Last episode 11
メルゼフの暴走事件から、数日が経過した。
この日の天気は生憎の雨。
よって、外による部活は中止という決定が下された。
「あ~あ、今日は部活中止かよ」
瞬一の横に並ぶ晴信が、思わずそんなことを口にしていた。
「仕方ないだろう、こんなに雨降ってるんだから」
傘を片手に持ち、瞬一がそう答える。
歩く度に、雨が地面を叩く音が聞こえる。
時に水たまりに落ちて、チャポンという音も奏でてくれる。
「それにしても……見事な雨だね」
「珍しいですよね。大雨なんて」
葵と春香も、思わずそんなことを口にしてしまう。
「ねぇねぇ、折角部活も中止になったことだし、どこかの喫茶店で話でもしない?」
そう言ってきたのは、織だった。
「お?いいアイデアじゃねえか」
「俺は賛成だぜ!このまま家に帰るのも何だか納得いかなかった所だしな!」
「私も!」
「私もです」
全員に反論はないようだった。
もちろん、俺含めてだが。
「それじゃあ……あそこに行ってみようよ」
そう言って織が指さした所は、何処か落ち着いた雰囲気を出す喫茶店だった。
雨の日で時間がこんな微妙な時というのも手伝って、中に人があまりいないようにも見える。
何故瞬一達にこのようなことが分かるのかと言えば、その喫茶店がガラス張りとなっているからだ。
「うわぁ……見事に空席だらけだ」
「いつもならここから見える店内は、満員の状態とかなんだろうなぁ」
瞬一達も、そこから店の中を覗いていた。
中にいる人は、右手で数えられる程にしかいない。
「……ちょうどいい。ここにしよう」
「雨も強くなるだけだしね……入っちゃおうよ」
瞬一と葵が、そう提案する。
もちろん彼らに反対意見などなかったので、その喫茶店の中に入ることとなった。
「いらっしゃいませ……何名様でしょうか?」
「えっと……五名で」
「畏まりました。こちらのお席へどうぞ」
ウエイトレスの女性が、瞬一達を席へと誘導する。
そして席に座った瞬一達は、テーブルの上に置かれているメニューへと目を移した。
「とりあえず俺はコーヒーにしておくか……」
「俺は紅茶だな」
「お?晴信でも紅茶は飲めるのか?」
「……お前、俺のことなめてるだろ」
「いや、けなしている」
「どっちも同じじゃねえか!」
瞬一と晴信による軽い漫才が済んだ後、
「私はこれにしようかな……」
「ボクはこれ!」
葵と織は、同じものを頼んでいた。
その品とは……。
「おおう……チョコレートパフェ」
「しかも割とでかいし高い……」
メニューに書かれている値段を見て、瞬一と晴信は愕然とする。
対して織と葵は、平然とした顔でその品にすることを決めた。
春香の注文も決定したところで、瞬一は店員を呼ぶ。
「それでは、ご注文をどうぞ」
瞬一は店員に全員分の品を告げる。
そののちに、店員は、
「畏まりました。しばらくお待ちください」
営業スマイルと共に、店員はそう告げる。
そして注文品を書いた紙を持ち、店の奥へと引っ込んで行った。
「……なぁ織、ちょうどこんな日だったよな」
「え?いきなり何を言い出すの?瞬一君」
瞬一は、窓から外を眺めながら、突然そんなことを呟く。
「俺達が別れた日のことだよ……あの日もこんな大雨だったよな」
「……そうだね。そして、別れるきっかけとなった事件が起きた日も、大雨だった」
「何だ?お前らが別れるきっかけとなった事件だと?」
「その話……詳しく聞かせてくれませんか?」
「ちょうどいいからね。こうしてみんなで集まったわけだし、お話がてら聞こうよ」
瞬一と織を除く全員が、そのことについて知りたい様子だった。
瞬一は、ホゥと溜め息をついた後で、
「分かったよ。今から話す」
そして瞬一は、ゆっくりと、その時のことを話し始めたのだった。




