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Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode1 メルゼフ
263/309

Last episode 05

「おいおい……これはなんて冗談だ?」


大地が、呟くように言った。

目の前にいるのは、およそ人間の形をしていない。

例えるなら……そう、悪魔そのものだ。


「何でメルゼフが悪魔の格好を……?」

「『生きる屍』……確かメルゼフは前にそう言われたと言っていた」


瞬一は、思いだすかのように言った。

確かに、前にメルゼフは、頭の中にいる悪魔より『生きる屍』と称されたことがあった。

それと今回のこの姿の変貌と、何か関係があるのだろうか?










「そう。生きる屍……彼の者は、すでにこの世からいなくなっている存在。それをわざわざ私が闇から引きずりだしてきたまでの話だ」










「「「「!?」」」」


そして、さっきまで聞こえなかった男の声が、この場に響き渡る。

一瞬にして、空気が硬直する。

瞬一達は、その声がどこから発せられたものなのかを探し回るが、その姿を見つけることは、ない。


「何せ私はこの場にいないのでね……この者の体を介して話をしているだけの話だ」

「……あなたは一体、何者なんですか?」


春香が、メルゼフの体を利用して話しているだろう男に尋ねる。

もしこの男が目の前に現れていたのなら、この場において笑みを浮かべていることだろう。

やがて男は、こう答えたのだった。


「私はこの世界を破滅の道へと向かわせる……言わばこの世界における演出家とでも名乗っておくべきか?」

「演出家……だと?」


聞きなれない単語に、思わず瞬一は目をしかめた。

それでも、男の声は愉快そうだった。


「ハッハッハッ!その反応おおいに結構!私としてはその反応こそが、欲しかったものなのだからな」

「……貴方は、クリエイターと関連はあるのですか?」


大和は、冷静に言葉を発する。

そんな大和の態度に、男は少し気分を悪くしたのだった。


「……驚かぬか。そんな輩もこの世界にはおるのだな……よかろう、その質問に答えてやろう。答えは、関わっていて、関わっていない、だ」

「ど、どっちなんですか……?」


複雑な物言いをする男の言葉に、春香は思わず尋ねてしまう。


「そのままの答えだ。私とクリエイターの行く先は同じ。故にその点のみでいえば私とクリエイターは関わりがあった。だが、私とクリエイターでは方法が違う。おまけにクリエイターとなど一度も話したことはない。故に、関わっていないとも言うべきだ」

「なるほど……目的が世界の破滅って意味では同じってことだね」


誰にも聞こえないような小さな声で、織が呟く。

そのはずだったのに。


「ああ、そうだとも。私の目的はさっきも言ったが世界の破滅……何せあの少女とそう誓いを交わしたのでね。必ず成功させなければならぬ」

「!?……あの少女?」


その言葉に、瞬一はハッとした。

もし自分が思っている通りの少女なのだとしたら、そこでまた関連性が生まれるかもしれない。

そんな期待を持って、瞬一は尋ねた。


「その少女は、首から黒いペンダントをつけていたか?」

「……つけていたが。それがどうかしたのかね?」

「やっぱりか……」


そして、その関連性が明らかになった。

同時に、こんな推測も立てた。

恐らくクリエイターと別れて行き場を失っている先に、この男と出会ったのだと。


「……話しはこれまでにしよう。後はこの悪魔と自由に遊んでいてくれ。グレイブスタンの名前を冠する予定であった……メルゼフ・グレイブスタン……アイミーン・グレイブスタンの兄と、な」

「えっ!?」


男の言葉に、アイミーンはすかさず反応する。

だが、男はその後は何も告げることはなく、そのままメルゼフの中から消えてしまった。


「……オ、オオ……」

「……とにかく今は、メルゼフをどうにかするしかなさそうだな。みんな、やるぞ!」

「「「……!!」」」


瞬一の言葉に反応するかのように、葵達は構える。

そして、戦いの火蓋は切って落とされた。
















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