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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode3 由雪迅
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Last episode 20

「……どうしたのかね?恐怖で前に進むことすら忘れてしまったとでもいうのか?」

「……」


スクリプターは、挑発するようにそう告げる。

しかし、由雪は冷静だった。

相手の挑発に乗るほど、由雪は冷静さを欠いてはいなかったのだ。


「言ってろ。引導なんかお前に渡すことなんか出来るかよ。むしろ俺の方から引導を渡してやるよ。嬉しいだろ?俺に殺されるんだぞ?本当なら今こうして俺の前に立っていることの方が珍しいんだぜ?」


逆に、由雪の方がスクリプターに対してそう挑発をする。

……互いに牽制しあう。

力の差は歴然だが、気迫はどちらも負けてはいない。

静寂の時間が訪れる。

時間にして、およそ数秒。

その静寂は、意外なことで打ち破られた。


「……!?」


まったくの不意打ち。

その正体は……先ほど由雪が投げた鎌だった。

投げた後はそのまま放っておいてあったのだが、由雪はこの時間の内に、その鎌をスクリプターの頭上に転移させていたのだ。


「……ハッ!」


スクリプターは、バックステップをして落ちてくる鎌を避ける。

それで終わるかと思いきや、


「これで終わったと思うなよ?」

「む?……!」


由雪は、全力でスクリプターの所まで走ってくる。

そして、未だ空中にある鎌を取る為に……飛んだ。

その鎌は、由雪の手に見事に収まり、掴んだ由雪の身体は、重力に逆らうことなくそのまま地面へ落ちていく。

そのまま由雪は、刃をスクリプターの身体を裂くために本人がいる方に向け、地面へ落下する。


「なんと……なかなかよい動きを見せるではないか」


しかし、スクリプターは冷静だった。

その攻撃を見ても尚、表情に曇りはなかった。


「大人しく地獄に落ちろ……スクリプター!」


叫びながら、由雪は鎌を振り下ろす。

このままいけば、確実にスクリプターの身体は真っ二つに裂かれることになるだろう。

だというのに、スクリプターは動かない。

いや、正確には手を動かしてはいるが……およそ回避行動と呼べるような動きは見せていなかった。


「死ね!スクリプター!!!!」


そして、由雪が振り下ろした鎌は、スクリプターの身体を真っ二つに……。


「……何!?」

「言っただろう?君では私には勝てない、と」


ドン!

由雪の背中から、痛みが生じる。

魔術による攻撃……しかもその傷は、一見すると銃で撃たれたかねようなもの……いや、彼は確実に銃で撃たれたのだ。


「な……んで、後ろに?」

「先程まで君が攻撃しようとしていたのは、私の虚像うつしみだよ。例えるなら……偽物かがみにうつった私とでも言うべきかな?」

「……クソ、野郎が」


由雪は、力なく倒れる。

死んではいない……だが、身体が動かない。

まるで身体に杭でも打ち付けられたかのように、地面と彼の身体を縛りつけていた。


「致命傷には至らぬだろうが……その傷では立ち上がることはおろか、その場から動くことも出来ぬだろうな」

「く……そ……」


ここまで辿り着いたというのに。

敵を見つけることが出来たというのに。

由雪は、ここで諦めなければならないという事実に対して憤慨の念を……後悔の念を抱く。

直情的に動いてしまったのが間違いだったのだろうか。

もっと作戦を練ってから来るべきではなかったのだろうか、と。


「さて……そろそろ終わりにするとしよう。私とて暇ではない。舞台の様子が気になるところなのでな」


そう呟いて、スクリプターは倒れている由雪に向かってゆっくりと歩き出す。


「(もう……駄目なのか?)」


これ以上は、何をしようとも無駄。

どんなに逃げようとも、どんなに次の手を模索しようとも……自分に待ち受けているのは、死。

元より目的が達せられたら死ぬ身ではあった……だが、目的を達成することなく命を落とすのは、彼にとってはあまりにも名誉を傷つけられることでもあった。


「さらばだ、由雪迅……願わくは、よき夢を」


頭に、銃口を突き付けられる。

由雪は、己の死を、覚悟したのだった。

そんな時に、由雪は見た。















―――諦めたら、そこで本当に終わっちゃいますよ?
















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