表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode2 過去
273/309

Last episode 15

「そ、それで?その後はどうしたっていうんだよ」


晴信が、気持ち身を乗り出して瞬一に尋ねる。

瞬一は、一度黙った後で、


「その後……肩の傷について聞かれた俺達は、素直にそのことを言った。そして……」

「ボクのお父さんがそのことに心配して…仕事の関係も重なって、その数日後には、日本から出ることになったんだ」

「「「……」」」


晴信達は、黙り込んでしまう。

聞こえてくるのは、喫茶店の外で降っている雨が地面に落ちる音と、店内にいる別の客の喋り声のみ。

瞬一達は、しばらくの間声はおろか、音も発することはなかった。


「……あのさ、瞬一」

「ん?」


葵が、ここで口を開く。


「そんな話……本当はしたくなかったよね。私達に話してくれて、ありがとうね」

「いや、別にしたくない話ってわけでもなかったけどな……むしろ、いずれ話そうかと思ってたくらいだ」


瞬一は、本心を語っている。

そのことは、葵も春香も、晴信も理解出来ていた。

だから、そのことに関しては突っかかることはなかった。


「……何だか寂しい雰囲気になっちゃったね。ほらほら、もっと明るくしないと!」


そんな、まるでお葬式のような空気が漂っていることに嫌気がさしたのか。

織が、明るく取り繕っているのが分かった。


「……そうだよな。俺達にこんな空気は似合わねぇよな!」

「ですね。笑っている方が楽しいですしね」


つられて、晴信・春香の二人がそう反応する。


「……まったく、叶わないねぇ、お前達には」

「え?何の話?」

「なんでもねぇよ。俺のひとりごとだ、気にすんな」

「そう言われると余計に詮索したくなっちまうのが、人の性って奴じゃね?」

「んなことねぇよ」


さっきの話などまるでなかったかのように、瞬一達は会話が弾んでいた。

その表情は、笑顔。

曇り一つない、満面の笑みであった。


「だけど、そろそろ帰った方がいいかもよ?時間もいい所に来たみたいだし」


葵が、腕時計を見ながら瞬一達にそう告げる。

言われて瞬一も時計を確認してみる。

すると……。


『PM05:39』


確かに腕時計にはそう表示されていた。


「結構ちょうどいい時間になってるようだな……今日はそろそろ帰るか?」

「そうですね……あまり遅くなっても、暗くて道が分からなくなってしまうだけですしね」

「なにより……危ないからな」


瞬一が晴信達に尋ねると、真っ先に晴信と春香の二人が賛成した。

織も葵も、首を縦に頷かせて、肯定の意を示した。


「さて、それじゃあ勘定をしなければならないわけだが……」

「瞬一のおごりって言うのでどう?」

「晴信のおごりな」

「疑問形ですらない!?」


晴信の言葉を見事にスルーして、瞬一はそう言った。

さすがに晴信も、驚かずにはいられなかったようだ。


「ちょっと待ってくれ。俺は金欠なんだ。お金がないんだ。一人分……ってか、俺の飲み物代を出すのがギリギリなんだ……だから勘弁してくれー!!」

「……分かってるっての。自分が飲んだ分くらい自分で金払うって」


あまりに凄い剣幕で晴信がそう言ってきたものだから、瞬一もさすがに困惑していた。

財布の中から自分の飲み物分の料金を出すと、レジまで向かう瞬一達。

レシートを差し出し、それぞれお金を払う。


「ありがとうございました」


店員の営業スマイルを眺めながら、瞬一達は喫茶店を出て行った。


「お?いつの間にか雨がやんでるな……」


気づけば、雨はすでにやんでいた。

そして、大きな虹も見えていた。


「おお……綺麗だ」

「本当ですね……」


暫しその虹を眺めた後に、


「さて、家に帰ろうぜ」

「だな」


瞬一達は、それぞれの帰るべき所へ帰って行ったのだった。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ