Last episode 03
「スクリプター……?それは一体どんな人物なんですか?」
聞きなれない単語が現れてきたため、春香は大和にそう尋ねる。
大和は、そんな春香の質問に答えた。
「ある意味ではクリエイターよりも性質が悪い敵だね……過去に闇の力を利用して世界を滅亡まで追い込んだことがある人物だ」
「世界を……滅亡に?」
「ああ。だけど、その時はこの学校の校長……石塚源三郎校長先生が何とかその計画を潰したんだけどね」
「うちの校長が?」
大和の言葉を聞いて、まさかの真実に瞬一は驚く。
葵達も同様の反応をとっていた。
「その時に消えたはずだったのに……最近になってまた活動を再開してきたんだ」
「それはどこでの話なんだ?」
「僕達の身近では起こっていないけれど……魔術を使った連続倒壊事件が各地で勃発しているらしい。未だに東京は狙われていないみたいだけど……ひょっとしたら、力を試しているだけなのかもしれない」
大和は、スクリプターの動きを予測するように呟く。
「連続倒壊事件……いつの間にかそんな事件が勃発してたなんてな」
まさかの穴に、瞬一は少し衝撃を受けた。
「それで、もう一人の少女の方は一体誰なんだ?」
「え?」
今度は大地が瞬一に尋ねる。
瞬一は少し言葉に詰まったが、すぐに答えた。
「あの日、魔物が出現してその親玉を倒す為に会場の地下に降りたんだ……すると、魔物の親玉と一緒に、首から黒いペンダントをぶら下げた少女がいたんだよ」
「黒いペンダント……?」
「ああ。その少女が言うには、魔物を出現させたのは自分だって話だったんだよなぁ」
「……その少女の名前とかは?」
静かに大和が尋ねる。
だが、その質問を聞いた瞬一は、首を横に振り、
「無理だ。名前は聞いてないから知らない」
そう一言だけ答えた。
「そうか……名前さえ分かれば、ある程度調査が楽になると思ったんだけどな……」
「すまない……そんな余裕はなかったんだ」
申し訳なさそうに瞬一は言う。
大和はそんな瞬一に笑って、『いいよ』と言った後で、
「その少女の特徴は?」
そうさらに質問を重ねた。
「ああ。黒い髪で、背は俺達と同じくらいで……」
瞬一がそうしてその少女の特徴を述べていた。
その時だった。
ピリリリッ、ピリリリッ。
「……ん?俺の携帯か?」
瞬一の携帯から、着信音が鳴る。
誰だろうと思い瞬一は携帯の画面を確認してみると、そこには『アイミー』という文字が書かれていた。
文化祭の後で、瞬一はアイミーンと携帯電話番号を交換していたのだ。
「アイミーか……こんな時に何の連絡だろう?」
「早く出てあげなよ、瞬一君。待たせるのもあまりよくないよ?」
「ん、そうだな」
織にも言われて、瞬一は携帯の通話ボタンを押す。
耳に当て、言葉を発した。
「もしもし?」
すると、電話からは慌てた様子のアイミーンの声が聞こえてきた。
『た、助けてください!シュンイチ!!」
「!?どうしたアイミー?一体何があったって言うんだ!?」
「「「?!」」」
突然瞬一が声を荒げたことに、大和達もさすがに驚かないわけにはいかなかった。
構わず、二人の通話は続く。
『私が泊まっていたホテルに……その……メルゼフさんが、正気を失ったメルゼフさんが突然入ってきて……今私は、そのメルゼフさんに追われているところです!!』
「メルゼフが?……場所はどこだ?」
『今この学校の近くを走っているところです!……あ、学校が見えました!』
「よし、このままこの学校の闘技場まで走ってくれ!」
『わ、分かりました!!』
そこで、アイミーンからの電話は切れた。
すると、瞬一は急いで教室を出ようとする。
「どうしたんだ瞬一?」
そんな瞬一に、大和は尋ねる。
瞬一は、大和達の方を向かずに答えた。
「アイミーが追われてる!だから今、この学校の闘技場まで誘い込むように言っておいた!!」
そう答えると、瞬一は急いで闘技場まで向かって行った。




