巨大な魔法陣
少女は、自分がこの事件の元凶と言った。
……ならば、この少女を倒せば、この騒ぎは収まるということだろうか?
……いや、これはさらに状況が悪化しただけだ。
いくらなんでも、一人でこの場を切り抜けるのはあまりにも無謀すぎる。
親玉一体だけならまだ何とかなったかもしれないけど、俺一人で親玉と人一人を相手するのは無理だ。
せめてもう一人呼んで来ればよかったと、今になって後悔していた。
「……面倒臭いこと増やしやがって……けど、この場にいるのは俺一人。きついけど、何とかするしかねぇか」
「……無理ですよ。あなた一人で、私とこの魔物に勝てるはずがありません」
「……勝てる勝てないを悩んでる暇があったら、俺は勝つ方法を考えるっての」
そうだ。
負ける可能性なんて考えないってさっき思ったばかりじゃないか。
考えるのは、俺が確実に勝てる方法。
……つまり、必勝法のみ。
「……ここで貴方の命を散らしてしまうのも、何だか悪い気がしますけど……計画の邪魔をするようであれば仕方ありません。会場にいる人の命までは取るつもりはなかったのですが……貴方だけは別のようですね」
「そうかい……けど、俺はお前らに負ける気はないぞ?」
「私こそ……ここで計画を頓挫させるつもりはありません。全力で、貴方のお相手を努めたいと思います」
俺達はそう言い放って、そして互いの顔を睨む。
静寂の時間が流れる。
その間、時間にしてわずか5秒。
その5秒は、俺達からしてみれば1,2分にも感じられた。
「「……」」
黙り込んだまま、互いを見つめる。
その間に、俺は刀を、少女は銃を創り出す。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「「!!」」
静寂に耐え切れなかった魔物がそんな咆哮をしたのと同時。
俺達はほぼ同時に地面を蹴り、相手に接近したのだった。
Side晴信
「くっ!ああもうコイツら本当にウザい!」
倒しても倒しても、何度でも増殖する。
瞬一がまだ親玉を倒していないからなんだろうけど、これじゃあきりがなさすぎる。
その前に……相手はどれだけの魔力量を誇ってるっていうんだ?
いくらなんでも、これは量が多すぎだ。
「なぁ晴信、疑問に思わないか?」
「ああ?何をだ?」
「コイツら……出すぎじゃないか?」
「それは今俺も思った!まるでコイツらを召喚した奴の魔力に、底がないみたいだ」
無貯蔵……とでも言うのだろうか?
少なくとも、普通の魔力だけではこんなに召喚することは不可能だ。
……まさかとは思うけど、俺達には分からない何か強大な力が働いているとか……なのか?
「ちっ!奴らどんどん量を増してるぞ!」
剣で斬り伏せながら、銃で撃ちながら、俺達は会話をする。
啓介が斧でたたき割り、俺が銃を乱射して、小野田が剣で斬る。
小山先輩は、俺達の後ろから何やら低級魔術でアシストしてくれている。
さすがは先輩……俺達よりも魔力コントロールが優れてる。
アンジック病にかかっていたのにも関わらず、この魔力コントロールだ。
会場を壊さないように、しかし相手を確実に仕留めるには十分な攻撃だ。
「相手はまさか……クリエイターか?」
一つの疑問が湧く。
……いや、それはないだろう。
こんな会場にクリエイターが来ているとも考えにくい。
けど、何でこの会場に魔物が……?
「お、おい……見ろ。あれ、何だ?」
「あれ?……!!」
小野田に言われて、俺達は戦闘スペースを見る。
そこでは、俺達と同じように魔物と交戦している葵達が見える。
だが、注目すべき点はそこじゃなかった。
「何だよ……あのでかい魔法陣は……」
そう。
床に大きく描かれた、謎の魔法陣だった。




