晴信との決着
「炎の海で地面を埋め尽くす!……ファイアオーシャン!!」
「空より裁きの雷よ、降れ!」
晴信は、足元に赤い魔法陣を。
俺は足元に黄色い魔法陣を展開させている。
それぞれ属性は、炎に雷だ。
「サンダーボルト!」
「飲み込まれるなよ!!」
それらは、ほぼ同時だった。
俺の雷が天より降ってくるのと、晴信の炎が辺り一面に広がるタイミングは。
ただ、どちらの攻撃も当たることはなかった。
「……よっしゃ!ファイアボール!」
「またかよ!……あらゆる害から身を守る不可視の壁よ。その一部を我が両手に宿せ!」
両手拳に簡単な結界を張り、
「はぁっ!」
飛んでくる炎の塊を、目前の所ですべて打ち消す。
……手ごたえは確かだ。
「くそっ!……さらに数を増せ!」
「炎を覆いし水よ。我に降り注ぐ炎を鎮火せよ!」
今度は俺の地面に青い魔法陣が展開される。
瞬間、その魔法陣から、まるで俺を守るように水の壁が俺の体を覆った。
そして、飛んできたファイアボールを、鎮火したのだ。
「雷と水……お前、そんな属性まで」
「一応どの属性でも攻撃できるようになってんだよ……得意なのは雷だから、基本雷しか使わないけどな。お前が炎属性ばっかり使うのとおんなじだ」
「……さすがは瞬一だな。もうお前の力が測りきれなくなってきたぜ!」
「同感だ!お前こそ力が強すぎて、どのくらい強くなってるのか分からなくなってきたくらいだ!!」
互いにそう言い合った後に、俺は刀を、晴信は銃を創り出す。
……こちらの武器の方が少し不利だが、まぁそんなハンデは何とかなるだろう。
「喰らえ!」
ドンドンドン!
晴信の握る銃から、炎の弾が何発か撃ち出される。
……俺はそれらの弾を、刀で斬り捨てる。
だが、さっきの攻撃でも検証されている通り、この銃の弾で刀を折ることは可能なのだ。
だから……。
「うぐっ!」
ガッ!
同じところで何回も弾を受けていた為、ついに刀が折れてしまった。
「チャンスだ!」
「させるか!」
俺は避けることに専念するのではなく、敢えて前に突っ込んでいく。
その間にも、晴信は銃を撃ってくるが。
「そうらどうした?俺はお前に接近してるのに、どうしてその銃が当たらない!?」
「くっ……この野郎!」
俺はそれらの弾を、ギリギリの所でかわし続けていた。
ただ、晴信の所に突っ込んでいるということは、逆を言えばそれだけ自殺行為だということにも繋がる。
近づくにつれて、俺が避けられる範囲も極端に小さくなってしまう為だ。
「このくらいの距離があれば十分だ!」
だが、それでも俺は前に走る。
そして同時に、呪文の詠唱も済ませてしまう。
「相手の体力を減らしつつどこまでもついていけ!……スリープボルト!」
俺は再び雷の塊を作り、晴信に向けて撃ち出した。
「こんな攻撃……避けられないはずがないだろう!」
晴信は、一旦俺に向けて銃を撃つのをやめ、その攻撃を左に飛ぶことでかわす。
……甘いな、晴信。
「それで避け切ったつもりか?」
「は?……何!?」
今までまっすぐ飛んでいたそれは、急に方向を晴信の方へと変えていった。
……そう、これは追尾型なのだ。
何かに当たるまで、それは晴信を追い続ける。
「くそっ!岩までは結構な距離がある……仕方ない!」
晴信はどうやら、岩まで逃げて、スリープボルトを岩に当てる気だ。
……だが、それこそが俺の狙い。
「……晴信、悪いがこの勝負、もらったぜ」
「な……に?」
「……」
俺は精神を集中させ、逃げまどう晴信を見つつ、俺は呪文の詠唱を始めた。
「神の公正なる裁判にて、彼の者に正しき判決を下す」
「なっ……その術は!?」
晴信の驚きの表情が見れた。
……そう、この技はクラス分け試験の時に晴信に出した技。
あの時よりも、威力は増大だ。
「下された判決は有罪。よってここに、神の雷にて裁きを下す」
俺が言い終わるのとほぼ同時。
地上にも、空中にも、何個もの魔法陣が展開していた。
地面には、晴信の足元に大きな魔法陣が描かれており、その周りに小さな魔法陣がいくつか。
空中にも、同じような魔法陣が展開されていた。
「させるか!!」
何とか岩にスリープボルトを当ててきたらしい晴信は、急いでこっちに走ってくる。
……遅い!!
「ジャッジメントスパーク!!」
晴信が銃を撃ってくるよりも先に、俺はその術の名前を宣言した。
上空より、いくつもの雷が降り注ぐ。
ひときわ大きい雷が、晴信の頭上より降り注ぎ、
「がはっ!」
喰らった晴信は……そのまま気絶した。
……ということは。
「……勝者、雷山塚高等学校、三矢谷瞬一!」
「……よしっ!晴信に勝ったぜ!」
晴信に、勝つことが出来た!!




