ついに団体戦も決勝へ
「いよいよ決勝戦だな!」
「うん!瞬一のおかげで何とか決勝まで行くことが出来たよ!」
「俺は何もしてねぇよ……ただ応援してただけだ」
本当に何もしていないのだから、俺は間違ったことは決して言ってはいないはずだ。
「あの時瞬一君がボクに応援してくれなければ、きっと負けてたよ……ありがとね」
「いや、負けたのが俺が目覚めるのが遅かったからということだと、俺も目覚めが悪かったと思うしな。半分俺の自己満足でやった部分もなくはないぞ」
「それでもいいんだよ……例えそれが半分でも、私のことを思っててくれたことが、素直に嬉しいんだ」
「……!!」
胸がドキッとした。
ヤバイ……織の今の笑顔は反則だって。
軽く理性が削られたような感覚があったぞ。
「はっはっはっ!相変わらず初心な二人だなぁ」
「さっきまで小山先輩に膝枕されてた瞬一に嫉妬していた啓介が言うか……」
ゾクッ。
……あれ、何でだろう?
今、明らかなる殺気が、俺に向かって飛んできたような気がするんだけど……いや、気のせいじゃない。
間違いなく殺気がある……三人分の。
「瞬一君……それって一体、どういうことなんですか?」
「はっきり聞かせてもらいたいんだけど……瞬一?」
「いや、俺だって目覚めて初めて気づいただけで、多分小山先輩のご好意だと思うんだけど!」
「……本当ですか?小山先輩」
織が不審がって小山先輩に尋ねる。
あれ、俺のこと信じてない?
「そうよ。イスに座らせたまま寝かせるのはどうかと思ったから、私が膝枕の状態にしたのよ」
「そうだったんですか……」
「はぁ……なんだかドキドキしたなぁ」
「千里!?」
……実は小山先輩って、Sっ気があるのではないだろうか?
時々そんなことを考えてしまう自分がいる……と、それはそうと。
「……瞬一先輩、頑張ってください」
「え、何で優菜はそんなこと言うの?それに刹那、憐れみを込めた表情で俺を見て、しかし何も言葉を発しないのが一番悲しくなる行動なんだけど!?」
植野姉妹は、俺に視線を合わせようとしない。
……どうしてだろう。
まるで俺に死亡フラグが立ってしまったかのようじゃないか。
「そのまさかだぞ、三矢谷」
「小野田は黙ってろ。この自殺王が」
「だからその名前で呼ぶのだけはやめてって言ったじゃないか!」
このことは何回か言っておかないといけない気がしてな。
だって、小野田を表現するのに適した言葉なんだぜ?
その他にも、顎先輩なんて表現もなきにしもあらずだけどな。
「何話を逸らそうとしてるのかな?瞬一?」
「ちっ!」
バレタか……小野田が話しかけてきてくれたから、そのまま話を別の方向に持っていこうとしてた俺の考えを読むなんて……さすがは葵と言ったところだろうか。
俺の親友ということだけあって、そんなことはお見通しだったってわけか。
「いや、割と簡単にお前の心って分かるからな」
「ふむ。晴信、さっきからあそこにいる女の子がお前に意味ありげな視線を送っているが?」
「可愛こちゃんはどこだ~い!!!!」
俺が指差した方向に向かって、晴信は走り去ってしまった。
……あ、女の子が逃げた。
「あれじゃあただの変態にしか見えないわよ、晴信先輩……」
刹那が晴信の行動を見ながら、そう呆れたように呟いていた。
……ところで。
「そろそろ決勝戦が始まる時間なんじゃねえのか?」
「……これから瞬一君のお説教タイムに入るところだったんだけど、それは決勝戦が終わった後にだね」
最近、織の俺への態度がどこか変わってきてると思うんだ。
まぁ自己主張が強いって言うのは織のいい所でもあるんだけど……それが変な部分で生かされてきているような気がしてならない。
『それでは女子団体戦決勝戦の組み合わせを発表いたします!』
「ほれ、来たぞ」
アナウンスを最後まで聞かず、俺は葵達にそう言う。
「それじゃあ頑張ってくるね」
「絶対勝つから!」
「あの……出来れば応援よろしくお願いします」
「が、頑張るわね」
「全力を尽くします」
上から葵・織・春香・刹那・優菜の順番だ。
「「「「頑張ってこいよ!」」」」
男四人分の応援を背に、葵達は決勝の舞台へと足を運んだ。




