Last episode 14
「ぐぅっ!」
「しゅ、瞬一君!?」
男が撃った銃弾は、瞬一の肩を貫通していた。
命に別条はないと思われるものの……瞬一は激痛のあまりに顔をしかめた。
「外したか……だが、次は逃さぬぞ?」
「くっ……サンダーボルト!」
瞬一は、右手に雷の塊を作り、それを男に投げつける。
「ほぅ……魔力を練ることが出来るのか。その年にしては大したものだ……だが、こんなものでは私は倒せぬ」
スッ。
ゆっくりと横に移動する。
それだけの動作で、瞬一の攻撃はかわされたのだ。
「!?」
「……私に勝負を挑むのなら後数年は歳をとってからにしたまえ。そうだな……せめて歳が16にでもなったら、かな?」
チャカ。
男は瞬一の眉間に銃を突きつける。
「や、やめて……やめてよ!」
織は、男に向かって必死に叫ぶ。
だが、男は織の方を向かない。
瞬一の眉間に突きつけている銃のみを、見ていた。
「ならば……私と一緒に来るか?」
「そ、それは……」
「来れぬと申すのであれば、この者を殺すしかない。殺されたくなければ、この場でおとなしく『はい』と返事をするのだ……」
「う……」
織は、答えに迷う。
瞬一を助けたい……だけど瞬一と離れるのだけは嫌だ。
葛藤していた……迷っていた。
この場で間違った選択をすれば、瞬一の命は、なくなる。
そんなのは……間違っていると、織は考えた。
「(ボクが……この人についていけば……)」
先の見えない未来だが、そうする他に道はない。
織の選択肢など、そこにはなかったのだ。
あるのは……『男についていく』という一本の道のみ。
地獄へ繋がる……暗闇のトンネルのみだった。
「ぼ、ボクは……」
「む?」
「ボクは……貴方と、一緒に……」
そして、折れた織がとうとう男についていく旨を言おうとした、まさにその時だった。
「その男の言葉にのらなくてもよい。この場から即刻逃げるのだ」
「「「!?」」」
突如聞こえた男の声。
同時にどこかから放たれる、光の矢。
「ぐっ!?」
「!!」
男の腕に、光の矢が刺さる。
その隙に、瞬一は男の呪縛から逃れる。
慌てて銃を瞬一に向けようとするが、
「こちらだ」
「なっ!?」
ズガガガガガガガガ。
男の体に、光の矢が何本も突き刺さる。
「ど、どこからだ……」
「君達、即刻その場から逃げよ……この男の範囲外から、出ていくがよい」
「「は、はい!」」
姿は見えぬが、瞬一と織は男にそう返事を返して、走り去って行った。
「き、貴様……何者だ!?」
男は、新たなる登場人物に向かって、そう叫ぶ。
「何……ただの通りすがりの老いぼれだよ。ただし、少々曰くつきだがな」
「お、お前は……」
そこには、体格のよい老人が立っていた。
歳にして六十代後半。
無駄のない筋肉、ピンと立っている背骨。
男は、その男の顔を見て、はっとした。
「お前は……石塚、源三郎」
「如何にも。『組織』所属、石塚源三郎だ」
老人の名前は、石塚源三郎。
源三郎は、男に向けて携帯を突きつける……科学魔術師だからだ。
「なるほどな……私が開発した科学魔術の道具を、お主は利用しているということか」
「……何?」
男の言葉に、源三郎は顔をしかめる。
しかしそれでも、男は愉快そうに言った。
「ならば……あの効果も、発動されるよな?」
「……うっ!」
突如、源三郎は苦しみだす。
そんな様子の源三郎を見て、男は言った。
「これはアンジック病の症状そのものだ……貴様は今後、この病に悩まされることになるだろう」
「貴様……何をした?」
「……いずれ私の口から告げることにしよう。それまで待つことだな」
「な……何処へ行く?」
「気が削がれた……今回は帰ることにしよう」
そして男は、闇に消えた。




