Last episode 25
翌日。
「う……」
身体にまだ疲れが残っている状態で、瞬一は目を覚ました。
今日は金曜日。
普通に学校がある日だ。
「今何時だ……?」
起きたばかりで時間が分からない為、瞬一は時計で時刻を確認する。
デジタル時計には、『AM6:59』と表示されていた。
「ちょっといつもより遅めか……ふわぁ」
この所色々あった為か、瞬一の身体は一層だるさを増していた。
けど、それも起きたばかりだからこその話。
着替えたり学校へ行く準備をしている間に、その疲れも幾分かとれていた。
「さて、朝食朝食っと」
瞬一は、一人でそう呟きながら台所へと行く。
時間に余裕があまりない為、今日は炊飯器の中からご飯を少量茶碗の上に乗せ、塩をかけて握る。
それはおにぎりだった。
「今日はあまりゆっくりしてられないからな……頂きますっと」
パンもそうだが、おにぎりなら食べながら何かをすることが出来る。
本来ならばマナー違反の行為だが、独り暮らしをしている瞬一にとって、この格好を見せる人はいないも同然なので、別段気にすることでもなかった。
「一応ニュースでも見るか」
いくら時間があまりないとはいえども、テレビのニュースはきっちり確認するらしい。
瞬一は、右手でおにぎりを持ちながら、テレビに近づいていって、スイッチを押した。
『では次のニュースです。先日東京都内で謎の殺人事件が発生いたしました』
「殺人事件、ね……」
おにぎりを食べながら、瞬一は呟く。
ニュースキャスターは、次の台本を読みあげる。
それと同時に、その場所らしき映像が流れ出た。
「あれ?ここってうちの近所じゃないか」
場所が映し出された時、瞬一は気づく。
その場所は……まぎれもなく自らの寮の近くにある道だったのだ。
赤黒く変色した何かが、壁や地面に飛び散っているのが見える。
さすがに死体は置いていなかったが、その血の量から、すさまじいものだったことを安易に想像させた。
『この事件において、現場からは二人の死体を発見することが出来ました。ですが奇妙なことに、一人からはまったく血が流れていなかったのです』
「ふむふむ……途中で心臓発作とかで死んでしまったとか?」
自分とはあまり関わりのない話だから、瞬一は半ば冗談めいたことを呟いていた。
だが、次の映像が現れた時。
これは本当に自分の身近で発生していた事件だってことを知ったのだった。
『殺されたと思われるのは、50代の男性と、10代の男子高校生です。50代の男の方は、黒いスーツに黒い帽子。男子高校生の方は、その死体の近くに鎌らしきものが落ちていたとのことです。特徴は、短めの黒い髪で、事件発生当時は制服を着ていたようで、その制服は、東京都内にある雷山塚高等学校のものでした』
「なっ……!?」
思わずおにぎりを落としてしまう。
雷山塚高等学校と言ったら、瞬一が通う学校だったからだ。
『それでは、事件に発展がありましたら、後ほど放送します。それでは次のニュースです……』
プチッ。
瞬一は、無言でテレビの電源を消した。
「……多分、由雪だな」
鎌。
黒い髪。
雷山塚高等学校の生徒。
以上の三点からとある人物を一人、瞬一は特定したのである。
その人物の名前は、由雪迅。
「アイツ……何かをやり遂げて死んじまったのか」
ポツリと、瞬一は呟いていた。
そして、落としたおにぎりを拾い、もうそれは食べられないと思って、洗面所に流す。
「……」
その後、無言でカバンを持ち上げて、そのまま学校へと向かった。




