Last episode 34
「急ぐぞ、森谷!早くしないと、葵の暴走が始まってしまう!」
「ああ!……晴信の奴、いればいいけどな」
同時刻。
瞬一達とは別行動をしている大和と大地は、晴信を探しに来ていた。
だが、A組の教室にはおらず、慌てて別の場所を探しに来たというわけだ。
「どこだ……どこにいるんだよ、アイツはよ……」
「多分……食堂だ!」
今は朝の時間だが、恐らく晴信は食堂でパンなどを購入している最中なのかもしれない。
そう考えた大和は、大地と共に食堂の方へ向かった。
そんな時に、大和の携帯がピリリッと音を奏でた。
「こんな時に誰から……『組織』からだ」
「何だよ、こんな時に限ってよ……大和、早く出ろよ」
「分かってる」
ピッ。
通話ボタンを押し、大和は会話を始めた。
「もしもし?」
『大和だな?少し困った事態が起きた……今すぐその事態の収拾のため、街へ出てくれ』
「街、ですか……?雷山塚高等学校で起きていることではないのですか?」
電話の主から伝えられたことは、意外なものであった。
この学校にではなく、街に出ろという命令だったからだ。
『雷山塚高等学校だと?……特に報告は来ていないが、何か発生しているのか?』
「そっちにはまだ情報が行きとどいていないのですか?……実は、細川葵に眠る光の器の力の暴走が始まってしまいました。このままだと、この世界は確実に……滅亡してしまいます」
『何だと!?……くそっ、こんな時に限って力の暴走まで引き起こされるとは!』
電話の主は、荒れていた。
無理もないだろう……光の器の力が暴走した時の被害を知っているから、そんな風な反応をとれるのだ。
何も知らなければ、ここまでの反応は得られない。
だが、それ以前に、大和は気になることがあった。
「……もしや、別の何かが起こっているのですか?」
そう。
先ほどからの口ぶりだと、用件は別にあったということだ。
つまり、事件はこの街でもう一つ起きている。
二つの事件が、同時に発生しているということだ。
『ああ……ついにクリエイター・スクリプターと手を組んでいたという少女を見つけた……けど、その少女は悪魔に完全に取り憑かれている様子で、街で暴走していやがる……それに加えて光の器の暴走……このままだと、世界は混沌の中に閉じ込められてしまう!!』
「何ですって!?」
「世界が……混沌の中に閉じ込められてしまう……」
電話の声が漏れている為か、大地の耳にも話し声が聞こえてきた。
そして、事態を収拾する為にはどうするべきかを……冷静に考えられるはずがなかった。
「……なら僕達は、街中にいる少女の方を優先して片付けます」
『光の器の力の暴走の方はどうするんだ!?』
「……そっちの方は、僕の友人達に任せることにします。後、大地も光の器の方に回ってもらいます」
『……分かった。後で応援をそっちによこす。それまでは何とかもってくれよ!!』
「分かりました!」
ピッ。
電話はここで途切れる。
「んで、俺は晴信を連れてあっちへ行けばいいんだな……?」
「ああ。森谷、すまないけど大変な方を任せることにするよ。その代わり、僕はこっちの仕事を何とか一人で解決させるから」
「まぁ……どっちかが行かなきゃならないんだから、お前が行ってくれた方が事態が早く片付きそうだし、ちょうどいいだろう」
大地はそう言うと、大和に別れの言葉も告げずに、食堂の方へ走って行った。
反対に、大和は下駄箱の方まで走って行く。
「クリエイター・スクリプターと協力していた少女、か……間に合ってくれよ―――!!」
大和は、半ば懇願するように、そう呟いていた。




