展望台
しかし、国の中をこうして歩いてみても実感出来るが、
「この国、やっぱり平和だよな……」
「……そうだな」
俺の心の中の呟きを代弁してきた晴信に、言葉を返す俺。
とてもじゃないが、クリエイターが同じ国の人とは思えないくらいだ。
「日本ともちょっと似た雰囲気も感じますね」
「……ですね。私達に対してもいろいろ優しくしてくれますし」
そう会話を交わす一之瀬と空の手には、歩いている途中で店の人がくれたお菓子等が入っていた。
葵や北条も持っているが、俺と大和、そして晴信の分は別の物になっていた。
「お菓子っていいな……俺達のは……なんだよ、これ」
「さ、さぁ……プロテイン的な何かだろ?」
俺達が持つ袋の中には、何やら得体の知れない液体が入ったビン……すなわち飲み物が入っていた。
名前もなんとも奇抜で、その飲み物らしきものの名前は……『Dangerous』。
「直訳して、『危険な』って意味だね」
「何がしたいんだ、この国の人は……」
てか、こんな飲み物開発したの、何処の会社だよ……。
「あっ!広場ってここじゃないかな?」
「うん?……おお!!」
葵が指差す所を見ると、その先には……。
「綺麗……」
「なんて素敵な風景なの……この場所を、大和君と一緒に……(*^o^*)」
「なんか、本当に同じ地球にある国なのかどうか悩むな……」
空が呟き、北条が妄想の世界へ招かれ、晴信は普通に悩んでいた。
……三人の中でまともな反応とってるの空だけじゃねえか。
「にしても、ここがこの国の中央広場的なものか……」
真ん中に立つ大きな建物は、恐らくシュライナーが言っていた展望台なのだろう。
その建物の周りには、花壇が備え付けてあって、規則的に並べられた色の花が咲いていた。
十字路の役目も果たしているらしく、右左どちらを見ても、道はあった。
その道もまた、所々を水が流れている。
展望台から少し横に視点を動かして見ると、
「デケェ……」
俺達が今宵より数日間は寝泊まりする場所……この国を象徴するものしても考えてもよさそうな、この国の城が建っていた。
「うわぁ……大きいお城……」
葵が、憧れているような瞳をして、先にある城を見る。
……お姫様的なものに憧れるお年頃……でもないよな。
「まずはこの展望台からこの国の様子を見てみようよ」
「そうだな」
大和の提案により、俺達は展望台の中に入ることとなった。
展望台の入り口より中に入る。
当然のことながら、金は取られるだろう……と思っていたが、なんとこの展望台自体の入場料は無料だということらしい。
「太っ腹だぜ、ここの国は……」
思わずそう考えないわけにはいかなかった。
屋上に繋がるエレベーターに乗り込む前に、お土産的なものを買うことにした俺達は、中に入ってすぐの所にあるお土産屋に入ることにした。
「日本の方ですか?大歓迎です!」
「あ、どうも……」
店員からそうまで言われてしまう始末であった。
「本当に、この国の人は日本人に対して友好的な対応をするんですね」
「だな……ていうか、さっきの店員、可愛かったなぁ~」
「……アンタの頭の中はピンク色に染まってるわけ?」
北条にしてはいい所をついたな。
晴信も鼻の下を伸ばすのだけはやめろ……みっともないから。
「あ、これなんか買ってみたいです……」
そう言って空が見せてきたのは、ウサギの顔の形をしたヘアピンだった。
「ふむ……いいんじゃないか?可愛いと思うぞ」
「本当ですか!!それじゃあ私、これを買ってきます!」
そう言うと、空は商品を持ってレジに向かって行った。
「……出たよ。三矢谷瞬一の必殺女殺しが」
「誤解を招くようなことを言うな」
まったく、晴信の野郎は……。
「え?ミヤタニ……シュンイチ?」
「……え?」
その時。
さっきの店員が、俺の名前を呟くのが聞こえた。




