怪しすぎる男
「うわぁ……」
その光景に、俺達は思わずため息を漏らさずにはいられなかった。
上から見た国の風景は、とても素晴らしいものだった。
国中を流れる水。
それに合わせて作られたかのような建物。
そして、国の中央に建っている、城。
城を中心に、まるで国すべてがあの城の庭なのではないかと思われる程の、綺麗で、壮大かつ、優雅な趣を感じられた。
言葉が出ない光景とは、このことを差すのだろう……。
「すっげぇ……」
「こんな風景を見れた私達は、なんてついてるのでしょう……」
晴信が感嘆し、一之瀬が幸運を感じていた。
……そう言い切ってしまってもいいほど、この風景は綺麗だ。
俺達は、なんて幸運なのだろうか。
こんな風景を見ることが出来るなんて、グレイブスタン公国に来た甲斐があったぜ。
「綺麗だね、北条さん」
「そ、そそ、そう……ですね……(°□°;)」
……なんだこの顔文字は。
何を意味するのか全然理解出来ねえよ。
「……(≧∇≦)」
そしてこの笑顔である。
嬉しいのは分かるが、自重してくれ。
何となく、周りの目もキツイから。
言い忘れていたが、この展望台には、どうやら俺達以外にも人はいるらしい。
まあ、いたとしても今はボチボチとだが。
「こんなに綺麗でいい国なら、ここに住んでもいいかもな……」
「だったら住んじまえよ。そっちの方が、俺達もすっきりするから」
「ちょっと待て!その言い方だと、俺がいらない雰囲気になってないか!?」
「え?必要か?」
「意外そうな顔して聞くな!俺達は中学の時からの友達だろ?」
晴信の発言から始まったこの即興漫才的な何かをし終えた後で、俺はふと横を見た。
するとそこには……。
「だ、誰でしょう?あの人は……」
空が思わずそう俺に尋ねてくる。
大和も、普通通りの顔はしているが、やはり少し気になるようだ。
「こんな所で何してるんだろう?」
葵に至っては、その方向をじっと見て、何やらその人物について分析しようとしている。
見るだけじゃ何も分からないって、普通。
とりあえず、外見を見てみよう。
全身黒のスーツを着用。
望遠鏡が隣にあるのに、何故かそれを使わずに、自前の双眼鏡を使い、城の方を見ていた。
顔は見えないな……黒い帽子も被っているし、見た目は紳士なんだよな。
けど、わざわざ双眼鏡を持ち込んで展望台に来るなんて……一体何がしたいんだこいつは。
「……無茶苦茶怪しいんですけど」
思わず俺はそう呟いてしまっていた。
その時、その男がこっちの方を見てきた。
そして、事もあろうことか、なんと俺達の方に近づいて来るではないか。
「……え?」
やがてその男は、俺の前に立ち止まり、そして一言、こう言った。
「……君は、愛とは何かを知ってるかい?」
「…………………………はい?」
思わず長い間を置かずにはいられなかった。
初対面の人に、『愛とはなんぞや』的な質問された所で、答えようがないだろう。
返答に困っている俺を一瞥して、笑いかけてきて、そのまま立ち去ってしまった。
「な、なんだったんだ……アイツ?」
俺達の間に残されたのは、あの黒い服の男に対する疑問だけだった。
一体何がしたかったんだろうか、アイツは。
と、その時だった。
「皆さん!」
「お……シュライナーだ」
変な男と入れ替わりに、急いでここまで来たのか、肩を上下にさせているシュライナーが入ってきた。
「城内の準備が整いました。今から城の方に案内致します」
どうやら準備が終わったから、ついてきて欲しいとのことだ。
「んじゃ……行くか」
「では、ご案内します」
シュライナーについていき、俺達は城に行くこととなった。
試験の日時が迫っている為、更新スピードが少し遅くなりますが、ご了承ください……。




