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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode2 過去
270/309

Last episode 12

数年前。

瞬一も織も、まだ小学生の時の話だった。

二人は幼馴染であり、行動する時はいつも一緒だった。

この日も、二人で街中を探検していた。

だが、天気は生憎の雨。

瞬一が差す傘の中に、織は入っていた。


「ちょっと……くっつき過ぎじゃないか?」

「えへへ……こうして近づかないと、ボクが濡れちゃうからね~♪」

「その割には嬉しそうだよな……お前」


瞬一は、隣にいる織の表情が明らかに笑顔なことに、正直ドギマギしていた。

どう言葉を返したらいいのか、瞬一は分からなかったのだ。


「とりあえず……何だか恥ずかしいんだけど……」

「気にしない気にしない♪」


二人を見る周りの目が、温かい眼差しとなっている。

それだけに、さらに瞬一は恥ずかしさを感じていた。


「しかし今日もいろんな場所を回ったよな?」

「本当だね……高校の校舎に忍び込んだり、裏山を見てみたり……本当に、いろんなことしたよね」

「正直俺達、いけないことしかしてない気がするけど……楽しかったからそれでいいよな?」

「もちろん!今日も楽しかったよ、瞬一君♪」


そう言って織は、瞬一の左腕に抱きついてくる。


「お、おい……そっちの手は傘を持ってるから……」

「大丈夫だよ。瞬一君はちっとやそっとのことじゃ傘を手放したりしないから」

「ある意味信用されてんのな、俺って」


瞬一は、織が笑顔でそう言ってきたので、思わずそんなことを呟いていた。

そんな、幸せなひと時。

前から続き、これからも続くと思われていたそんな幸せな時間。


「今日のことは親には言わない方がいいかもしれないな……きっついお仕置きが待ってそうだし」

「だね……それに、二人だけの秘密にしたいしね♪」


そんな冗談まで言い合える仲だった二人。

だが、そんな幸せな日々は……とある一人の男の存在によってブチ壊されることになる。


「……失礼。君達に話があるのだが?」

「え?俺達に?」


突然前から、謎の男に話しかけられる。

男は、黒いスーツに身を包み、黒い帽子を被っている、年にして40代の男だった。

瞬一にとっても、織にとっても、まったくもって面識がない男であった。


「ボク達に何か用なの?」


織が、男に不思議そうにそう尋ねる。

男は、そんな織の顔を見て、優しそうに笑う。


「ああ……君達の名前を、教えてくれないかね?」

「俺達の名前を?……どうしてそんなことを教えなくちゃならないんだ?」


瞬一は、疑いの眼差しを男に向ける。

男はひるむことなく、


「必要なことなのでね……教えてくれないか?」

「……三矢谷瞬一だ。それでこっちが」

「神山織だよ。おじさんの名前は?」


織がお返しと言わんばかりに、そう尋ねてくる。

すると男は、少し言葉を詰まらせた後で、


「……演出家とでも名乗っておけばよいか?」

「えんしゅつか……って人なの?」

「あのな織……『演出家』ってのは、職業のことだよ。よくテレビのドラマなんかの演出を担当したりしてるんだよ」

「なるほど!さすがは瞬一君、頭がいいね!」

「お前が知らない方が驚きだよ……」


瞬一は右手で頭を抱える素振りを見せる。

その後で、男に向き直り、


「それで、用はそれだけか?なら俺達は家に帰るけど……」

「用はもう一つあるのだよ……神山織、君にね」

「え?ボクに?」


そして男は、こう告げた。


「君を頂きに参上したよ……神山織」













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