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Magicians Circle  作者: ransu521
魔術格闘大会編
240/309

決勝戦始まる

……よし、心は落ち着いた。

後はここを通り抜ければ、決勝の舞台に上がることとなる。

俺が目指すべきは……優勝のみだ。

勝つんだ……俺は、相手に勝つんだ。


「……行くか」


呟き、ついに俺は会場の中に入った。


「「「「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」

「お、おお……」


あまりの熱気の強さに、一瞬怯みかける。

しかし、気合いでなんとか持ち直すと、俺は中央まで歩いていく。

……何もない、ただの床を歩いていく。

準決勝の時まであった仕切りは、その姿を消していた。

出し入れ自由なのか、岩すらもなくなっていた。


「……アイツが、俺の対戦相手か」


反対側から、俺の対戦相手だと思われる人物が入ってくる。

赤くて長い髪、俺と同じくらいの身長、そして何より気になったのは、こんな場所だと言うのに、イヤフォンを耳につけながら入ってきたことにある。

一応全国一を決める大会の場だぞ。

あんな姿で入ってきていいのだろうか。


「イヤフォンが気になるのか?」

「え?」


突然男の口から発せられた言葉。

……何を言い出すかと思えば、そのことか。

確かに気になることではあるけどな。


「ああ……そうだな。気にならないと言ったら嘘になる」


だから俺は、そう言葉を切り返した。

すると、


「別に俺は、空気を読まないでこんな格好をしてるわけじゃない。俺はMP3プレイヤーを使った科学魔術師だから、こんな格好をしてるんだ」

「なるほど……」


科学魔術師で、MP3プレイヤーを使う奴だっているだろうな。

最も、その数は少ないみたいだけど……操作は簡単そうなのにな。


「いや、これが結構難しいんだぞ?ボリュームのところで使用魔力量が決まってくるからな……これの調整をミスると、それだけで術の威力が狂っちまうからな」

「……なんでまたMP3プレイヤーなんてものを使ってるんだよ?」

「それは……その方が楽しいからだ」


うん、わかった。

コイツ、ただの戦闘狂だ。

戦うためなら条件とかは選ばない。

そんな奴なんだ、きっと。


「ところで……雷山塚高等学校といったら……植野優奈・刹那がいるはずだよな?」

「うん?……ああ、今日もこの会場にいるけど?」

「……そうか」

「何か言っておくこととかあるか?何なら俺が伝えてくるけど?」

「いや、なんでもない……気にしないでくれ」

「??」


何だろう。

この男の発言は、妙に引っかかる部分があるんだよな。

優奈と刹那と、何らかの関係があるのかもしれないな。


「けどよ、優奈と刹那は、お前のことを忘れているようだぜ?えっと……」

「岸辺隆太だ。さっきもコールされた気もするけどな……」


そういえばそうだったな。

えっと……岸辺は植野姉妹とは何の関係があるのだろうか?


「そうか……あの二人は、俺のことを忘れてるのか」

「……ああ、お前の記憶だけを忘れているみたいだったぞ?」

「……仕方ないんだよな。それは」

「仕方ない?」

「……なんでもない。今は勝負だ」


……なんだろう。

このモヤモヤとした感じは。

心の奥に、何かが引っかかっているような感覚があるんだよな。


「……んじゃ、距離をとるか」

「……ああ」


互いに微妙な空気が流れる中、俺と岸辺は距離をとる。

同時に、辺りには岩やら穴やらのギミックが出現してきた。

……なるほど、予選から決勝までで、ステージのギミックとかが変わる形式なのか。


「今はこうして、強い奴と戦えることに対して、心から楽しいと思ってる!……この勝負、悔いの残らないようにしようぜ!」

「ったく、この戦闘狂が……言われなくてもそのつもりだっての!」

「いや、お前の戦いぶりとか見てたけど、お前もなかなかの戦闘狂だろ!」

「どうだかな!」


戦闘狂ではないとは思うけど……まぁ嫌いってわけではないかな。

どっちかといえば、体を動かすことは好きな方に入るわけだし。


『それでは両者構え!』

「……んじゃ」

「そろそろ……」


実況席から聞こえてくる声に合わせて、俺達は構えを取る。

そして。


『始め!!』

「「勝負だ!!」」


実況の声に被さるのではないかと思われるほど大きな声で、俺達二人は戦いの開幕を宣言した。
















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