強くなった友
準決勝までくると、それまで戦闘スペースを仕切っていた壁も、その数を減らしていた。
……大分広くなったと思う。
さっきまでは二人で動き回るのでやっといったような感じだったのにも関わらず。
「おまけに岩まで追加されてる……攻撃を避けるのに便利な岩だ」
多分相手からの攻撃を避けるためにと、こんな岩が用意されたんだろうな。
しかし……よくこれだけ用意することが出来たものだ。
相当金がかかってるだろうに。
「細かい問題は気にするなってな。俺達が雌雄を決するのにはもってこいの場所じゃないか」
「……今回ばかりは、お前の言う通りだな、晴信」
これだけの広さがあるのだ。
フルに使わないでどうするという話だ。
「さて……定位置につくことにしようや!いつまでも互いに入り口付近にいちゃあ、戦闘が始まらないしな」
「……そうだな」
俺達は、同じ入り口から会場の中に入る。
そして、俺は手前に。
晴信は俺とは反対側に向かって歩き出す。
……いよいよ、俺と晴信の戦いが始まる。
どっちが勝っても負けても、結果的には俺達の学校から決勝に行くことは決定している。
けれど、これはやるべきことなんだ。
この戦いは、避けては通れない道なのだ。
「では両者共に定位置についてください」
「「……」」
俺達は無言で定位置につく。
この間に、話しなんてする必要はない。
するだけ無駄だ。
「では……構え!」
「「!!」」
言われて、俺達は構えをとる。
……緊張が走る。
負けそうになるが、気力でなんとか持ちこたえる。
「……始め!」
審判のその言葉を聞いて、俺達は同時に動いた。
「せいっ!」
「はぁっ!」
それぞれの属性を付加させた拳を、互いの顔面に向けて飛ばす。
しかし、それらを避けるのは簡単だった。
相手も同じ条件となるのだが。
「あっつい球を喰らいやがれ!ファイアボール!!」
「雷よ。球として固まり、相手に向かって飛べ!」
新たなる試みをやってみた。
雷を、球にして放出してみるという試みだ。
やってみると、案外成功した。
「くっ!」
「……!!」
よしっ!
ファイアボールを打ち消すことが出来たぞ!
「ならば……風よ。さっと舞って相手を怯ませろ!」
「風魔術か……なら、打ち出よ。竜巻のごとく、相手を巻き込まん!」
晴信が風魔術で勝負するというのなら、こっちも風魔術で勝負してやる。
晴信が竜巻を三本出したのに対して、俺はでっかい竜巻ひとつ。
……一つがぶつかり打ち消されてしまうのか。
それとも俺の竜巻が、三本ともまとめて飲み込むのか。
どちらにしろ構わない。
……この風を使って、俺はこの場所から移動するのみだからな!
「くっ!前が見えない!!」
風のおかげで、周りの砂が巻き上げられる。
軽いサイクロン状になっていて、互いに視界が悪くなる。
けど、今はそっちのほうが逆に好都合だ。
なぜなら……晴信の視界が悪いということは、俺の行動が目に写り難いということにもつながるからだ。
「……そこだ!」
「え!?」
そのはずなのに。
晴信は、いつの間にか手にしていた銃を使って、俺に炎の弾を撃ってきた。
慌てて回避行動に移し、そして同時に手に刀を創り出し、
「はぁっ!」
晴信の体に突き刺すために、俺は刀を晴信に向けて―――!!
「瞬一、そんなことは読めてるんだよ!」
「何!?」
俺の攻撃は、どうやら晴信には読まれていたらしい。
晴信は、俺の刀に向かって銃を撃ち、刃の部分を折ったのだ。
なんて力押しなんだ……けど、こんな判断が出来るようになってるなんて。
……晴信は、やはり強くなってきているようだ。
簡単には、攻撃が通らなくなってしまっている。
「……そう簡単にやられるわけにはいかないんでね。こっちも前までの宮澤晴信とは違う所を見せないとな」
「……そうか。なら俺は、前までの三矢谷瞬一とは違う所を見せてやるよ」
一旦距離をとり、それから……。
「「……行くぞ!!」」
格闘技で言う、第二ラウンドが開始された。




