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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode3 由雪迅
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Last episode 24

少女は、夜の街の中を歩いていた。

本来なら月明かりのみが頼りであるはずの街も、人工の街燈が、道を照らしている。

おかげで歩きやすいとは思っていたが、


「……やっぱり、明るすぎる」


首から黒いペンダントをぶら下げた少女―――黒石由良は、街燈を見ながらそう言ったのだった。


「それにしても……今日は何だか胸騒ぎがします」


何故だかわからないが、由良は正体不明の焦燥感に駆られていた。

このまま前に進まないと、永遠の別れがやって来そうな……。


「……まさか、そんなことはないですよね?」


由良は前に、クリエイターを失っている。

クリエイターの死は、ただでさえ興味を失ったこの世界に対して、恨みまでもが加わった形となったもの。

これでスクリプターまで失ってしまうと……由良を支えるべき人物は、いなくなる。


「……そんなの、嫌です。また一人ぼっちになるなんて、そんなの、嫌……」


自ずと悲しい気持ちになる。

だが、そんなのは気のせいだと、自分に纏わりつく変な感情を払いのける。

そして、夜の街を歩く。


「……?」


しばらく歩いていると、由良は謎の赤い広がりがあるのを見つけた。

いや、厳密に言えばそれは赤なんかじゃない。


「赤黒い……血?」


それは、乾いた血の色だった。

元々は目に写すのも躊躇う程の、鮮やかなる赤に違いなかったものだ。

だがそれは、地面に流れ出る際に赤黒く変色したのだろう。


「けど、どうしてこんなところに血が……?」


由良は不思議で仕方がなかった。

血が流れている以上、そこには倒れている人がいるはずだ。

流れ出ている血の具合から見ても、そのことが十分に把握することが出来た。


「……?」


そして由良は、倒れている人を一人発見した。

その人物は、恐らく自分と同じくらいの年齢の少年だった。

黒い髪をした少年は、安らかに眠っている。

それこそ、まるですべてをやりきったかのような、最高の笑顔だった。


「けど、この人からは血は流れていない……?」


命こそないが、その少年からは血と言う血はほとんど流れていないに等しかった。

つまり、もう一人この場にいるということだ。


「……え?」


街燈によるスポットライトが、倒れているもう一人の人物を照らす。

その人物は、黒いスーツに黒い帽子。

だが、その帽子は持ち主からかなり離れたところに落ちていた。

黒いスーツは、無残にも切り裂かれていて、身体からは……血。


「あ……ああ……」


それは、完全なる死体。

隣で倒れている少年が人形みたいだと言うのなら、この男のそれは、もはや目を背けてしまう程の、完璧なる死体。

顔は後悔の念が窺えるような、残念そうな表情。

その男は、その男は……。


「な、何で……」


由良は、驚愕のあまりに膝から床に崩れ落ちる。

目からは……一筋の光が垂れていた。

その男とは、由良は面識があった。

面識があったという程度の問題ではない……今の由良のパートナーでもあった男だ。

なのに、その男は今、こうして目の前で血を流して倒れている。

スクリプターは、無残にも何者かに殺害されたのだ。


「いや……いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


由良は叫んだ。

ありったけの力で、叫んだ。

誰かがやってくる可能性なんて、考えない。

由良は、とうとうそのまま声が枯れるまで、叫び続けたのだった。













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