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Magicians Circle  作者: ransu521
魔術格闘大会編
252/309

記憶

「あ、あれは……」


晴信は、戦闘スペースに広がっている魔法陣を見て、驚愕の表情を浮かべていた。

だが、それよりももっと驚くべきことが起きた。


「……魔物が、消えていく?」

「……瞬一が倒したのか?けど、そうだとしてもあの魔法陣は……一体……」


分からないことだらけであった。

晴信にとっても、ほかの人達にとっても、分からないことだらけだった。


「何なの、これ……?」


葵達も、魔物と戦い終えてようやっと気づいた。

足元に突然現れた、巨大な魔法陣。

その正体が、全然理解出来ないでいた。


「ふむ……やはりあの少年は、魔物の親玉を追って行ったか」

「!?……この声は」


晴信は、会場に響き渡った男の声を聞いて、はっとした。

それは晴信だけではない。

葵や春香も同様であった。

何度か聞いた覚えのある、男の声。

特徴的な、口調。

それらから割り出すと、その男の正体は……。


「ようこそ。惨劇の宴へ。今宵も脚本・演出共に、私クリエイターがお勤め致します。どうぞよろしくお願い致します、人間達パフォーマー

「お前は……クリエイター!!」


黒い帽子。

黒いマント。

自らを『脚本家』と称するその男の名前は……クリエイター。

この舞台を作り上げた張本人であり、今回の事件の黒幕的存在。


「前にお前とは会ったな……あれは確か森の中での話だったよな!」


空中に浮いているクリエイターに若干の驚きを感じつつも、晴信はそう告げる。

すると、クリエイターは何かを思い出したかのような表情をして、


「ああ……君はいつぞやの駒だったな。あの時は君に迷惑をかけて済まなかったな」

「調子乗ってんのか?……ここからならテメェを撃ち抜くことも出来るんだぞ?」


銃口をクリエイターの頭に向けながら、晴信はそう言った。

啓介達もまた、警戒の色を見せていた。

そんな会場内を見て、満足そうにクリエイターは言った。


「いやぁここまで脚本通りに進んだ舞台も久しぶりなものだ。今日は気分がよいな」

「……何を、言っているのですか?」


気分をよくしているためか、笑みさえ浮かべているクリエイター。

そんなクリエイターに対して、優奈はオズオズと尋ねた。


「……お主達は私が記憶を奪った者達か。ちょうどよい、もはやあの記憶など必要なくなったところだ。返してやろう」

「……記憶?」


クリエイターの言葉に、刹那が疑問の表情を浮かべる。

そんな刹那をニヤリと笑みを浮かべながら一瞥すると、両腕を突き出して、握っていた拳を開く。

するとそこには、二つの玉が浮かび上がっていた。


「あれが……二人の記憶の、玉」


岸辺は、誰に対して言うのでもなく、ただそう呟いていた。

その表情は、どこか悲しそうにも見えた。

まるで、何かを思い出して欲しくないかのように。


「……行け、記憶の光よ」


クリエイターがそう告げると共に、浮かび上がっていた記憶の玉が、優奈と刹那目掛けてゆっくりと動き始める。

やがてその玉は、二人の頭の中に吸い込まれて、その姿を消した。


「「……??」」


二人は、いや、周りにいた全員が、一体何が起きたのかを理解することが出来なかった。

ところが次の瞬間。


「……ウワァアアアアアアアアアアアアアア!!」

「「「「!?」」」」


優奈が突然、その場に踞り、泣き始めたのだ。
















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