Last episode 43
「ソレデモわたしハ……ウシナウノガコワイ。たいせつなソンザイをウシナウノガ、トテツモナク、コワイ……ダカラワタシハウケイレナイ。ダカラワタシハ……コレカラもヒトリデ……」
「笑わせるな」
「!!」
由良が一つの答えを導きだしたと思ったら、大和はそんな由良を、軽蔑のまなざしで見つめた。
そして、言ったのだ。
「孤独な状態で生きていける人間がいるとでも、本気で思っているのか?確かに、一人で生きている奴もいるかもしれない……かつては由雪迅がそうであったように、どこかに一人で過ごしている奴もいるかもしれない……けど、心の中には誰かがいて、いつもその心を満たしている。お前みたいに、心の中にも誰もいないような奴が、この世界で生きていけると思うな」
「デ、デモ……ワタシハ、うしなうのが、怖くて……」
「失うのが怖くて友達なんか作れるわけがないだろう。いつ失ってもおかしくない。だからこそ、友達というのは大切な存在であるし、そしているべき存在……甘ったれた考えで、失うのが怖くて、友達なんか作れるわけがないじゃないか。ましてや、居場所を求めることなんて言語道断だ。ならば……君は孤独に生きるといい。深い闇のなかで、一人寂しく暮らしているといい」
大和は、由良にそう言い放つ。
そして、動きを止めている由良の心臓めがけて、自らの剣を突き刺しにかかった。
「い、イヤ……」
「覚悟しろ、悪魔にとり憑かれた少女め。その命、ここで派手に散らしてもらおう」
「イヤダ……わたしハマダ、イバショをミツケテナイ……だから、わたしは……」
「死ね」
短く、冷たく言い放つ。
その言葉は、どれほどの破壊力があったのだろうか。
由良の身体を硬直させるには、十分すぎる程の威力はあった。
距離は1m。
もうすぐその刃先が、由良の心臓に突き刺さるという距離だ。
その時、由良の頭の中で何かがはじけた。
「い、イヤダ!わたしは……貴方と友達になりたいデス!失うのが怖いダナンテもう言わないですから……だから……私の居場所になってください!!」
ピタッ。
由良は、大和に向かって叫ぶ。
刃先は後5cmというところで止まった。
……大和は、由良の心からの叫びを、受け止めたのだ。
「……よく言ってくれた。君のその言葉を、待ってたよ」
「……え?」
見れば、由良の周りからは、ほとんど黒いオーラは消え去っていた。
闇の力がほとんど消え去り、恐らくはその少女の元々の雰囲気を醸し出していた。
それは、包み込みたくなるようなか弱さ。
助けたくなるような、脆さ。
年相応の雰囲気を出す少女は、闇に囚われている時よりもずっと綺麗だった。
「……そうしていれば、君はそこまで魅力的になれるじゃないか。君のような子に、闇の世界は似合わないと思うけど?」
「み、魅力的だなんて……そんなこと、ないです」
弱い笑みを浮かべて、由良は大和の言葉に答える。
大和は、そんな由良に笑いかけてから、こんなことを尋ねたのだった。
「もしよかったら……君の名前を、教えてはくれないかい?」
「あ、はい……私は、黒石由良です」
「僕は大和翔……よろしくね、由良」
由良に対してそう言った後で、最後に大和はこう言葉を付け足した。
「……さぁ、帰ろうか。僕達の世界へ」
「……はい」
差し伸べられた右手を、由良は嬉しそうに掴んだ。
そして、思った。
「(私が……この世界で生きる理由が、生まれてしまいました……この世界が……少しだけ、好きになれたような、気がします……)」
そして二人は帰って行く。
人工の光を浴びながら、日常の世界へと、帰って行く。




