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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode3 由雪迅
281/309

Last episode 23

「……!!」

「倒れてる人間が何も出来ないとでも思ったか?……倒れていてもな、魔術の詠唱くらいはすることが出来るんだよ!!」


由雪が倒れている場所には……黒い魔法陣が浮かび上がっていた。

それに気づいたスクリプターは、急いで銃の引き金を引く。

だが、そのタイミングが少し遅れてしまった。


「遅せぇんだよ!!」

「むっ!?」


由雪はその場から跳ねるように起き上がり、スクリプターの、銃を持っている方の手を右足で蹴る。

蹴られたスクリプターは、思わず銃を手放してしまった。


「……消えろ」


一言、そう言葉を漏らす。

すると、由雪の身体より何発もの黒い弾が放出されるのが分かった。


「ちっ……煉獄の炎よ。すべてを焼き尽くせ!」


スクリプターは、その弾を消す為に魔術を詠唱する。

足元に広がる魔法陣の色は……赤。

炎属性の魔術だ。


「ダークネスフレア!!」


瞬間。

スクリプターの周りに、炎の壁みたいなものが現れた。


「炎の壁ってわけか……」


由雪は冷静に判断する。

その目には……もう先ほどまでの迷いなど完全に消え去っていた。

黒い弾は、スクリプターめがけてすべて飛んでいく。

だが、目の前に現れた熱い壁によってその攻撃は遮られる。


「確かに、攻撃すべてを燃やしつくすのは想像もつかなかったけどよ……そんなんじゃ前が見えなくなることくらい把握してんだろ!!」

「!?」


破られた。

最強にして熱い壁は、あっという間に破られた。

それは、単純なことだった。

どんな攻撃をも燃やしつくすだろう熱い壁は……スクリプターの視界をも燃やしつくしていたのだ。


「……どこからだ。どこから攻撃が来る」


把握できなかった。

炎の壁が出現している限り、自分に許されるのは燃え盛る炎を見ることのみ。

前を見ても後ろを見ても、横を見ても炎だけ。

……嫌な予感がした。


「まさか……上か!?」


気付いた時がもう少し遅ければ、スクリプターは回避行動に移すことが出来なかっただろう。

上空に、無数の魔法陣が展開していて、そこから放出される……無数の黒い弾。

それらはまるで矢のごとく、スクリプターの身体を射抜こうと襲いかかる―――!!


「こんな攻撃……私が避けられないはずがないだろう!!」


叫び、スクリプターは炎の壁から抜ける。

跡形もなく、炎の壁は消え去り、スクリプターが元居た場所には、無数の黒い矢が降り注いでいた。

スクリプターは炎の壁から右側に脱出した―――それが、命取りだった。


「なぬっ!?」

「……地獄にアンタの身柄を引き渡してやるよ。懺悔の言葉は、そこでゆっくり閻魔大王にでも話してるんだな!!」


そこには、鎌を構えた由雪がいた。

大きく振りかぶり、そして……。










ザシュッ。










切り裂く音。

確実に、何かが切り裂かれる音が響く。

そして……目の前に広がる、血だまり。


「あ……が……」


男の身体が、自然と倒れていく。

足に力を失った男は、ゆっくり地面に伏せていく。


「……終わった、のか」


少年は、目の前で倒れている男の姿を眺めながら、一言そう呟いた。


「長かった……この日が来るまで、どれほどの歳月を過ごしてきたことか」


男が立ち上がることは、もう、ない。

少年が握っている、血塗られた鎌が、それを物語っていた。


「これで……俺の話も、もう終わりか……」


膝がガクッと揺れる。

少年の身体は……力なくその場に倒れた。


「ああ……地獄に行ったら、俺も閻魔様に出会うことになるのか……済まなかったな、寺内。お前と同じところに行けなくて」


少年は、この勝負に勝った。

だが……悪魔との契約条件によって、少年はこのまま死を迎えることになる。


「……もう思い残すことも、ない……大人しく、ここは舞台から立ち去ることにしよう」


用の済んだ出演者は、舞台の上に立つ必要がない。

故に、降ろされる。

少年もまた、その内の一人だったのだ。


「せめて特等席で……この舞台の結末を……じっくり、と……見ることに、する、か……」


言葉が途切れ途切れになっていく。

少年の瞼が、ゆっくり塞がれていく。

やがて少年は……そのまま動かなくなった。

その表情は……酷く疲れきったような表情であった。
















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