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Magicians Circle  作者: ransu521
水の都グレイブスタン王国編
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黒いオーラ……?

「ハァッ!」


奴の腹に峰打ちを決めてから、俺は思い切り刀を振り下ろす。

苦しそうにしながらも、メルゼフは反撃をしようとする。

だが、それよりも俺は早く……。


「……これで終わりだ」


喉元に刀を突き付ける。

この後、どう動いても、メルゼフが俺に勝つことはない。

なぜなら、俺はメルゼフの後ろに周り、刀の刃の部分を、喉元に突きつけている形だからだ。


「……」

「これで俺の勝ちだ。どう動いた所で、お前は喉を斬られて死ぬぞ。潔く負けを認めろ」

「……」


俺が何を言っても、メルゼフは黙ったままだった。

……早く負けを認めろよ。


「……私は」

「ん?」


その時、メルゼフが口を開いた。


「……私は、こんな所で負けるわけにはいかない」

「は?何を言ってんだよ。この状況下で降参しないのは、勝負を放り投げてるのと同じだぞ?」

「勝負?……そんなの関係ない」

「あん?」


元々この決闘は、メルゼフが言いだしたことで、アイミーを賭けての戦いじゃなかったのか?


「もうそんなのどうでもいいんだ……私はただ、アイミーンと共に暮らしたいだけだ。そのためには……君はどうしても邪魔だ!!」

「え……ちょ……」


な、何なんだ!?

メルゼフが黒いオーラに包まれてる!?

こんな状態……見たことないぞ?


「ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「おいおい、ちょっと待て……よ!?」


叫び声をあげたかと思うと、メルゼフはその場から消え去っていた。

……ちょっと待て、あの状況から脱出したってのか?


「シュンイチ!後ろです!!」

「え?……うわっと!!」


素早い突きを繰り出してきたメルゼフの攻撃を、慌てて避ける。

……何だ?

スピードが先ほどの物の比じゃないぞ……!!


「ハァッ!」


そして、たった今攻撃を避けたばかりの俺に、メルゼフが仕掛けた攻撃は、


「え……魔術!?」

「ウォラ!!」


何と、黒い弾を俺に向かって撃ってきたのだ!!

……コイツ、決闘のルールを自分から破ってきやがった!!


「くそっ!……あらゆる害から身を守る不可視の壁よ。我を守れ!!」


相手が魔術を使ってきたのなら、こっちだって魔術は使えるはず。

俺は結界を発動させて、メルゼフの攻撃を打ち消す。


「ガァアアアアアア!!」

「……」


様子がおかしい。

先程までの戦闘スタイルを見ていても分かる通り、コイツにはある一種のプライドがある。

そのプライドは、決してルールを破らせることはなかった。

けど、今ではどうだろう。

……プライドどころか、自我すらもってない……まるで獲物を狩る獅子みたいだ。


「ヅァッ!」

「……聖なる雷よ、我が右手に宿れ!」


再びメルゼフが黒い弾を撃ってくる。

俺はそれに合わせて、ライトニングを放つ。

真っ直ぐに伸びていくそれは、黒い弾を巻き込み、その場で爆発した。

ドン!と言う音と共に、爆発の影響で発生した煙が、辺りに充満する。

相手が油断しているこの瞬間に、意識をぶっ飛ばす―――!!


「グァアア!!」

「あぐっ!」


だが、動きは相手の方が速かった。

俺が攻撃してくるだろう位置を予測して、先に攻撃体勢に入っていたのだ。


「……!!」

「くっ!……」


後がない。

こんな状態から攻撃を受けたら、俺はやられる。

自分が負ける可能性を考えていたら、


「舞え、疾風の刃!その刃を以て、彼の者を切り裂け!」

「!!」


何者かの詠唱が、この場に響く。

俺のものでも、メルゼフのものでもない。

風属性を好む奴って言ったら、


「……シュライナー!?」


魔術を放ったのは、シュライナーだった。

そして、風の刃は、メルゼフの体を……斬れなかった。


「なっ!?」

「ヴォラ!!」


続けざまに発動する、黒い弾。

だが、その数は一つだけではなかった。


「ちょっと待て!!あんなに撃ち込まれたら……ひとたまりもないぞ!!」


その数、およそ100。

空中に浮くその黒い弾は、俺とシュライナー目掛けて飛んできた。


「我が風よ、襲い来る外敵から我らを守れ!!」

「天より落とされし雷を味わえ!!」


俺とシュライナーは、ほぼ同時に詠唱をする。

シュライナーの魔術により、俺達の周囲に風が発動。

俺の魔術により、メルゼフの上空より落雷が発生する。

まともにそれを受けたメルゼフは、気を失ったのか……その場に倒れた。


「……シュンイチ!?」


……疲れた。

少し、寝かせてもらおう……。
















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