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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode4 光の器、闇の暴走
304/309

Last episode 46

「聖なる雷よ。その力の一部を我が右手に宿せ!」


空中で瞬一は呪文を詠唱する。

そして、右手を突き出し、葵めがけて雷を放った。


「!!」

「チッ!」


だが、その攻撃は葵によってまんまと弾かれる。

目の前に出現した魔法陣が、それらを断ち切ったのだ。


「……だがよ、その攻撃が避けられることくらいはお見通しだっつーの!」

「!?」


避けられたというのに。

攻撃をあっさりと避けられたというのに。

瞬一は……笑っていた。

いや、避けられたことに笑っているのではない。

自分の予想通りの動きをしてくれたことに笑っているのだ。


「魔法陣が消え去る直後ってのは……さすがに葵と言えども多少のブランクが生じる。その時間はおよそ3秒……その間で、この戦いの幕を下ろしてやる!!」


ズォッ!

瞬一は、思い切り腕を後ろに振りかぶる。

その手には、刀がしっかりと握られている。


「……ハァッ!」


―――1秒。


晴信達は、固唾を飲んで瞬一達の様子をうかがっている。


「凄いわね……生身の身体で、堕天使ほそかわあおいとやり合えるなんて……」


茜が、感心するように呟く。

そんな茜に対して、晴信が言った。


「アイツは……仲間の為ならどんなことだって絶対にして見せる奴なんだよ。仲間を苦しみから解放する時なんかは、とってもいい例だ……アンタも少しは見習ったらどうだ?」

「仲間の為に、一生懸命になれる生き方、ね……」


呟く茜の声は、空中に消え去る。

茜はもう一度、瞬一と葵の二人を、交互に眺めた。


―――2秒。


瞬一は、頭の中でこんなことを考えていた。


「(……本当は、殺すのなんて絶対に嫌だ。出来れば葵と一緒に、これからも笑って過ごしたかった……毎日教室でバカ騒ぎして、部活で暴れまくって、帰り道でその日のことについて色々話して、そして帰るときには『また明日』って言葉をかけて……次の日の朝に会った時にはまた『おはよう!』って言えるような……そんな毎日が、そんな平和な日常が、俺は欲しかった……)」


どこで崩れたのかは分からない。

けど、そんな平和な日々が脆くも崩れ去った事実には変わりはない。

……正直な話、瞬一はおびえていた。

自分がこれからやろうとしていることは、決して間違いではない。

なぜなら、それは自分がメルゼフに対してやったことと、同じことをしようとしているに過ぎなかったからだ。

だが……同時に罪の意識に駆り立てられることになる。

よくよく考えてみたならば、メルゼフと葵には決定的に違う点があったのだ。

それは、天使か悪魔の違いなんかではない。

……元々死んでいる存在なのか、まだ生きるべき存在なのか、という点だ。

結局、メルゼフは死んでいたのだ。

瞬一が手を下すもっと前に、メルゼフは死んでしまったのだ。

だからメルゼフに対して瞬一がとった行動は、決して間違いではなかったのだ。

だが、葵はどうだろう。

葵はまだ、一度たりとも『死』というものを経験したことなどあるわけがない。

なぜなら、今まではいつも通りの毎日を送っていたからだ。

そんなごく普通の少女が……これから『自らの死』を受け入れなければならないなどと、いつどこで想像出来よう。


「(出来るわけねぇよな……俺だって想像出来なかったんだからよぉ)」


瞬一はまた、心の中でそう呟いたのだった。


―――3秒。


「これで……この一瞬で、勝敗が決する」

「瞬一君……お願い。葵を……葵を救って……!!」

「頑張ってください……瞬一君!」

「いけぇええええええええええええええええええええええ!瞬一ぃいいいいいいいいいいいいい!!」


それぞれ声援を送る晴信達。

瞬一は、それらの声援も力に変換して、


「葵ぃいいいいいいいいいいいいいいいい!!今救ってやるぞぉおおおおおおおおおおおおおお!!」












そして、勝敗が決せられた。














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