れる様なルートを用意している。


“希望があれば”というのも、国としてはその所在を把握し有事の際にその力を発揮してもらえればいいのだ。何かしらの大きな実績を上げて貴族に成ったり、何処かの貴族に気に入られて雇われたり家に入れられてもいい。そう言う意味でも“希望があれば”というものだった。



(まだ先のことは全然わかんないけど……、どんな未来でも、絶対に強さは必要。学校ではいっぱい勉強を頑張って、終わったらとにかくダンジョンに行って強くなる。ついでにお金が稼げるわけだから、家に仕送り出来るし……! よし、がんばろ!)



とまぁそんな感じでダンジョンに入っていく彼女。


そもそも彼女、ノエルはゲームの主人公を張れるくらいの人間なのだ。『初期ステータス貧弱ですわね』と思い悩んでいたヴァネッサと違い、最初から結構いける口である。そもそものスタミナがかなり多かったこともあり、剣を振り回しながらダンジョンを隅々まで歩き回り、1階から最終階の5階を行ったり来たりしていた。


実力的には既に『適正レベル』を超えており、次のステップに進んでもいいのだが……。チュートリアルの際にハバネール先生から『少なくともこの月は初心者向けダンジョンで頑張りましょう。それと一人は危険なので、仲間も探すように。学園で声をかけてみるのもいいかもしれませんね』といわれたからこそ、律儀に守っていたのだ。



「ふぃ。……そう言えば今何時くらいなんだろ? お金足りなかったから時計買えなかったし解んないや。そろそろ疲れて来たし、もう夜なのかな? でも結構潜ってた気がするから朝……、は流石にないか。」



そんなことを言いながら、さっきまで戦っていた魔物の魔石を引き抜き、革袋に入れる彼女。


ちょっと疲れた、ということで帰路に付く彼女であったが……。実は彼女、文字通り『一日中』ダンジョンへと籠っていた。文脈に寄るが普通一日中というと朝から晩まで、長くても12時間ほどであるのだが、彼女は文字通り1日。24時間以上ダンジョンに籠っていたのだ。


時計も持たず、薄暗く殺風景なダンジョンとなれば仕方ないのかもしれないが……。スタミナお化けである。


まぁそのせいで普通に日が上っているし、授業も始まっているため遅刻の真っ最中であるのだが、現在の外の様子を把握していない彼女からすれば、『まだ寮の晩御飯残ってるかな~』と思うレベル。


無論、とある尊き人がダンジョンを貸し切り状態とし、趣味に励んでいるとは知らないわけで……。



「ん~? なんか魔物の数が急に少なくなってきた気がする。もしかして他の人が近くで戦ってたりするのかな? ……1日中潜っちゃってたし、疲れちゃったや。明日授業日だったし、もう帰って休もうかなぁ。」



その後ろから無音で剣を叩き込もうとしている護衛の存在も、知るわけがない。


剣が風を切る音で何とか振り返ることが出来たが、時すでに遅し。全く知らない人から、脳天に向けて剣が振り下ろされそうになった瞬間……。



「ッ!」


「え、な!? は!? え!?」



差し込まれる、細身の剣。


何故かノエルを攻撃しようとしていた敵が酷く狼狽えているが……。彼女の眼はその敵ではなく、自身の命を救ってくれた眼前の存在。大き目の外套と目元の仮面で顔を隠しているが、おそらく男性。依然として状況が呑み込めないノエルではあったが、眼前の彼が命を助けてくれたのは、理解できた。


そして、何故か高鳴るその心臓。仮面の奥に秘められた真っ赤な瞳に、吸い込まれそうになるノエルだったが……。



「ここは“僕”が引き受ける! 君は逃げなさいッ!」


「え、あ、でも!」


「いいから、早くッ!!!」


「~~ッ! あ、ありがとうございますッ!!!」



その声によって正気に戻る彼女。一瞬加勢しようとした彼女だったが、仮面の男に強く急かされ『自分は邪魔だ』ということを理解し、すぐに走って逃げだす彼女。


全速力でその場から逃げるノエルだったが……。


あの仮面の人が頭から離れない。



(はっきりわかんなかったけど、すっごく綺麗な人……、じゃない! 早くギルドまで走って救援を呼ばなきゃ! 疲れてるとかそんな話じゃない! 急げ私ッ!)





仮面をつけて男性の振りをしながらダンジョンに潜ってる人なんて。一体、何ヴァネッサ様なんだ……。け、見当もつかない……!



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