親友との対決
時間は少し流れ、
「……大分俺達二人も勝ち進んだものだな」
「そうだな。啓介と小野田は初戦敗退だったけど、なかなかにいい試合してたと思うし」
「二人とも、本当にここまでお疲れ様」
俺達は、その後も順当に勝ち進んでいき、準決勝辺りまでは行ったんだと思う。
だが、その準決勝にて、何と俺と晴信が奇跡的に当たることとなっていた。
……まさか同じ学校で戦うなんてことはないだろうと思っていただけに、この戦いは意外な展開過ぎた。
「けどまさか、瞬一君と宮澤君の二人が戦うことになるなんて……考えてもいませんでした」
「ああ、正直言って、俺もだ」
春香の言うとおりだ。
トーナメント表を見てまさかなとは思っていたが、本当に俺と晴信が当たることになるなんてな……。
以前までの晴信じゃないわけだから、俺としても今までの戦い方で挑んだら負けてしまうかもしれない。
「今回はお前には負けないぞ、瞬一……前までの俺だと思ったら大間違いだからな」
「ああ、分かってるよ……俺も全力でお前の相手をしてやる」
「へっ!上から目線って奴か?」
「いや、違う。同じ目線から話をしてるんだよ」
今の晴信相手に上から物を言えるわけがない。
……と言っても、俺自身は上から物を言ってるなんて考えてもいないけどな。
「俺達は友人でもあり、ライバルでもある……白黒決着をつけるまではいかないが、今回の戦いで、とりあえず勝敗を決しておいた方がよさそうだな」
「そうだな……お前に負けっぱなしというのも、俺のプライドが許さねぇ。だから、今日の俺は全力でお前を潰しに行くぜ」
「分かってるよ……俺もその気だからよ」
「……へっ!」
ガッ!
俺達は互いの右手拳を差し出して、軽く当てる。
……言葉で言わなくても分かる。
本気でやり合おうって気持ちがな!
「頑張ってください、先輩方」
「「おうよ!」」
優奈からの言葉に、俺達はほぼ同時に頷く。
優奈の隣にいた刹那は、顔を少し赤くしながら、
「き、期待してるからね、晴信先輩……」
「おいおい、俺には言葉はなしか?やっぱり刹那は、晴信一筋ってところか?」
「なっ!……そんなんじゃないわよ!誰がこんなチャランポランな奴なんかを!?」
「ちゃ、チャランポランではないぞ俺は!」
「チャラチャラはしてるけどな」
例えば十字架のネックレスとか。
「と、とにかく!先に下に行ってる!お前も早く来いよな!!」
「ああ」
恥ずかしさを隠すためなのか、晴信は先に下へ行ってしまった。
……さて、俺もそろそろ行かないと、不戦敗になってしまうからな。
「瞬一君?」
「え?あ、はい、小山先輩……どうかしましたか?」
いきなり小山先輩に声をかけられたので、俺は少し動揺しながら答える。
小山先輩は、笑顔で、そして胸の前で両手を合わせて、言った。
「頑張ってきてね。もし貴方が勝ったら、デートなんかしてあげてもいいわよ?」
「「「「「「なっ!?」」」」」」
俺含めた、葵・春香・織・啓介・優奈の驚きの声が聞こえる。
特に、啓介の動揺っぷりは尋常じゃない。
「ちちちち千里!?お、お前!どどどどどうしてそんなことを!?」
「冗談よ、冗談」
「「「「「……ほっ」」」」」
今度は俺以外の奴らが安堵のため息をついていた。
……啓介はともかく、他の四人はどうしてだ?
「おっと、そんなことを考えてる暇はないんだった。んじゃ、俺も行ってくる」
「頑張ってね、瞬一君!」
「おうよ!」
織からの言葉を背中に受けつつ、俺は戦闘スペースへと向かった。




