発せられる謎の光
「あ、葵!」
「うわぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
呼びかけても、返事を返すことが出来ない。
……葵はどうしようもなく、苦しんでいた。
自らの魔力を奪われている最中。
もはや葵には、この呪縛から逃れる方法など用意されていなかった。
「実に滑稽……助けるために舞い戻ってきたというのに、結局誰も救えなかった。それこそが、私が今回の脚本で描きたかった英雄像だった」
「な……に?」
「よく言うではないか、ヒーローは遅れてやってくるものだ、と。だから今回、君にはその役回りをさせてあげたというのに……結局君は、間に合わなかった。結果、君の大切な人達は……傷ついてしまった」
「ぐぅ……」
「お主は弱い。それこそある意味ではどの人物よりも心が弱い……その心の弱さが招いた結果が、今回の結末とも言えよう」
……言ってくれるじゃねえか、クリエイター。
……上等だ。
「テメェは俺を……完全に怒らせてしまったみたいだな」
「む?」
「仲間を傷つけたことに対する恨み……どれほど大きいものなのか。その身に嫌と言うまで叩きこんでやるよ!!」
ドン!
俺は特に魔術の詠唱をすることなく、相手に向かって雷を放つ。
だが……。
「……この程度か?」
「なっ!?」
クリエイターに当たる直前で、その雷は突如として方向を変え、明後日の方向に飛んで行ってしまった。
……何だコイツ。
まるで、絶縁作用でも働いたかのようだったぞ―――!?
「今の私は、仮にもこの会場にいる者達の魔力を集めた状態……すなわち、その者達の癖をも吸収した形となるわけだが……それでもやるのかね?」
「……勝てるか勝てないかの問題じゃねえんだよ……勝ちに行くのが、勝負ってもんだよ!!」
逆上しながら、俺は風魔術を応用してクリエイターの所まで突進していく。
そして右手に刀を創り出し、それで思い切り心臓を貫く―――!!
「だから君は弱いと言っておるのだ……真に強き者は、心を孤独な状態に置いておくものだぞ?」
「孤独が必ずしも力に結びつくとは限らない!絆の力こそ……孤独に対抗できる唯一にして絶対の力だということも忘れるんじゃねえええええええええええええええええええええええ!!」
お前だけは……お前だけは確実に殺す!!
この戦いは、勝敗とかは本当に関係ない……相手を殺すか生かすかが、この戦いにおいては意味をなす。
いや、勝敗は関係なくはないか……死ねば負け、生きていれば勝ちというのが、殺し合いのルールだったな!!
「クリエイター!!テメェだけは……テメェだけは俺の手でぶっ殺してやる!!」
「……出来るのかな?君ほどの力では、私に勝つことなど不可能だということを……その身に教えてしんぜよう」
クリエイターがゆらりと右手をゆっくりと俺の方に突き出す。
何かの攻撃が来る……そう思った俺は、攻撃から身を守るために身構えた。
「……あ、あがああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「「!?」」
その時だった。
突如として、会場内に強烈なる光が発せられる。
光の発生源は……葵か!?
「葵!?……一体何が起きてるっていうんだ?!」
「こ、これは予想外の展開だ……一体、何が起きているというのだ!?」
まったくもって予測できなかった事態だった。
この光に乗じて、クリエイターは姿を眩ませてしまった。
「ま、待ちやがれクリエイター!!……くそっ、見失ったか」
光のせいで目の前が思うように見えない。
一体……この中で何が起きているっていうんだ!?
「……」
やがて光が徐々に弱まっていくにつれて、視界がはっきりとしてきた。
そして、視界が良好になった時に、俺は見てしまった。
「な……なんだよ……それ……」
「……」
それは、背中に翼の生えた、天使だった。




