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Magicians Circle  作者: ransu521
魔術格闘大会編
249/309

親玉

しかしコイツらは、本当にウザイことこの上ないな。

向かう所に必ず配置されていやがる。

親玉は、一体どこにいるって言うんだ?


「くそっ!斬っても斬っても増殖しやがって!」


たちの悪い部類の魔物だよな……本当に。

これじゃあ、団体戦の決勝戦は延長だな。

中止って可能性もなくはないけど、出来れば考えたくないところだ。


「次から次へとウジャウジャと……ウザイんだよテメェら!」


力任せに刀を振るう。

尚且つ走らないといけない。

これじゃあ親玉のところに到着する前に力尽きてしまうぞ……。


「この……舐めんじゃねえ!」


近付く魔物は、残らず斬る。

そして、前へ進む。

やがて俺は、階段へと到着していた。

ここを下った先に親玉がいるかは分からないけど、迷ってる暇はない。


「くそっ!」


俺は二段飛ばしで階段を降りる。

結構奥まであるんだな……まだ下りきらないぞ。

ようやっと階段を下り終えた時には、いつの間にか上は遥か遠くになっていた。


「……前へ行くしかないな」


今更戻るなんて不可能。

ならいっそのこと、この部屋を確認するだけの価値はある。

俺の目の前には、何の部屋かも分からないような扉があった。

ここに何があるのかは分からないが、何かはありそうだ。


「……よし」


扉に触れ、一旦間を置いた後に、扉を勢いよく開けた。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

「!?」


同時に謎の生物の咆哮が聞こえてきた。

……ビンゴ。

親玉は、この部屋にいたということか。

体長約5m。

全身は黒く、鋭い爪を持った、虎みたいな魔物。

……コイツ相手に一人で勝てるのか?


「……いや、勝てるかじゃないよな。勝ちにいくんだよな」


勝てるか勝てないかを考える前に、まずは自分が勝つ為のプロセスを考えるのが先だ。

さっきまでの戦いの中で、勝つことだけしか考えていなかったのを忘れたのか、俺!


「……行くぞ、親玉。お前を倒して、この騒ぎを収めて……」

「そうはいきませんよ。この騒ぎを、こんなにも早く収めさせるわけにはいかないんです」

「……え?」


声がした。

どこからしたのかは分からないけど、間違いなく少女の声が響き渡った。

この空間のどこかに、少女がいるというのか……?


「ウガァ!」

「くっ!」


迷っているうちに、俺は魔物に襲われかけた。

何とか鋭い爪が体に突き刺さるのは避けたけど、もう少し判断が遅れてたら心臓に突き刺さってただろうな……。


「誰かそこにいるのか?いるなら返事をしろ!」

「……」


返事はない。

だが気配は確実に感じられる。

どこだ……どこにいる?


「あらゆる者に闇の苦しみを味あわせよ」

「!?」


投げ掛けられる呪文。

放出される、黒くて小さな弾。

俺はそれらを避けたと同時に、飛んできた方向を確認した。

……そこにはこっちに銃口を向けたまま立っている少女がいた。

漆黒をイメージさせるほどのロングヘアー、低めの身長。

しかし、殺気は半端ない。

なにより特徴的なのは、首からぶら下げているネックレスみたいなものだった。

禍々しい程の黒で着色された、宝石のようなものが埋め込まれていた。

少女が尋ねる。


「どうして……ここが分かったの?」

「分からなかったんだ……だから勘を頼りに走り、そしてここにたどり着いたというわけだ」


本当に分からなかったのだから、これは本当の話だ。


「……なんてデタラメな男なの」

「デタラメで結構だ……それよりも、この騒ぎを引き起こしたのはお前か?」


俺は少女に尋ねる。

少女は、特に迷う様子もなく、ただ真実を伝えるかのように、


「……ええ、そうよ」


その一言だけを、言い放ったのだった。













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