表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magicians Circle  作者: ransu521
Last episode1 メルゼフ
259/309

Last episode 01

少女は、静かに空を見上げた。


「……ハァ」


自然と溜め息が漏れる。

歩く道は既に暗く、月の光のみが、少女の行く先を照らしている。

街灯がない土手の道を、少女は静かに歩いていた。


「こんなにも美しい星空が、こんな世界にまだ残っていたなんて……知りませんでした」


一人、少女は呟く。

その隣に、誰かがいることはない。

否……つい最近までは、隣にある男がいたのだ。

しかし、ある日その男までも消えた。

少女は、完璧に一人きりになっていた。


「私の世界は……こんなにも冷たいのに」


世界はどうして、ここまで光に包み込まれているのだろうか?

以前は月や星、太陽の光に。

今はそれにくわえて、人間達が作り出した人工の光で。

この世界には、光が多すぎた。

少女達闇の住人が住むべき漆黒の闇は、恐らくほとんど存在しないだろう。

以前までの月や太陽、星などの光しか頼っていなかったような時は、それこそ闇なんていくらでも存在し得た。

だが、科学が発展した今……それがほとんど失われた。


「私は……私達人間が作り出した光が、とても嫌いです」


ギュッと、黒いペンダントを握り締めながら、少女は呟く。

頬には、一筋の涙が伝っていた。


「ふむ……その様子、恐らく自らの相棒を失ってしまったとみえる」

「!?」


声がした。

少女の背後から、声が聞こえた。


「……誰、ですか?」


後ろを振り向かず、静かに少女は尋ねる。

その声の主は、答えた。


「私はこの世界を作り変える者……かつてこの世界の脚本家がそれを野望としていたように、私の望みもまた、この世界を作り変えることにある」

「世界を……作り変える?」


その言葉を聞いて、少女は『脚本家』の存在を思い浮かべずにはいられなかった。

そして同時に、もうその男はいないのだということにも気づかされた。


「大丈夫だ。そなたのその想いがある限り、この世界を『破滅』に追いやるだけの力を手にすることが可能だ……そなたは、その想いを大事にするのだ」

「……貴方は、誰なんですか?」


姿を見せぬ人物に対して、少女は恐る恐る尋ねる。

すると、一瞬笑い声が聞こえてきたかと思うと、


「では、そなたの前に私の姿を現してしんぜよう」

「!?」


少女の目の前が、突如歪む。

漆黒の闇から現れたのは、全身を黒のスーツで統一した、黒い帽子を被った男だった。

歳にして50代後半。

しかし、その姿は老いていることを忘れさせるかのように、若いようにも見えた。


「こんばんは、悲劇のヒロイン」

「あ、貴方は……」

「私か?ふむ……彼が脚本家と名乗ったのであれば、私は『演出家』とでも言うべきだろうか?」

「演出家……名前を教えてはくれませんか?」

「名前?いいだろう。彼からは本名を聞いていなかったのだろう?なら、私は自らの名前を伝えようではないか。その代わり、そなたも私に名前を教えるのだぞ?」

「……はい」


少女と男は向き直り、そして互いの名前を告げた。


「私の名前はスクリプター。この世界を作り変えることが望みだ」

「私の名前は……黒石由良。この世界を破壊することが望みです」

「では、これからもよろしく頼むぞ……由良」

「はい……スクリプター様」












少女は男と出会い、居場所を見つけた。

こうして始まる……新たなる波乱。

さぁ、今こそ終わりの始まりの時だ。

覚悟するがいい、力なき人間共。

貴様らだけの力では、この世界に訪れる絶望からは、逃れることが出来ぬだろうな……。













評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ