Last episode 02
「……ふぅ」
「どうしたんだい瞬一?教室に入るなりいきなり溜め息なんかついたりして」
あの日から数日が経過した。
葵の体調もよくなり、学校に復帰している様子だった。
そんな中、瞬一は思わず溜め息をついていた。
「いやな、久しぶりにほとんど何も起きないからよ……思わずその平和に安心しちまって」
瞬一は、笑いながらそう答える。
その表情は、大層安心したような表情であった。
「けど、いつクリエイターが攻めてくるのかも分からない状況ですし……」
「あ、その心配なら必要ないよ」
「安心しろ。クリエイターはもう現れることはないから」
春香の呟きに答えるように、大和と大地の二人は答えた。
この言葉に、瞬一は思わず疑問を覚えた。
「ん?なんでそんなことが分かるんだよ。確かお前達は、魔術格闘大会があった日はこっちに来ていない筈だぞ?」
「……『組織』として赴いた時に、クリエイターはそこですでに討っておいたからね。もう僕達の前に現れることはないよ」
「「「「え!?」」」」
瞬一・春香・葵・織・真理亜の五人は、思わずそんな反応を取っていた。
無理もないだろう……大和達がクリエイターのことを討ったと言ったのだ。
しかも、『組織』という聞き慣れない単語を出して。
「……ねぇ大和君、森谷君。『組織』って一体何なの?」
「私も気になるわ……大和君、『組織』って何者なの?」
葵と真理亜の二人が、大和と大地に尋ねる。
口には出していないが、他の三人も同じことを聞きたがっていた。
「……そうか。君達には『組織』って何なのかを言ってなかったね」
「別に隠すことでもないんだけどな……この際言っちまった方が気が楽になるかもしれねぇな」
「前に由雪の奴も言っていたな……大和達が『組織』の一員だってことを」
瞬一は、少し前の由雪の話を思い出し、そう言った。
そして大和達は、『組織』について話し始めた。
「まず『組織』というのがどんなものであるかを言っておくべきだよね……僕達が所属している『組織』と言うのは、魔術を使って特殊なケースの事件を解決する、云わば裏警察みたいなものだね」
「裏警察……」
「ただ、別に解決したから金が貰えるとか、そう言うのが目的というわけではない……『組織』に入ってくる人間達は、少々特殊なケースが多くてな」
「特殊なケース?」
大地の言葉に、瞬一が少し疑問を感じる。
大地は、特に躊躇することなく、その質問に答えた。
「それはな、『組織』に入るメンバーには、何らかの過去があるってことだよ。例えば俺のように、両親が殺された、とかな」
「なるほど……」
何かの縁なのかは不明だが、大和達『組織』のメンバーには、それぞれ暗い過去があることが多い。
それだけに、魔術でその者に復讐する力を欲しているのもまた事実なのだった。
「次に僕達が何で組織に入ったのかだけど……君達は森谷の両親がクリエイターに殺されたのは知ってるよね?」
「うん、あの時にクリエイターから聞かされたよ」
「あの時に……僕の両親もクリエイターに殺された。それでクリエイターを追っていたんだよ」
「そうだったんですか……」
大和からその理由を聞いて、瞬一達は思わず黙りこんでしまう。
そして、その後で、
「……とりあえず、これでクリエイターがいなくなったと言うことは、もう世界が破滅の危機に追いやられることもなくなったということじゃなのかな?」
「……いや、まだだ」
「え?」
驚く声が聞こえる。
構わず、瞬一は言った。
「まだキーマンはいる……あの日クリエイターと一緒にいた少女……」
「それと、スクリプターと名乗る新たな敵だ」
「!?」
瞬一の言葉と重なるように、大和がそう告げた。




