表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode1 メルゼフ
268/309

Last episode 10

「……来たな」

「こんなところにいきなり呼び出して、どうしたっていうのよ?」


雷山塚高等学校の屋上。

普段ならほとんどその場所には人が立ち入ることはないのだが、この日は違っていた。

黒いスーツに身を包み、黒い帽子をかぶった男と、白衣を着た女性が、そこに立っていた。

この日の天気は、晴れ。

太陽の日差しが、彼らの体に容赦なく突き刺さる。

もっとも、季節は秋なので、体に突き刺さっても暑さを感じることはない。

どころか、秋から冬に移り変わろうとしているこの季節からしてみれば、むしろちょうどよいくらいでもあった。


「突然呼び出したりして悪かったと思っている」

「本当はそんなこと微塵も思ってないくせに」

「……まぁな。君ならすぐこの場に来てくれると思っていたよ」

「それはどうも。偉大なる演出家に見込まれて、私としても幸せよ」


女は、笑顔でそう言葉を返す。

いつも通りの反応だと、男―――スクリプターは考えた。


「それはそうと、今日は君に頼みがあってね」

「頼み?貴方が私に頼みがあるなんて、珍しいじゃないの、スクリプター」

「……まぁ、君にしか頼めないことなのでな。本心から言うとこんな手段は択びたくなかったのだがな」

「貴方が演出家としての自分の座を奪われてしまうから?」


スクリプターの答えを見透かしたかのように、女は言う。

それに対して、スクリプターは笑みを浮かべた後に、


「君がそう思っていなくとも、私としては役を奪われた感じがしてな……大層居心地が悪いのだよ」

「結局は、単なる自己満足なんじゃない」

「それで結構……あいにく私は演出家なのでね。自分の思い通りに行かなければ済まないタイプなのだよ」

「面倒臭い男ね……そんなんじゃ、女にはモテないわよ?」

「もとよりこの世の人間になど興味はない。こんな腐りきった世界の女性など、見ていても腹が立つのみだ」


そう言い切った後に、


「……しかし、あの娘とお前だけは別の話だがな。そうでもなければ、君達を私の元へ近寄らせるはずがない」

「あの娘?あの娘って一体誰のことよ?」


女は、初めて出てきた単語に疑問の表情を浮かべる。

スクリプターは、特に困った様子もなく、さらりと答えた。


「私が偶然見つけた娘だ……名前を黒石由良と言うらしいが、どうやらクリエイターと共に行動していた少女らしくてな」

「……クリエイター、か」


その名前を聞いて、女は少しその表情をゆがめる。


「あまり好きじゃなかったわ。けど、『組織』に殺されたんですって?」

「ああ。目立ちすぎたからな……消されて当然だろう」

「ひどい人ね、本当に」


本気でそう思ってはいないだろうが、女は茶化すような口調でそう言った。

その後で、


「……で、そろそろ本題に入ってくれないかしら?」

「うむ。実はな……君にとある薬を作ってもらいたいのだよ」

「薬?私の得意分野ではあるけど……何でまたいきなり薬なんかを?」

「……細川葵に眠る光の器(てんし)の力を、暴走させる為だ」

「……その力を暴走させて、貴方はこの世界を破滅させようとしているわけね。出来なくもないけど……」


女は、暫し思案した後に、


「いいわ。引き受けてあげるわ」


肯定の意を示す言葉を告げた。

それを聞いてスクリプターは、


「そうか。ならばよかった」

「……細川葵。光の器(てんし)の力を受け継ぎし人間。その力を引き出す薬、か……相当の労力が必要になってくるわね」

「……出来るか?」

「出来るわよ」


クリエイターの言葉に、女はすぐさま答えた。


「……話はそれだけだ。私は行く」

「ええ。朗報を期待してて頂戴……スクリプター」

「……ふっ、期待してるぞ、YOA」


『YOA』と呼ばれた女は、スクリプターを笑顔で送り出す。

……その後に、どう薬を作るかを考え始めたのだった。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ