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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode3 由雪迅
276/309

Last episode 18

「じゃあお前はあの日……寺内に何かの魔術をかけていたというのかよ」

「……如何にも。私はその日、確かに闇魔術を利用して、寺内麻美の内に眠る光の器(てんし)の力を暴走させたのだ」

「!!」


スクリプターがそう告げた瞬間。

由雪の表情に、曇りが見えた。

怒りが見えた。

今にも襲いかかりそうな由雪だったが……未だにスクリプターにリモコンを握りしめられている状態だと、動くことも出来なかった。

本来ならその縛りに逆らってでも動けるはずなのに……何故だか由雪の体は面白いように動かなかったのだ。


「……一度暴走した光の器(てんし)は、二度とその力を抑えることは出来ぬ……つまり、己に眠る破壊衝動に身をゆだねるという結果に繋がる……最初、私はその力をどうにか抽出出来ぬかと考えた。ちょうどあの日、クリエイターがそうやってみせたように」

「……?」


あの日のことは、由雪には分からない。

だが、スクリプターが言う『あの日』とは……奇しくもクリエイターの末路となった日でもあったのだ。


「……光の器(てんし)についてはもうよいかな?それでは二つ目といこう」


スクリプターは、ようやっと二つ目の話題に入る。

……由雪は、今にでもスクリプターを殺しに行きたいのか、足が震えているのが見てわかった。

そんな様子を見て、スクリプターは笑わないわけにはいかなかった。


「……何だよ。そんなに俺の姿が滑稽だっていうのかよ?」


それが不満だったのか、由雪は挑発するようにそう答える。

スクリプターは言った。


「ふむ、その通りと言うのはあまりにも酷だな……少しは思った、そう答えておくとしよう」

「……つくづくいらつく奴だな、お前。今にでもその肉体をバラバラに散らせて、その身を朽ちてさっさと地獄へ行きやがれ」

「生憎私はまだこの場で倒れるわけにはいかないのでな……私の目的が果たせていない今、あの娘を置いて逝くことも出来やしない」

「……あの娘?」


およそ由雪が想像もしなかったことだ。

スクリプターのところに、何者かが一緒にいるということなのだろうか?

だが、由雪はそんなことはどうでもいいと思った。

とにかく、自らの標的は―――たった今敵対している演出家ただ一人なのだから。


「それで二つ目だが……私がこの世界を破滅に追い込もうとしている理由だな」

「……そんなことはどうでもいい。ただ、お前がどうして寺内を使ったのか……寺内でなきゃ駄目だった理由を聞きたい」

「まぁ待て。これはその話にも直結するのだよ……」


一旦由雪を宥めてから、スクリプターは言った。


「この世界を……一度造り変える為に世界を破滅に迎え入れようとしている。元来より、生物は闇の中から生まれる……闇の中に光がさした時に、世界に産み落とされるのだ」

「何だよ、赤ちゃんの話でもしてるのかぁ?」

「無論だ……人間の赤ん坊というのは、母親の腹部から生まれる……そして、その中は暗闇だ。それと同じことよ……世界は闇の中から生まれた。地球もまた、闇の中から一筋の光がさしたことによって生まれたのだよ……ならば、この世界も一度破滅に迎え入れればよい。闇に包んでしまえばよい……さすれば、この世界は生まれ変わることが出来るだろう?」


間違っているようで……反論は出来ない理論だった。

いや、反論する気も起きないような、まるで自己満足の理論だった。

スクリプターは、そんな自論にさらに言葉を付け足す。


「その為には……一筋の光が必要だった。そして、私は一筋の光となることが出来るだろう者を発見した……それが、光の器(てんし)の力を持つ、寺内麻美だったってわけだ」

「……」


由雪は、黙っていた。

今もなお、その怒りを胸の内にしまいながら。


「そして三つ目だ……」


そしてスクリプターは、最後の言葉を告げる。

そしてその言葉は……由雪迅の再生ボタンを、押したのだった。


「……君では私には勝てぬよ、由雪迅」

「!!」


瞬間。

由雪は地面を蹴り、スクリプターに斬りかかった。













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