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Magicians Circle  作者: ransu521
水の都グレイブスタン王国編
79/309

そして別れの時

翌日。


「もう昨日は大変だったんだぜ」

「瞬一……さすがに今回ばかりは同情してやるぜ」

「お気づかいどうも。けど、そんなのはいらねぇよ」


俺達は話をしながら朝食をとっていた。

俺は昨日の決闘の話を。

晴信達は昨日の観光の話を。


「みなさん、今日には帰られてしまうのですよね?」


アイミーが俺達にそう尋ねる。


「はい。今日帰らなければ、いろいろ準備をしなければいけませんし」

「そうですか……」


少し残念そうな表情を浮かべるアイミー。


「そんな顔すんなよ、アイミー。別に今生の別れってわけじゃねぇんだ。また会えるって」

「……ですよね。死別するわけじゃないんですから、必ず会えますよね?」

「ああ!」


笑顔でそう言ってやる。

葵達も、俺の言葉に頷いていた。


「……私は、良き人達をたくさん得たような気がします」

「なんか、そう言われると照れるな」


そう言ったのは、葵だった。

右手で頭をかきながら、恥ずかしそうにそう言った。


「ま、そんときはアイミーンちゃんを俺のよ……」

「自主規制」

「ぐはぁ!!」


何やら不穏な言葉を言いかけた晴信をライトニングで防ぐ。


「大和君……これなんてどう?」

「う、うん。おいしいよ」

「(^-^)」


……あそこはまだやってるよ。

相変わらず変な空気だしてるな……北条の周りだけ。


「んじゃ、朝食も食べ終わったみたいだし、そろそろ俺達は行くとするか」


席から立ち上がり、俺はそんなことを言う。


「何だか早いですよね。時間が過ぎるのが」


空が、今日までのことを思い出しながらだろうが、そんなことを呟いた。

それについては、俺も同感だ。

楽しいことってのは、やっぱり早く過ぎてしまうものだよな。


「え?もう行くの?」

「何言ってんだよ。そのために荷物をここに置いてるんだろうが」


北条がそんなことを尋ねてきたので、俺はそう答えてやった。

そう、俺達は朝食を食べおえた後すぐに城から出られるように、荷物を食堂に持ってきてしまったのだ。

……別に早く帰らなければならないわけじゃないが、こういうのは早い方がいいだろう?

それに……また城なんて帰ってきてしまったら、それこそ帰りたくなくなってしまう可能性が高いしな。


「いっそのこと、この国で暮らしてみてはどうかな?」

「……国王、いくらなんでもそれは……」


国王のそんな言葉をやんわりと断り、俺達は荷物を担ぐ。

さっきのさっきまでピンクな雰囲気を醸し出していた北条も、慌てて荷物を持つ。


「さてと。晴信はここに置いてくとして……」

「ちょっと待て!何気にお前、俺のことをいらない的な発言してないか!?」

「え?違うのか?」

「当り前だろ!確かにこの城にいたいが、それは違うぞ!!」

「……やっぱり持って帰って、別の所に……」

「処分か?処分されるのか?処分する必要がどこにある!!」


お前が人一倍変態だからだよ。

という言葉は飲み込んでおいた。


「アンタが人一倍変態だからよ!」


北条が代弁してくれた!?


「男が変態で何が悪い!!」


開き直った!?

コイツ、ある意味言葉の使い方がうまくなってやがる。


「……ハァ」


最終的には北条が溜め息をついてしまう始末。

そして、


「(*_*)」


この表情である。

葵も、今の発言を聞いて、晴信のことを軽蔑の眼差しで見つめていた。


「そんな目で……俺のことを見るなぁあああああああああああ!!!!」


荷物を放置して、晴信は勢いよく食堂から出ていった。

……せめて荷物は持っててくれよ。


「そんじゃ、俺達も行くぞ」

「だね」


晴信の後も追わなくてはいけないこともあり、予定よりは若干早いが、俺達も出ることにした。


「んじゃ、アイミー……またな」

「……はい!」


最後の別れってわけじゃないから、『さよなら』とは言わない。

これ、友達と別れる時の基本……でもないけど、なんというか、礼儀?


「何してるの瞬一?置いてくよ~!」

「今行くっての!」


葵に呼ばれて、ハッと思考を呼び戻す。

そして俺達は……二泊三日という、決して長い間いたわけではない城に、別れを告げた。

……そういや、結局見合いはなかったことになっちまったみたいだな。

少々残念……かね。
















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