彼の者の再来
「……見つけた」
あれから一時間が経過した。
かなり疲れている状態で、この山を登ってきて……ようやっと目的地にたどり着くことが出来た。
「写真とぴったしだ……ここで間違いない」
佐々木が、写真と、目の前の木についている葉を見ながら、そう呟く。
俺達の目の前には、ソージの葉をつけた木が、目の前に立っていた。
これで、この葉を二人分取りさえすれば、俺達の今回の仕事は完了する。
……いや、念のためにスペアを何枚か取っておいた方がよさそうだな。
「……どうしてだろう」
「?どうかしたんですか?」
その木を目の前にして。
大和が何やらあまり優れないような顔をして、そう呟いていた。
隣にいた空が、その呟きに対して問いかける。
すると、
「木は目の前にあって、後は葉を取るだけだと言うのに……どうしてか嫌な予感がするんだ」
嫌な予感?
目の前に木があって、そこにはソージの葉をついている。
後は、この葉を取って、吉沢先生の所に持っていけばいい。
……何処にも不安を抱える要素なんて見当たらないような気がするんだが。
「早くこの葉を持って帰って、アイツの病気を治すんだ……!」
そう言って、佐々木は木に近づく。
それに続いて、一之瀬・空・葵が近づく。
さて俺もと言う所で。
「……!?」
ゾクッ。
いつしか感じたことのある目線。
それだけで、人を殺せるのではないかと言う物。
……それは即ち殺気。
でも何故だ。
何故こんな所で殺気なんか感じなければならない?
「……!みんな、今すぐバラバラに散れ!」
「「「「え?……うわっ(キャッ)!!」」」」
ふと上を見た俺は、佐々木達四人に近づく何かを見つけた。
だから俺は、四人に叫んだ。
そして、俺の言葉を聞いてか、上からの奇襲に気付いたのか、四人は散り散りに逃げた。
……さっきまで四人がいたその場所には、大きな穴が出来上がっていた。
それはまるで、舞台で言う所の奈落。
不要な物を捨てる場所にも見えなくはなかった。
「何だったんだ、今の……!?」
佐々木が上を見上げると、そこに何かを見つけたみたいだ。
俺も、他のみんなも、揃って上を見た。
そこにいたのは、鳥だった。
いや、鳥の殻を被った魔物だった。
「こんな時に……魔物が!?」
「……妙だ」
葵が呟き、大和がまた何かの疑問を抱いたらしい。
「何が妙なんだ?」
「魔物が出るタイミングが良すぎる……数もそうだけど、その出現タイミングまでもが、おかしい。まるで、誰かに監視されているような……」
「……誰かの描いた脚本通りに、俺達は遊ばれているってことかもしれないな」
「脚本……って何のことだよ?」
「ああ、なんでもない。例え話だから気にするな」
『では、その例えが例えではなかったとしたら、君はどうするのだね?』
「「「「「「……え?」」」」」」
何処かから聞こえてきた、謎の声。
俺達は、その声の主を探す為に辺りを見渡す。
しかし、見つからない。
それよりも、『例えが例えじゃない』って、どういうことだ?
俺の例えは、『誰かの描いた脚本に遊ばれている』というものだ。
……脚本?
脚本を例に出す奴と言ったら……まさか。
「クリエイター……なのか?」
『いかにも。私はクリエイターである』
「!!」
クリエイター……。
先週俺がアイミーを護衛した際に、対峙した相手だ。
けど……あの時アイミーがトドメをさしたはず。
この場所にいるはずがないはずだ……けど、ここにいる。
この矛盾は一体何なんだ?
『ふむ……その顔は、どうしてここにいるのかって顔だな』
「お前……今さら僕の前に現れるなんて、何のつもりだ!?」
『おや君は……あの時の中学生かね。大きくなったものだな』
「……大和?」
『あの時の中学生』?
こいつは、大和のことを知っているのか?
いや、それよりもまず、何でこの場所に現れる?
『あの私は、ただの「駒」に過ぎなかったのだよ』
「駒?……」
何のことを言ってるんだ?
「お前……いい加減に姿を現せ!」
『……いいだろう』
隠れていたクリエイターが、遂に姿を現した。
だが、その姿は……。




