Last episode 40
「待てよ!この俺、宮澤晴信がいることを、お前らは忘れてるんじゃねぇだろうな!?」
「え?……晴信か!?」
葵の攻撃を受け入れるしかないと思っていた瞬一は、思わぬ人物の介入に驚きの色を隠せずにいた。
しかし、その声はまぎれもなく晴信のもの。
そして晴信は、
「守れ不可視の壁よ!どんな攻撃も防いで見せろ!」
瞬一達の前に立ち、そして詠唱した。
晴信の目の前に魔法陣が現れ、それはやがて姿を消す。
すると、葵の召喚した精霊の攻撃は、すべて晴信の前に誘導されるようにやってくる。
そして、不可視の結界によって、すべて打ち消されたのだった。
「ったくよ、この俺宮澤晴信がやってくる前に戦闘を始めるんじゃねえよ……お前ら」
「晴信……おせぇよ」
「何とか間に合ったみたいだな……細川の暴走は結局止められなかったみたいだが」
目の前にいる葵の姿を見て、晴信と大地は……愕然とした。
「ちょっと待て……これが、葵だって言うのか?」
「……ああ、そうだ」
「まるで別人だな……」
「そして、黒幕は吉沢先生だった。葵の身体に潜む力を暴走させたのが……吉沢先生だったんだよ」
「「!?」」
さらに驚く二人。
無理もないだろう……今まで自分達に対して優しく接してくれた人が、まさか敵側の人物だったなんて誰が想像できようか。
「吉沢先生……本当なのですか?」
「ええ、本当よ。ただ、ここまで暴走するとは思ってなかったから……少々面食らってるけどね。いずれにせよ、私の目的は達成できたってことね」
「……スクリプターの仲間の一人だったってわけか」
「その通りよ……さすがは『組織』ね。私の素性をいつの間にか調べ上げていたなんて」
「あまり『組織』の情報量をなめるんじゃねえよ……」
いつの間にか大地の口調が、教師陣に対するものではなくなっていた。
それは、茜を敵として認識した証拠でもある。
つまりこの瞬間から……茜は完璧に瞬一達の敵となったのだ。
「それにしても……私、分かりません。どうして先生は、スクリプターの仲間になんかなったんですか?」
春香が茜にそのことを尋ねる。
茜は、先ほども聞かれたその質問に対して、若干面倒臭そうに答えた。
「さっきも言ったでしょう……私は、この世界が……」
「興味ない……そんなの、嘘ですよね?」
「え?」
織が茜の言葉を遮ってまで、そう告げる。
その間、瞬一達は葵と対峙していた。
その中で尚、織は茜に言った。
「本当にこの世界に興味がないのなら……いや、この世界に興味がない人間なんて、誰もいないと思います。誰しもこの世界にて共に生きる人間を持ち、それはこの世界に興味を持っているという証拠……本当に興味のない人間ならば、周りと関わることもやめてしまうと思うんです。ですが先生は、潜入の為とはいえこの学校に来ることを選んだ……もっと言えば、スクリプターと共にいることを選んだ。これってれっきとした、世界に対する興味ですよね?」
「……そうかもしれないわね。けど、私はこの世界を本気で壊しにかかるわ。こんな世界に住みたくないのは事実だもの……スクリプターも死んでしまったし、私は別の世界にでも行って、新たなパートナーを探しに行くわ」
「この世界じゃ、駄目なんですか?」
その質問に対して、茜はこう答えた。
「……そうね。この世界でのパートナーは、もう私の前からいなくなってしまったしね」
残りあとわずかとなってきましたが、最後までどうぞよろしくお願い致します。




