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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode4 光の器、闇の暴走
305/309

Last episode 47

「「……」」

「……あ」


時間の流れが、停止する。

……瞬一と葵の二人の決着は、ここについたのだ。

だというのに……誰も言葉を発しない。


「……終わりだ」


最初に言葉を発したのは、はたして誰だったのだろうか。

ポツリと呟くその言葉には、勝敗があっさりついたことによる驚きよりも。

その展開の意外さに驚くような感じでもあった。


「……葵、これが俺に出来る最善の選択だったんだ……済まない」

「……」


無言。

話せない状態……というわけではない。

瞬一の身体には、返り血がついていた。

他の誰のものでもない……葵の血だ。

葵はいつの間にか、元の姿に戻っていた。

理由はただ一つ……魔力が、余分な魔力がなくなったのだ。

今は生命維持の為に、全魔力を注ぎ込んでいる。

魔力……いや、生命力と呼んだ方がいいだろう。

それらが不足していき……やがて葵は、命を落とすことになるだろう。


「……しゅん、いち」

「!葵!それ以上無理に言葉を話すな!!」


葵は何かを瞬一に伝えようとする。

……だが、瞬一はそれを止めようとする。

無理に言葉をしゃべらせようとすれば……それは葵がこの世に生きていられる時間が少なくなってしまうことを意味するからだ。


「……ありが、とう。しゅん、いち。おかげで、わたし、は、じぶんを、みうしなう、まえ、に、しぬこと、が、できる、よ……」

「ああ、そうだ。お前の中で暴走していた力は収まった……今救急車呼んでやるから、それまでちょっと待ってろ!!」

「むり、だよ……わたし、の、なかに、ねむるちから、は、まだかん、ぜんに、きえた、わけじゃ、ないから……まだ、わたしのなかに、は、たくさん、の、ちから、が、のこって、るから……」

「力が残ってる?そんなわけない!現にお前は……天使化状態から元の姿に戻ってるじゃないか!!」


瞬一は、叫ぶ形で言う。

……葵は、そんな瞬一に向かって答えた。


「それは……すがた、を、かえる、だけの、ちからが、のこって、ない、だけで……わたしが、いのちを、おとす、まえに、そのちから、が、ぜんぶ、ほうしゅつ、される、ことに、なってる……の」

「なん……だと?」

「……光の器(てんし)の力が暴走した時の末路、か。前の時もそうだったな……もっとも、ここの闘技場は結構頑丈だから、周りに被害が及ぶことはないだろうな……だが、一刻も早くこの場から立ち去る必要はあるな」


大地が、晴信達に向かってそう言う。


「け、けどよ……このまま葵だけを残して行くのも……」

「……行くぞ、お前ら。一刻も早くこの場から逃げるんだ」

「え!?」

「い、いいの?瞬一君」


織が驚いたように、瞬一に尋ねる。

……無理もないだろう。

なぜなら、もっともこの場にいると言い張るだろう人物が、逃げようと言うのだ。


「いいんだ……俺は。もう、別れの言葉はいらないんだよ」

「瞬一……」


話しかける言葉もない。

今の瞬一は、完全に何かに囚われてしまっていた。


「……先に行くぞ、俺達は。瞬一、お前も後から必ずついてこいよな!」


大地は、全員を引き連れてから、そう瞬一に声をかける。

瞬一は、言葉こそ発しなかったが、肯定の意を現すかのように、小さく頷いた。


「け、けど瞬一君……」

「この場にとどまるのは野暮だ。誰にだって、見られたくない光景があるはずだからな」

「……はい」


春香がとどまろうとして、しかし大地にそう言われる。

そして全員が立ち去った後で、


「……ごめんな、ごめんな……葵」


瞬一は、倒れている葵を抱きかかえて、一言そう呟いた。

その目には……涙らしきものも見えていた。


「ううん、いいんだ……わたし、しゅんいちに、たすけて、もらって、ほんとうに、かんしゃして、るんだから……」

「けど……もっと他に方法があったはずなんだ……もっと簡単で、しかも葵をこんな目に遭わせないような方法が、あったはずなんだ……それなのに、俺は……俺は……!!」

「しゅん、いち。それいじょう、じぶんを、せめない、で……」

「葵……」


瞬一は、その先の言葉を繋げることが出来ない。

そんな瞬一に向かって、葵は言った。

「しゅんいち……わたしが、いちばん、しゅんいちに、いいたかった、ことを、いま、いうね……」

「何だ……葵?」










「わたしね……しゅんいちのことが、ずっと、ずっとまえから……すき、だったんだよ……」










そして、葵の身体は光り出し。

瞬一は、その場から離れざる負えなかったのだった……。










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