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Magicians Circle  作者: ransu521
魔術格闘大会編
239/309

気になる記憶

「ご苦労様、二人共」

「興奮する試合でした……思わず声が出なくなってしまうような」


帰ってきたと思ったら、葵と春香にそんなことを言われた。

いやぁ、正直やっている俺達も興奮してたんだけどな。


「瞬一先輩も凄かったけど、晴信先輩も負けず劣らずって感じだったわね……」

「お前、いつの間にそんなに力をつけていたんだな」


今度は刹那と啓介が、晴信にそんな言葉を投げ掛けた。

晴信は答える。


「俺も頑張らなきゃなと思って、勉強も魔術の格闘も頑張ってたんだよ……結果としては、また瞬一に負けたけどよ」

「今回俺が勝てたのは、運のよさもあったおかげだ……お前の攻撃を一回でも受けていたら、俺は間違いなく準決勝敗退だったろうな」


晴信の力は、最早数ヶ月前なんか比じゃない程に強くなっていた。

……後は学力さえつければS組に戻ってこれるのではないだろうか。


「これからもその努力を忘れないことだな。一度でも訓練を怠ったら、取り戻すのには時間がかかるって言うし、毎日続けることが大事だ。勉強も、戦闘訓練もな」


俺はそう信じていた。

……毎日欠かさず訓練を積み重ねていけば、力がつく筈だ。

そうしてついた力というのは、しばらくの間抜けることはないだろう、ということも。


「……肝に銘じとくぜ、我が友よ」

「そうしてくれると嬉しいぜ、我が親友にして好敵手ライバルよ」

「「……へっ!」」


パン!

俺達はそれぞれの右手でハイタッチをして、互いの健闘ぶりを認めあった。

それと同時に、


『さて、個人戦もついに決勝戦に突入致しました!果たして優勝するのはどちらの選手なのか!期待が高まるところです!』

「あ、選手のコールが始まるみたいですよ」


優奈の言う通り、決勝戦の対戦相手のコールが始まるようだ。


『決勝戦の組み合わせは……雷山塚高等学校:三矢谷瞬一VS堀河高等学校:岸部隆太です!両選手、こちらの戦闘スペースまで降りてきて下さい!』


いよいよ決勝戦だ……気合い入れて行かないとな!


「頑張れよ瞬一!ここまで来たら、目指すものは一つしかない筈だぜ!」

「ああ、分かってるっての、晴信」


ここまできたら、後は優勝するのみだ。

……全身全霊を込めて、相手に勝ちに行くしかない!


「岸部……隆太?」

「何処かで聞いたこてあるような……ないような……」


どうしたんだろう。

植野姉妹の様子が、何処かおかしいような気がするんだが……というか、何かを思い出そうとしている?


「お前ら……岸部隆太って奴を知ってるのか?」

「聞き覚えのあるような……ないような」

「何だか、その部分だけ記憶が抜けているような気分なんですよ……」


記憶が……抜けている?

そんなことが、果たしてあり得るのだろうか?

一部の記憶のみが抜けるなんて……そんな技術なんてこの世の中に存在し得るのだろうか?


「おいおい……そろそろ行った方がいいんじゃないか?」

「あ、小野田か……お前、いつの間にか目覚めてたんだな」

「さっきまでは暗いオーラに包まれてたのにな……自殺王」

「その名前で呼ぶんじゃねえよ!」


ついに小野田が切れた。

……まぁ、俺には関係ない話だけどな。


「んじゃ、ちょっくら行ってくる」

「うん……行ってらっしゃい」


織にそう言われながら、俺は下へと降りていく。

……心を落ち着かせながら、戦闘準備を済ませていた。
















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