マジシャンズサークル
「ど、どうしたの優奈?……一体何がどうしたっていうの?」
隣にいた刹那は、心配するように優奈を介抱する。
だが、その直後だった。
「!!……記憶が、流れ込んでくる……この記憶は……お母さん?」
刹那の頭の中に、先ほどクリエイターによって送り込まれた記憶が流れ込む。
そして、その記憶の中に……。
「……え?岸辺、隆太……?」
「その通りだ。君達に送り込んだ記憶。それは、岸辺隆太という人物がお主らの両親を殺すシーンだ」
「「「!?」」」
晴信達は、クリエイターから告げられたその真実に驚きを見せていた。
そして刹那は、
「岸辺隆太……そういうことだったのね。だからあの時、あんな違和感を……」
納得したような、怒りを見せるような、そんな表情を浮かべていた。
「負が出ているな……そうか。その男が憎いのか、植野刹那」
「それにしても……どうして貴方が二人の記憶を……?」
春香は、クリエイターのことを見つめ、そう尋ねた。
「ふむ……ちょっとした実験の一環でね。闇の力を使い人を操った結果、その人物はうまくコントロールされるのかという実験をしてみたのだよ……実験は半分成功半分失敗。見事に岸辺隆太はお主らを殺す直前でコントロール下から離れてしもうた。ちなみに、記憶を抜いたのはその時の実験に巻き込んでしまったせめてもの罪滅ぼしというわけだ……どうやら姉の方は記憶を完全には取り出せていなかったようだがな」
「たったそれだけの理由で……たったそれだけの理由で、刹那達の両親を殺したというのか……?」
怒りの形相で、晴信はクリエイターを見る。
だが、クリエイターは動じない。
どころか、むしろ面白がっているようにも見えた。
「殺したのは私じゃない……最も、その後で私の計画を知ってしまった民間人がいてな……その人物は確かに私が殺した。その人物は確か……森谷とか言ったかな」
「!?……まさか、森谷君の両親を殺したのって」
何かに気付いたらしい葵が、クリエイターに向けて言う。
そしてクリエイターは、
「ああ、私だ」
冷静にそう告げたのだった。
「だから森谷君は貴方のことを追っていたってわけですね……?」
「恐らくはそうなのだろうな。そしてその親友でもある大和翔にもまた、何かがあるのだろうな……『組織』のメンバーに入ったのも、それが理由だろうな」
「組織……?」
聞きなれない単語が飛び交った。
晴信達にはおよそ理解不能な単語だ。
そのことに気付いたらしいクリエイターは、
「……やれやれ、『組織』とは何なのかについて語らなければならないのか」
「……教えてくれるのなら、教えてくれませんか?」
千里が、冷静にそう尋ねる。
クリエイターはそんな千里に少し感心しながら、
「……よかろう。簡潔に告げてやる。『組織』というのは……魔術を使い、悪人達を秘密裏に成敗する、いわば政府公認の裏警察とでも言うべきだろうな」
「政府公認の、裏警察……」
「警察では対処しきれぬことを、『組織』というのは解決する……素質さえあれば、誰でも入ることが出来るのだよ」
「その組織に、大和が……」
晴信は、大和と大地がそんな組織に入っているとは思っていなかったのか。
驚愕の表情を浮かべるばかりであった。
それは葵とて、春香とて、他の人たちとて同じこと。
「……話はこれくらいでよいか?そろそろ私の目的の方も達成させなければならぬ。おとなしくこの魔法の餌食となるがよい」
クリエイターが右腕を空に突き出す。
すると、地面に描かれた魔法陣が、突然光り出した。
「な、なんだこれは!?」
「お主らの魔力、頂くぞ……集え、マジシャンズサークル!!」
魔術名を告げ、その魔術を発動させた。




