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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode4 光の器、闇の暴走
308/309

Meet again in the snow

今回の話にて、長かったこの小説もついに最終回です。

「……」


俺はその場に立ち、空を見上げる。

……ここで、俺は数ヶ月前に、葵を、殺した。

それは揺るがない真実……俺が今後抱かなければならない、罪。

後悔はしていない……だが、本当は殺したくはなかったんじゃないのか?と問われれば、当然のように、『当り前だ』と答えてやりたい。

殺したくはなかった……出来れば生かしてやりたかった。

けど、それが出来なかった。

俺が……弱かったから。

俺が、こうする以外の方法なんで思いつかなかったから。


「……済まなかった、葵」


謝る。

謝る対象がいないのに……俺は謝る。

謝りたい感情でいっぱいなのに……俺は、その相手を見つけることは、出来ない。

なぜならすでにその相手がこの世におらず……きっと天国に旅立っているからだ。


「もっと他に方法があったはずなのに……俺がこんなにもひ弱だったから、お前を救ってやることが出来なかった……」


確かに、俺がしたことは決して間違いではないのかもしれない。

もしあそこで俺があんなことしなかったとしたら、被害はここだけに収まらず……大げさな話になるが、きっと世界は滅びていただろう。

極端な話を言えば……になるけどな。

けど、こんな役目……俺が担う羽目になるとは思ってもみなかった。

いくら状況がメルゼフの時と同じだったと言えども……いや、同じなわけはなかった。

メルゼフと違い、葵は俺の……大切な、親友だった。

けど俺は、そんな親友の命を……この手で奪った。

そんな俺に……天国になど行けるのだろうか。


「無理だな……どんな事情があろうとも、俺が葵を殺したことには変わりない」


葵としても……少しは絶望しただろう。

最後に俺のことを『好き』と言ってくれたのだけは……本当に救われた気がする。

あの『好き』がどんな意味を持っていたのかは、俺には分からない。

けど……何か意味があって言ったのではないかと思われる。


「……寒いなぁ」


さすがに雪が降っているだけあって、顔にそれが当たるたびに、冷たい感覚が俺を襲う。

……しかし、綺麗な雪だ。

見ていても飽きない、そんな雪だ。


「……そろそろ俺も帰るとするか」


さすがに本降りになられては俺も困る。

寮に戻れなくなるのは、俺も不本意だからな。


「さて……一応言っておくか。また会おうぜ、葵」


俺は入り口に向かって歩き出す。

そして、右手を軽くあげて、別れの言葉を言った後、闘技場から出て行ったのだった。












―――瞬一。












「!?」


今、誰かの声が聞こえたような気がする……。

けど、この闘技場には、俺以外人はいないはずだ。

なぜなら、さっき人は全員帰って行ったはずだからな。

それじゃあ、この声は一体誰のものなんだ?

……分からない、全然分からない。

予想も出来ない。

まさかとは思うけど……幽霊か?


「ま、まさか雪女……とか?」


雪降ってるし、その可能性も否定は出来ない……わけないだろ。

科学と魔術で成り立っているこのご時世だ。

幽霊なんてものがいるとも到底思えない。

……いや、メルゼフなんかは生きる屍なんて言われた程だから、その存在は否定できないものなのかもしれないけど。

……けど、絶対幽霊なんかじゃない。

この感じは……幽霊なんかじゃない。

何だろう……この温かい感情は。

胸を占める、この感情は。












―――瞬一、こっちだよ。後ろを振り向いてごらん?












「……何より、この声だ」


聞き覚えのある声だった。

いや、聞き覚えのある声なんてものじゃない。

何度も聞いて……聞き飽きた声だ。

聞き飽きていて……もっとも俺が聞きたかった声だ。

けど、その人物はもういないはず。

けど、幽霊なんかじゃないだろう。

だって……俺の背後には、確実に誰かの気配を感じるのだから。












―――ほら、どうしたの?早くその顔を見せてよ。私がこうしてここに来た意味がないじゃない。












「……どうして、ここにいる?」


―――どうしてって、ひどいなぁ。瞬一に会いたかったから……もう一度、みんなに会いたかったから……あっちの世界で頑張って、こうして瞬一達に出会えるようになったのに……。


「頑張った……?それってどういうことなんだ?」


―――言葉通りの意味だよ。もっとも、こんなことは特例中の特例らしくて、本来なら認められないんだって。死んだと思われてた人がいきなり目の前に現れるなんて、歴史がひっくり返っちゃう以前の問題でしょ?


「それって……一体……」


―――私ね、本当は死んでなんかなかったの。あの後、死にそうな私を救ってくれた人がいたんだ……その人に助けられて、私はこうして瞬一の前に現れることが出来たの。そうそう、その人が、瞬一によろしく言っといて、って言ってたよ。


「まさか……モテラスか?」


―――知ってたんだね。やっぱりあの日、瞬一はモテラスさんに拾われたんだ。


「ああ……お前もその口だったのか?」


―――うん、そうだよ。何でも、命を助ける代わりに、僕達の願いを叶えて欲しいって言われてね。けど、今回はサマラではなかったよ。私が連れて行かれた所は……天上界エンジェルフィールだった。


天上界エンジェルフィール……?それって一体、どんな場所だったんだ?」


―――本来は光の器(てんし)しか生きていられないような場所。そこでモテラスさんも光魔術の使用方法を学んで……私もまた、そこで光魔術を学んだんだよ。そうして私は、ここに帰ってこれたの。


「……じゃあ、俺から一言、言っていいか?」


―――いいよ。私も瞬一に、真っ先に言いたいことがあったから。


「それじゃあ俺から言わせてもらおう……」


―――うん。分かった。















おかえり、葵。

ただいま、瞬一。















Magicians Circle


THE END
















次回、完結記念座談会&ちょっとしたお知らせです。

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