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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode4 光の器、闇の暴走
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Last episode 30

「なぁ……葵の奴、遅くないか?」

「そうですね……帰って来るって言ってたのに、まだ帰って来ないですね……」


瞬一と春香がそんなことを言ってしまうのも納得がいく。

何故なら、時間にしてもうすぐHRが始まってしまうような時間だったからだ。

HR前には帰るって言われてただけに、さすがに心配になってきた。


「大丈夫かな……葵ちゃん」

「心配いらないと思うけどね……もしもの時もあるかもしれないから……」

「まぁ、風邪ってことなんだから、少し眠った方が逆に治る時もあるからな」


大和の言葉を引き継ぐように、大地が言う。


「う~ん……何か物足りないよなぁ」

「そうね……やっぱり誰かが一人欠けるだけでも、ここまでの影響力があるのね」


真理亜は、そんなことを呟いていた。

だが、瞬一はその意見に賛同していた。

この中の誰が欠けても、自分達は何らかの形の違和感を覚える。

それは瞬一が欠けた時に経験したものだった(もっとも、瞬一の時は明らかに異常な程の反応を示していたが)。

そんな会話をしている時だった。


「失礼するわね」


コンコンと扉をノックして中に入ってきたのは、白衣を着た茜だった。


「あ、吉沢先生……どうしたんですか?」


織が教室にやってきた茜に対してそう言葉をかける。

茜は答えた。


「S組の細川葵さんだけど……一時間目は寝てから過ごすそうよ」

「そうですか……そんなに酷いんですか?」


瞬一はその部分が気になるのか。

茜に葵の病状のことを尋ねる。

すると茜は、一瞬の間を置き、


「いえ、そういうわけじゃないのよ……ただ、念のため一時間目は寝て過ごすようにって、細川さんに言っておいたのよ。あの子、無理して教室に行こうとするから」

「あー……それはありがとうございます」


いつも元気に学校に来るものだから、瞬一達は葵は別段何処も異常がないだろうと思っていた。

だが、葵とて人間なのだ。

風邪もひくし、病気にもかかる。

もっとも、厳密に言ってしまえば光の器(てんし)の力を引き継いだ、少し特別な人間というべきだろうか。


「いいのよ。私は保健の先生だから、病人は治してあげたいって思うのが性なのよ」

「いい性格ですね……本当に吉沢先生は頼りになると思います」


瞬一が、お世辞でもなく、本心からそう言葉を告げる。

それをお世辞だと受け取ったらしい茜は、


「そうかしら?ありがとうね、お世辞でもそんなこと言ってもらえると嬉しいわ」


と、冗談交じりに答えた。


「……」


そんな様子を若干距離をとって窺っているのが、


「どうしたんだい?森谷……そんな顔を浮かべて」

「……ああ、ちょっとな」

「?」


真剣な表情を浮かべている大地に向かって、大和が尋ねる。

しかし大地は、特にその質問の内容に詳しく答えようとはしなかった。

そんな中で、話は続く。


「それじゃあ私は保健室に戻るわね……担任の先生には貴方達から直接伝えといてくれないかしら?」

「分かりました」


瞬一達にそう告げると、茜はそのまま保健室へと戻って行った。


「……なぁ、大和」

「何だい?」


茜が去って行った後、大地が大和に話しかけた。

二人以外には聞こえないほど小さな声で。


「感じなかったか?今の女から……」

「……気づいていたんだね、森谷」

「ああ。俺が気付かないわけがないだろ」

「それもそうだね」


『感じる』。

一体それが何を意味するのだろうか……?


「何の話をしてるんだ?」


気になって瞬一が話しかけてきた。

瞬一の問いには、大和が答える。


「君達も感じなかったかい?……吉沢先生から、若干の闇の力が残っていたことを」

「え?」


大和の言葉に、瞬一は半ば信じられないというような表情を浮かべた。













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