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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode2 過去
272/309

Last episode 14

「ぐぅっ!」

「しゅ、瞬一君!?」


男が撃った銃弾は、瞬一の肩を貫通していた。

命に別条はないと思われるものの……瞬一は激痛のあまりに顔をしかめた。


「外したか……だが、次は逃さぬぞ?」

「くっ……サンダーボルト!」


瞬一は、右手に雷の塊を作り、それを男に投げつける。


「ほぅ……魔力を練ることが出来るのか。その年にしては大したものだ……だが、こんなものでは私は倒せぬ」


スッ。

ゆっくりと横に移動する。

それだけの動作で、瞬一の攻撃はかわされたのだ。


「!?」

「……私に勝負を挑むのなら後数年は歳をとってからにしたまえ。そうだな……せめて歳が16にでもなったら、かな?」


チャカ。

男は瞬一の眉間に銃を突きつける。


「や、やめて……やめてよ!」


織は、男に向かって必死に叫ぶ。

だが、男は織の方を向かない。

瞬一の眉間に突きつけている銃のみを、見ていた。


「ならば……私と一緒に来るか?」

「そ、それは……」

「来れぬと申すのであれば、この者を殺すしかない。殺されたくなければ、この場でおとなしく『はい』と返事をするのだ……」

「う……」


織は、答えに迷う。

瞬一を助けたい……だけど瞬一と離れるのだけは嫌だ。

葛藤していた……迷っていた。

この場で間違った選択をすれば、瞬一の命は、なくなる。

そんなのは……間違っていると、織は考えた。


「(ボクが……この人についていけば……)」


先の見えない未来だが、そうする他に道はない。

織の選択肢など、そこにはなかったのだ。

あるのは……『男についていく』という一本の道のみ。

地獄へ繋がる……暗闇のトンネルのみだった。


「ぼ、ボクは……」

「む?」

「ボクは……貴方と、一緒に……」


そして、折れた織がとうとう男についていく旨を言おうとした、まさにその時だった。










「その男の言葉にのらなくてもよい。この場から即刻逃げるのだ」










「「「!?」」」


突如聞こえた男の声。

同時にどこかから放たれる、光の矢。


「ぐっ!?」

「!!」


男の腕に、光の矢が刺さる。

その隙に、瞬一は男の呪縛から逃れる。

慌てて銃を瞬一に向けようとするが、


「こちらだ」

「なっ!?」


ズガガガガガガガガ。

男の体に、光の矢が何本も突き刺さる。


「ど、どこからだ……」

「君達、即刻その場から逃げよ……この男の範囲外から、出ていくがよい」

「「は、はい!」」


姿は見えぬが、瞬一と織は男にそう返事を返して、走り去って行った。


「き、貴様……何者だ!?」


男は、新たなる登場人物に向かって、そう叫ぶ。


「何……ただの通りすがりの老いぼれだよ。ただし、少々曰くつきだがな」

「お、お前は……」


そこには、体格のよい老人が立っていた。

歳にして六十代後半。

無駄のない筋肉、ピンと立っている背骨。

男は、その男の顔を見て、はっとした。


「お前は……石塚、源三郎」

「如何にも。『組織』所属、石塚源三郎だ」


老人の名前は、石塚源三郎。

源三郎は、男に向けて携帯を突きつける……科学魔術師だからだ。


「なるほどな……私が開発した科学魔術の道具を、お主は利用しているということか」

「……何?」


男の言葉に、源三郎は顔をしかめる。

しかしそれでも、男は愉快そうに言った。


「ならば……あの効果も、発動されるよな?」

「……うっ!」


突如、源三郎は苦しみだす。

そんな様子の源三郎を見て、男は言った。


「これはアンジック病の症状そのものだ……貴様は今後、この病に悩まされることになるだろう」

「貴様……何をした?」

「……いずれ私の口から告げることにしよう。それまで待つことだな」

「な……何処へ行く?」

「気が削がれた……今回は帰ることにしよう」


そして男は、闇に消えた。
















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