Last episode 39
「くっ……!」
「ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ!!」
大和にしては珍しく、由良の力に押されている様子だった。
理由は簡単で、
「くっ……闇の力が強すぎる」
相手の持つ闇の力が、強かったのだ。
だから、いくら『組織』に所属している大和と言えども、さすがに由良を一人で相手にするのはつらかったのだ。
「さすがに僕一人じゃこの子を相手にするのは難しいな……」
「シネシネシネシネシネシネシネシネ!!」
黒い剣を創り出し、それを力一杯に振りまわす。
一歩でも避けるのが遅れてしまったら、その刃によって切り裂かれてしまう。
だから、迂闊に攻撃することは致命傷に繋がるのだ。
「だけど……ここで僕が倒れるわけにはいかないんだ……僕がここで倒れたら……みんなが……世界が滅ぼされてしまう―――!!」
「……」
大和の言葉に反応するように、由良の動きが止まる。
そんな由良の反応に……大和は少し疑問を感じた。
「……どうして、動きが?」
不思議だった。
理解出来なかった。
由良がそこで動きを止める必要が……はたしてあったのだろうか?
いや、あるわけがない。
動きを止めるということは……相手に反撃のチャンスを与えてしまうということに繋がるからだ。
「どうしたんだい?早く動かないと、僕の方から攻撃を仕掛けるけど……」
相手が動かないのなら、大和としては都合がいい。
反撃する為に、剣を持つ手に力を込め、地面を蹴って由良に近づこうとした。
だが、
「アナタハ……コノセカイガスキ……ナノデスカ?」
「世界が好き……なの、『ですか』?」
敬語が混じったその質問に、大和は少し動揺する。
なぜなら……先ほどまで目の前にいる少女は敬語など使わなかったからだ。
「……そう聞かれるならば、僕はこの世界は好きだ。大切な人が……親友が生きているこの世界が、僕は好きなんだ」
「……ソウデスカ。ワタシハコノセカイガ、キライデス」
「……それは、どうしてだい?」
大和は、質問口調に変わる。
由良は、答えた。
「コノセカイニハ……ワタシノタイセツナヒトガイマセン。アナタタチ『組織』ニ、ユイイツデキタワタシノリカイシャモコロサレテシマイマシタ……ワタシノリョウシンハ、セカイニアキレタワタシガアクマトケイヤクヲスルサイニソノダイショウトシテソノイノチヲハラッテシマッタノデ、モウコノヨニハイマセン。ワタシハコンナニモサビレタセカイデ……ジンコウノヒカリニヨッテテラサレルセカイニ、ワタシハヒトリデクラシテイルコトニナリマス……コンナセカイハイリマセン。ダカラワタシハ……コノセカイヲコワシタイトオモッテイマス。ダカラコウシテ……ワタシノナカニネムルヤミノチカラヲカイホウシタノデス。ワタシハ……コノセカイニアルスベテノモノヲハカイシマス。モチロンアナタトテ……レイガイデハアリマセン」
長い言葉ながらも、言いたいことは伝わってくる。
つまり、由良は孤独なのだ。
世界に興味をなくした由良は、クリエイターとスクリプターの存在のおかげで……無意識にその存在に甘えていたのだ。
そして、甘えるべき対象がいなくなった。
……すなわち、由良はまた、孤独に戻ってしまった。
それが、今回由良が暴走した原因。
孤独は人間を時に窮地に追い詰める。
今回も、その例から洩れなかっただけの話だ。
「……孤独、か。その気持ちなら……僕も分かる」
「!?」
大和がそう呟くと、由良は手に持つ剣を大和に向けて突き刺そうとした。




