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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode3 由雪迅
277/309

Last episode 19

「誰が俺じゃ勝てねぇだと……この野郎!!」


ブウン!

空を切る音がする。

由雪が、鎌を上に振り上げて、思い切りスクリプターの頭上から振り下ろした音だ。

だがスクリプターは、その攻撃をいとも簡単に避けた後で、


「言っているだろ?君では私には勝てない、と」

「そんなの……そんなのやってみなけりゃわかんねぇだろうがよ!!」


由雪は、身長と同じくらいはあるだろうと思われる鎌を、スクリプターめがけて思い切り投げつける。

体を捻ってそれを避け、魔術的な何かの動作もせずに、スクリプターは迫ってくる由雪めがけて右手拳を固く握りしめ、思い切り殴りかかる。

腕を後ろに振りかぶり、ありったけの力で殴りにかかる。

それは、由雪が相手の懐に入って殴りかかると予想しての攻撃だった。

だが、由雪は殴る攻撃をしに来たわけではない。


「……む?」

「闇に覆われし弾丸よ。零距離から放出し、相手の身体を確実に射抜け!!」


ドン!

由雪は、相手の顔面に殴りかかることはなく、両手を思い切りスクリプターの腹部に突き出し、そこから黒い弾を二発放出した。

まともに喰らったスクリプターの表情は……しかし苦しんでいる様子はどこにも見当たらなかった。


「……ちっ。この程度の魔術じゃダメージも与えられないということか」

「私の身体は少々特別製なのでな……ちっとやそっとの魔術を使ったとしても、傷一つつけられることはない。最も、今の衝撃で、服は破れてしまったけど……勿体無い。結構高かったのだぞ、このスーツ

「知るかよ。そんなに高価なものだってんなら、奈落の底へ一緒に持ってってな!!」


ダン!

再び由雪が地面を蹴る音が響く。

スクリプターは、次にやってくるだろう由雪の攻撃に備え、構えを取る。


「鮮血と共に散れ……ブラッディスプレッド!!」


由雪の右手が黒く光る。

この攻撃は……以前由雪本人が瞬一相手に喰らわせた攻撃と同じものだった。

だがこの攻撃は……相手の身体に直接触れない限り、発動することはない。

逆を言えば、何かに触れてしまったら、即座に発動してしまうということだ。


「ならば、身代わりでも出せばよいのだな?」

「なっ……」


すぐにその仕組みに気づかれた由雪は、全身に力を込めて、さらに素早くスクリプターに接近する。

その速度を最初から出していたならば……スクリプターに攻撃は当たっていたかもしれない。

だが、そうではなかった。


「その時間のブランクがあれば……身代わりなど出すのは十分だ」


無詠唱で、スクリプターは何かの魔術を発動させた。

足元に出現した魔法陣は、その前方にも同じような魔法陣を創り出す。

直線距離にして、スクリプターと由雪の距離は、2m。

だが、その距離は、近いようで、遠すぎた。


「くそったれぇええええええええええええええええ!!」


由雪は、その魔法陣から何かが出現する前に、スクリプターの身体を確実にとらえようとする。

……由雪の右手は、


「……ふっ」

「!?」


魔法陣からは、何やら黒い影らしきものが出現していた。

そしてその影を……由雪の右手が貫通していた。

由雪の攻撃は、その影に当たったことで、事を終えてしまったのだ。

結果、魔力の無駄な消費。

おまけにこの魔術……魔力の消費が少ないわけではない。

つまり、相当厳しいハンデを背負うことになったのと同等なのだ。


「危なかったではないか……もう少し君の動きが早ければ、私がその魔術を喰らってしまうところだった」


口ではそう言うが、スクリプターは内心全然落ち着いていた。

確かに、後数cmと言う所で、その影は姿を現した。

つまり、もう少し発動が遅れていれば……由雪の攻撃は確実にスクリプターに届いていただろう。

だが、スクリプターは分かっていた。

その攻撃が、自分の所に届くことはないということを。


「……ちっ。ウザいやつだ」

「なんと言ってもらっても構わない……だが、君はもうすぐ、この場で『死ぬ』運命にあるのは間違いないな……せめて私の手で引導を渡してやろう」


スクリプターは、ようやく前へ歩き出す。

しかし、その歩幅はあまりにも短く、速度は遅い。

思えばスクリプターは、その場から一歩たりとも動いていなかったようにも思える。


「……」


由雪は、スクリプターがどのような攻撃をしてくるのかを、構えて待つことにした。













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