Last episode 04
「アイミー!」
闘技場までやってきた瞬一は、すかさずアイミーンの名前を呼ぶ。
戦闘スペースには、怯えている様子のアイミーンと、黒いオーラを身に纏ったメルゼフ、そしてそんなメルゼフと剣を交えているシュライナーの姿があった。
「君は……シュンイチ?どうしてここに……!」
ガキン!
互いの得物をぶつけ合いながら、シュライナーは瞬一に尋ねる。
その相手となっているメルゼフの目には……光がなかった。
「何あの目は?まるで光が宿ってないじゃない!」
瞬一の後を追ってやってきた葵達の中から、そんな声が聞こえてくる。
恐らくは、真理亜が言ったのだろう。
「アイミー!この状況はどうなってるんだ?」
「え、えっと……私がこの場所に到達した時に、剣で斬られそうになって、そしてシュライナーが私のことを助けてくれて……」
途切れ途切れながら、アイミーンがその時のことを説明する。
それだけでも、瞬一達は事の顛末を理解することが出来た。
「シュライナー!ちょうどいい所で変わってくれ!!」
「あ、ああ!」
瞬一はシュライナーに向かってそう叫ぶ。
そして、ある程度シュライナーはメルゼフと打ち合うと、
「シュンイチ!」
「任せろ!」
刀を創り上げていた瞬一と交代して、安全な位置まで下がっていった。
瞬一は走って来た勢いを利用して、メルゼフの体に刀を突き刺そうとする。
しかし、
「うわっ!」
かわされ、同時に足をひっかけられる。
勢いが強すぎたのか、瞬一はそのまま前に突っ込んでいってしまう。
「しまっ……!」
「ハァ!」
メルゼフは、瞬一に出来た一瞬のすきも見逃さない。
背中から剣を突き刺そうとする。
「簡単に突き刺されてたまるかよ!」
「!?」
風魔術を利用して、瞬一は何とかその場から離脱する。
さらに、その風を利用して宙へ舞う。
「喰らえ!」
そして、空中からメルゼフの頭部をめがけて突き刺しにかかる。
だが、
「!!」
「なっ……!」
素早くメルゼフはその場から離れ、同時に上からやってくる瞬一の心臓めがけて剣を突き刺そうとする。
「くそっ!」
瞬一は、慌てて攻撃を止め、刀を使って、メルゼフの剣の方向を変える。
安全地帯に着地すると、
「てやぁ!」
「ソリャ!」
ガキン!
刀と剣がぶつかり合う。
そして、
「テメェ、何で日本に来てやがるんだよ!」
「……」
瞬一は、メルゼフに尋ねる。
しかし、何も言葉を発しない。
「くそっ……正気じゃねえか。答えてくれる要素が見当たらねぇ」
「……ニ、ゲ、ロ」
「……え?」
その時だった。
剣と刀で小競り合いを続ける中、メルゼフから途切れ途切れに言葉が発せられたのだ。
それは……『逃げろ』と言っていた。
「逃げろ?……どういうことだ?」
「タ、ノ、ム……ニゲテ、クレ……コノママ、ダト、ワタシ、ハ、ヒタス、ラ、モノ、ヲ、コワス、ダケニ……ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「な、何だ!?」
突如メルゼフの体から黒い光が発せられる。
瞬一は、巻き込まれないように距離を取る。
「い、一体何が……?」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
メルゼフの叫び声が聞こえる。
そして、闘技場の中は黒い光に包まれ……それが晴れた頃には、
「な、何だよ……コイツ」
「まるで……悪魔だ……」
変わり果てたメルゼフが、そこに立っていた。




